2017/11/18

人生の折りかえし点を曲がろうと決心した男の物語と箱庭療法

 

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MichikoYoshida
ビジネスウーマンから、自分自身の内的必然性に導かれて、心理臨床の道へ。臨床心理士として学校や教育機関での相談活動を経て、2016年、東京・青山にはこにわサロン東京をオープン。 箱庭療法を通じて「あなただけの生き方」を応援している。
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35歳になった春、彼は自分が既に人生の折りかえし点を曲がってしまったことを確認した。

いや、これは正確な表現ではない。

正確に言うなら、35歳の春にして彼は人生の折りかえし点を曲がろうと決心した、ということになるだろう。

村上春樹『プールサイド』

 

ふだんわたしたちは、自分の折りかえし点など、あえて意識しないようにしているのではないでしょうか。

けれども、人が昔よりずいぶん長い人生をおくれるようになった今は、このような視点も、自分らしく生きていくために、必要なのかもしれません。

ところで・・・

 

日本人の平均寿命は何歳かご存知ですか?

日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性は87.14歳だそうです。(厚生労働省調べ、2016年)

真ん中を折りかえし点とするなら、男性で40歳、女性は43歳。

では問題です。

今から100年前の日本の平均寿命は何歳だったと思いますか?

(A) 34歳

(B) 43歳

(C) 53歳

答えは、(B)43歳です。

「短っ!」って思いませんでしたか?

わたしは思いました。

40歳で臨床心理士の資格をとり、また出産もしたわたし。

100年前にはありえない人生設計です。

人生100歳時代に生きていられることに感謝!!

 

100年生きる時代だからこそ、わたしたちが直面していること

それは、人生の後半(四季に例えたら、豊かな秋の実りの季節を迎えるころ)どう生きたいか、自分で考えることができる(というか考えさせられるめぐり合わせになる)ことではないでしょうか。

ところで、人生後半の仕事を最初に取り上げたのは、スイスの分析心理学者ユング(1875〜1961)です。

ユングの元には、社会的には成功していて恵まれた立場にありながら、「何かが足りない!」と悩んだ中年期の人々が多く訪れたからです。

そういうユング自身も、精神病かと思うほどの激しい病を経験して、自分の心理学を打ち立ててきました。

つまり、人生の真ん中より手前半分から後ろ半分に切り替わる時に、人は精神的に大きなギアチェンジを果たすのではないか?

それを”中年の危機”と呼んだのではないか?

では、具体的にはどのようなことを、中年の危機と呼ぶのでしょうか。

 

① 思いもよらない身体的病気

「病気ひとつしたことなく、体力には自信があった。」

そんな方にとって、病を得ることは、それだけで自信が揺らぐ体験です。

けれども、病をきっかけに人生を見直し、より自分らしい生き方をしていかれる方も大勢いらっしゃいます。

心理学の基礎を作ったフロイト先生やユング先生も自分の病体験を克服することから、オリジナルの理論・臨床を築いてきました。

病は幸運とはいえない体験ですが、身体も自分にとっての時間も限りがあると実感することは、その後の人生を高め、深めていくチャンスとなるかもしれません。

 

② 思いがけない事件

平凡で安定した日常が繰り返されること。

それは誰にとってもとても大切なことです。

けれど、思いもよらない事件やトラブルがその日常性を揺るがすことがあります。

今まで信じてきたもの・人には、何か違う側面があるのではないか?と感じさせられたり、自分が安心安泰だと思ってきたことは思いのほか脆弱な基盤の上に乗っていたと思い知ったり。

安心基盤が揺れてしまうと、これまで感じたことのない不安に襲われることがあると思います。

そう感じること自体は、あなたが健康な証拠ともいえます。

予定外・想定外の事件をどのようにご自分の人生の中に織り込んでいくのか、そこにあなたの個性があらわれるのだと思います。

 

③ 仕事の次元の変化

例えば、自他共に認める有能な営業マンであるあなたが管理職に昇進する。

あるいは、ひとつの成功を評価されて、別の場所に異動となる。

優秀な方ならどこに行っても大活躍かと思いますが、必ずそういくとは限らないのが、人生のおもしろいところなのだと思います。

自分の中で築いてきた仕事のやり方についてのノウハウや考え方を見直すチャンスですが、悪くすると大きく自信を失ってしまう危険性もあります。

人生において仕事が占める割合が高いほどに、衝撃も大きくなります。

あるいは、定年まで立派に勤められた後の人生の再構築という課題と向き合う方もいらっしゃるでしょう。

何れにしても共通しているのは、これまでとは違うやり方を見出す必要があるということです。

 

④ 家族関係の変化

夫婦関係、親子関係というのは、時とともに変化していくものです。

愛し合っていて、コミュニケーションもていねいにとってきて、幸せだと思っていたのに、ふと気づくと相手はそうは思っていなかった。

あるいは価値観の違いが生まれてきて、どんなに話し合っても埋められない。

子どもが小さい頃は夫婦協力して乗り越えてきて、ようやく手が離れたと安心したら今度は思春期の嵐がやってきた。

仕事にかまけて家のことをパートナーに任せきりにして、家族の信頼を失ってしまった。

家族メンバーにとって納得できる答えを探すために、たくさんの時間とエネルギーを使って話し合い、納得ポイントを探らなければならないという時期は繰り返しやってきます。

 

⑤ 自分は何のために生きるのか?という根源的な問い

若いころは、自分がどんな大人になるのか、ちゃんと自立できるのか?と悩んだと思います。

職を得て、経済的に独立すること。

結婚(する・しない)や子育て(する・しない)を決めるところから、自分の人生を選びとっていくこと。

こうして社会的地位を得て、「あぁ、これでひと安心!」

ところが、折りかえしを迎えると、自分はなんのために生きているのだろう?という根源的な問いにぶつかることも多いのです。

かく言うわたしも、あんなに夢中でビジネスに打ち込んでいたのに、ある日とつぜん、何もかもが無意味に感じられてしまい、本当に困りました。

セラピストよしだ
この物あまりの日本で、物を売ることなんて無意味じゃないか?って急に思いつめてしまったんですよ。

働くことの意味は何か、真剣に悩みました。(真剣すぎて会社をやめました。)

会社をやめることを推奨しているわけでは、もちろんありません。

本当だったら、仕事を続けながら考えていけるのが望ましいですよね。

でも、それくらい”暴力的”に、悩んでしまうこともあるのです。

 

⑥ 無気力・抑うつになる

①〜⑤のように、大きな環境変化や、気持ちの変化をきっかけに、何ごとにも意欲を持てなくなり、抑うつ的になる人も少なくありません。

仕事に興味が持てなくなる。

熱中していた趣味も楽しくない。

何をする気にもなれない。

ひどい時には自殺の危険すら起きてきます。

このようなとき、まずは医療機関の受診をお勧めしますが、医療機関・投薬だけでは改善しない例も少なくないようです。

そのような場合は、やはりカウンセリングを通じて、あなたご自身で自己理解を深めていくことも大切です。

 

⑦ 「なぜ、わたしが?」に自分の答えを見つけ出していくこと

これまでお話しした人生の折りかえし点における心身や環境の変化は、多くが「とても理不尽だ」という特徴を持っています。

ですから、「なぜ、わたしにこんなことが起きるのだろう?」「なぜ、わたしだけがこんな思いをしなければならないのだろう?」という気持ちにさいなまれることは、むしろ自然といえます。

人生の折りかえし点を迎えるということは、悲しみを伴うものなのだと思います。

しかし気がついた時、彼は泣いていた。両方の目から熱い涙が次から次へとこぼれ落ちていた。涙は彼の頬をつたって下に落ち、ソファーのクッションにシミを作った。どうして自分が泣いているのか、彼には理解できなかった。泣く理由なんて何ひとつないはずだった。あるいはそれはビリー・ジョエルの唄のせいかもしれなかったし、アイロンの匂いのせいかもしれなかった。

村上春樹『プールサイド』

 

けれど、このような困難な人生の要請に応えていくことを通じて、あなたが、あなただけのオリジナルな生き方を獲得していけるようになるのではないでしょうか。

 

箱庭療法にできること

人生の折りかえし点をきっかけに、新しい自分に生まれ変わっていくことは、全人生をかけたチャレンジであるといっても過言ではないように思います。

けれども、これまで社会人としての生きてきた実績や常識が、どうしてもあなたをしばってしまって、自由に考えることが難しいことが多いのです。

まぁ、社会的地位や成功を手放すことも辞さないなんて、危険きわまりないから、誰だって本当は反対したい(はずだ)。

 

そんな時、箱庭療法に何ができるのか?

それは、リラックスして作る箱庭作品のイメージを活用したカウンセリングです。

常識人としてのあなたが口にしにくいこと、やってはいけないと思っていることも、箱庭の砂の上になら、案外とすんなり表現できてしまうものなのです。

イメージを介して話し合うことを通じて、受け入れ難かったことと折り合いをつけたり、新しい自分を見つけたりできるのです。

 

箱庭療法って何??という方はこちらをどうぞ

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参考文献

河合隼雄『中年クライシス』

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