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【100分de名著 河合隼雄スペシャル 第1回】河合隼雄が大切にしていたもの

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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はこにわサロン東京 吉田

東京・青山でユング派の心理カウンセリングを行っている、はこにわサロンの吉田です。

NHK100分de名著 河合隼雄スペシャルをご覧になりましたか?

隼雄先生のご長男の俊雄先生のお話はとても面白かったのですが、1回25分という短い時間に多くを語っておられるので、少し難しく感じた方もおられたのではないかと思います。

解説というわけではないのですが、内容についてわかりやすくまとめて見たいと思います。

隼雄先生が大切にしたこと

河合隼雄先生は、高校の数学教師をしながら、心理学の勉強を始めました。研究が高じてアメリカへ、続いてスイスへ留学し、日本人で初めてユング派分析家の資格を得て日本に帰国しました。

そんな隼雄先生が大切にしたことは、理論ありきではなく、人ありきの心理学でした。

ですから、スイスで学んだユング心理学をそのまま日本に持ってくるのではなく、日本人に役立つ心理学にするためにはどうしたら良いかを常に考え続けておられたと思います。

今回の番組で最初に紹介された『ユング心理学入門』も、ですから、ユングの著書を翻訳するというのではなく、隼雄先生の言葉で、日本人にわかりやすいよう日本の事例を取り上げながら、書かれています。

戦時中に学齢期を過ごし、日本的なものに対して受け入れがたい気持ちを持っていたと自伝などにも書かれておられますが、ユング心理学をきっかけに隼雄先生は生涯、日本の文化、日本人の心を研究し、発表してこられました。100分de名著の第3回、第4回で、そのことが取り上げられるそうです。

隼雄先生が日本に持ち帰った箱庭療法とは

隼雄先生はスイスのユング研究所に留学している時に、ユングの弟子で、箱庭療法を行っていたカルフ女史に出会いました。隼雄先生は、スイスの言葉で”砂遊び”と呼ばれていたその技法に出会った時に「これは日本人に向いている」と思ったといいます。

それは、日本人がもともと箱庭を作って楽しむ文化を持っていたこと。また、悩んでいる人が、苦しい気持ちを言葉にしなくても、イメージで共有できるところが日本人に向いていると感じたといいます。

箱庭療法とは?

隼雄先生が日本に紹介した箱庭療法は、クライアントの方が、セラピストとの関係性の中で作った作品を、二人でともに味わうことをもっとも大切にします。

カルフ女史自身は、ヨーロッパで箱庭療法をひとつの新しい技法として打ち立てていく使命もあって、彼女の著書(『カルフ箱庭療法』)の中では、ユング心理学に基づいたセラピストの解釈が述べられています。

(ドラ・カルフさんについてはこちらに書きました)

実は、この本が日本語に訳された時、隼雄先生の願いで出版を数年間、保留したといいます。カルフ女史の理論が広く知られてしまうことで、箱庭療法が解釈ありきになることを懸念されておられたのです。

このように箱庭療法は、まずは隼雄先生らが学校やカウンセリングの現場で実践し、事例を研究することから始まりました。

ですから、日本の箱庭療法は、理論より、個々の事例をとても大切にして、研究します。それは、一見、科学的ではないアプローチのようにみえるかもしれませんが、個々のケースを積み重ねて行くと、その中に普遍的なことが見出されていくのです。

悩む人の「なぜ?」に寄り添う心理学

ユングの心理学では、人の悩みに対して、その人だけの新しい物語を見つけ出すことを目標とします。

それは、つまりこのようなことです。

結婚を目前にして、恋人が事故で死んでしまったときに、「その恋人がなぜ死んでしまったのか?」という「なぜ?」に寄り添うこと。やがて、その人が恋人の死を受け入れて、その人らしい人生を歩み出せるように応援すること。

人生の悩みは、割りきれないことばかりではないでしょうか。

なぜ、大切な人を失ってしまうのか。

なぜ、自分はいつも運が悪いのか。

なぜ、自分は愛されないのか?

なぜ、ささやかな願いすら叶えられないのか、などなど。

このような悩みを解消できる心理学は、残念ながらありません。

けれど、クライアントの「なぜ?」にセラピストが寄り添い、ともに考える中で、やがて自分だけの納得できる答えが見つかるのだと思います。

あるいは、納得できる答えは見つからないけれど、その痛みを抱えながらも自分らしく生きられるようになるということもあるかもしれません。

こういう時の「答え」は、クライアント自身が見つけ出すことがとても大切です。

それが「新しい物語」なのです。

 

もう一つの例として、『人間の深層にひそむもの』の中で、隼雄先生が紹介している「ニンジンのお話」をご紹介しましょう。

ある母親が「子どもの好き嫌い(ニンジンを食べないこと)」の相談にきます。母親は、ニンジンは子どもの成長に欠かせないスーパービタミンだと思っています。

一方、子どものほうは「ニンジンなんてまずいものは絶対に食べない!」ニンジンは竜のうんこだと思っています。

この二人の言い分にセラピストは黙って耳を傾けます。するとやがて、母親は「ニンジンくらい食べなくてもいいか」と思うようになり、子どもも「マズイけどたまには食べてもいいか」と思うようになりました。

こういう時、母親に「ニンジンなんて無理して食べさせなくても」と説得したり、子どもに「小さく切ってあるから一口だけ食べて見たらどうか?」と提案しても、うまくいきません。

けれど、セラピストという「ともに歩む者」と話すことで、やがて母親も子どもも、それぞれの折り合いポイントを自ら見つけていきます。

ニンジンを、例えば学校や、仕事に置き換えてみてください。

世の中の常識や、「こうあるべき」論では決して解決しない悩みに、自分だけの物語を見出したときに、その人は、ちゃんと自分の足で歩き始めているでしょう。

 

コンプレックスとは何か

ユング心理学の代表的な考え方のひとつに「コンプレックス」があります。

一般的には、「コンプレックス」というと「劣等感」と理解されていると思いますが、ユングのいう「コンプレックス」は少し違います。

例えば、わたしは学校の職員室が苦手です。わりと平均的な生徒だったので、いつも叱られてばかりいた、という訳ではありませんよ。でも、なんとなく不安な感じや、落ち着かない感じがします。また、一方的な物言いをする先生に対しては強く反応してしまうところがあります。自分が言われているわけではないし、大人としては「ちょっと大人気ないなぁ」くらいの反応がふさわしいときに、内心すごく怒りが湧いたりします。

こういう強い情緒的な反応を「コンプレックス」と呼びます。

ところで、このような「コンプレックス」は、自分と異なるから強く反応していると思われがちです。でも、実は、自分の心の中に同じような部分があるからこそ、他人の行動に強く反応してしまうともいえます。

わたしの中には、理不尽なこと(例えば強い者が弱い者をいじめる)に対して、強く怒るクセがあります。普段、怒らないようにしているから、「ここは怒るべきだ」と思った時に強く出てしまうのです。

でもそれは、行動としては「一方的な物言いをする先生」と近いとも言えるでしょう。わたしは、自分の欠点を見せられているからこそ、強く反応しているのです。

このように、「コンプレックス」とは自分の中に強い感情を引き起こすことで、自分が苦手としていること。しかし、それは自分自身の中の、向き合うべき自分でもあるのです。

 

100分de名著・河合隼雄スペシャル第1回のまとめ

● 河合隼雄先生は日本人のためのユング心理学を紹介してきた

● 箱庭療法は言葉を介さなくても、イメージで悩みを共有できるところが日本人に向いている

● ユング心理学は自分だけの新しい物語を見つけ出すことを目標にする

● コンプレックスは、自分の中で強い情緒的反応をしてしまう事柄で、自分の課題である

 

セラピスト吉田

セラピスト吉田

 

第2回第3回についても書きましたので、よろしかったらどうぞ読んでみてくださいね!

 

100分de名著 河合隼雄スペシャル 放映時間のご紹介

第3回

7月16日(月)22時25分〜22時50分

再放送は、7月18日(水)5時30分〜5時55分 と 0時0分〜0時25分

第4回

7月23日(月)22時25分〜22時50分

再放送は、7月25日(水)5時30分〜5時55分 と 0時0分〜0時25分

いずれも、NHK Eテレで。

 

著書リスト

今回、ご紹介した本や、関連本のリストです。ご参考になれば。

 

はこにわサロン

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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