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おねしょ(夜尿症)で子どもの自己肯定感を下げないよう親にできること

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理士)です。

 

子どものおねしょ(夜尿症)のお悩みは、治し方や日々の対応の工夫が一番気になると思いますが、もうひとつ忘れてはならないことがあります。

 

それは、おねしょで傷ついた子どもと大人のこころのケアです。

 

この記事は

 

○  子どものおねしょの対応に悩んでいるご家庭

 

○  子どものおねしょで、親子ともに気持ちが動揺したり、自信がなくなってしまったと感じている方

 

に向けて書いています。

 

おねしょを子どもはどう感じているの?

おねしょをした子どもの気持ちは、どんなでしょう。

きっと、こんな風に感じているのではないでしょうか。

 

○  失敗しちゃった

○  恥ずかしい

○  どうしよう・・・

 

これまでの成長の過程でトイレトレーニングを経て、「トイレが自分でできること」を誇りに感じた経緯があるからでしょうか。

 

おしっこの失敗は、子どもも大人も「失敗感」が強いように思います。

 

子どものせいじゃないのにね。

 

大人は子どものおねしょをどう感じる?

おねしょをして、子どもが「失敗した」と思っているときに、大人が叱ってしまうと「自分が悪い」「自分はダメだ」と感じさせてしまうので、大人の反応は慎重にしたいところです。

 

でも、叱ったりしなくても、親ががっかりしていると、伝わってしまうもの。

 

また、親が「おねしょ!?大丈夫かしら?治るかしら?」などと不安になると、それも子どもに伝わっていきます。

ですから、親側が子どものおねしょをどのように見守れるのか、ということが大事になってくるのですね。

 

では、この後、おねしょの要因について、またケアについて順番にお話していきます。

 

おねしょの主な要因・・・身体的なこと

おねしょの要因としては、大きく以下の3つがあります。

 

○  身体的な要因

○  ストレス

○  性質・性格・個性

 

身体的な要因については、わたしは専門ではないので、他のサイトをお調べいただくのがよいのですが、わたしが「わかりやすくていいな」と思ったサイトをご紹介しておきますね。

 

ほぼ日刊イトイ新聞・グッバイ、おねしょ

熊本大学附属病院の中村公俊先生が、とてもわかりやすくおねしょのメカニズムや、できる工夫、治療方法などについてもお話してくださっています。

 

おねしょとストレス

上記の中村先生がお話しくださっているように、おねしょの中には病気によるものもあるので、まずは、そうでないことを確認してくださったらと思います。

 

ですから、この後は、病気ではなかったり、おしっこを溜める力が発達中だったりした場合に読んでくださいね。

 

今まで、おねしょしなかったのに、突然してしまうようなケースには、ストレスが関係していることがあります。

 

例えば、今(2020年5月)は新型コロナウイルスで幼稚園や学校が休校になり、その不安からおねしょが出現することも出ています。

 

また、家庭や幼稚園・学校で子どもが動揺する出来事やストレスがきっかけで、おねしょが出現することもあります。

 

このような場合のおねしょは、ストレス反応なので、子どもが安心して過ごせるように配慮することが大事ですし、安心感を取り戻すとおねしょもなくなっていきますよ。

 

おねしょと性格・気質・個性

おねしょをしやすい性格・気質があるのか?

わたしが出会ったケースから感じたことを少しお話したいと思います。

 

神経質な子

おねしょやお漏らしの相談を受ける時に、とても神経質なお子さん・お母さんであることがあります。

 

もっとも、神経質だから、おねしょやお漏らしがあるのか、おねしょ・お漏らしがあるから親子ともに神経質になってしまうのかは、わからないのですが。

 

ただ、失敗を防ぐために、トイレの時間を守らせようと神経質になっている間は、頑張っても失敗してしまうのに、子どもが遊びや好きなことに夢中になっていて「トイレ忘れてた!」となると、おねしょやお漏らしの失敗を卒業していくから、面白いものだなぁと思っていました。

気になると、つい、おねしょが生活の中心にきてしまいやすいのですが、心配しすぎると逆効果のようです。

 

おねしょの失敗はあるけど、日中は気にせず、いっぱい遊んで楽しめるといいですね!

 

不安を感じやすい子・繊細な子

子どもの中には、小さい時から心配症な子や、感じやすく繊細なお子さん(HSC)がおられます。

 

不安を感じやすい分、ストレス反応も出やすくなってしまうのですね。

 

ストレス反応は、もちろん、出さないで溜め込むより、出してくれたほうがいいです。

 

でも、ストレス反応で生じたおねしょに、さらに不安が増してしまう辛さがあるかもしれません。

 

この後、ケアについてもお話しますが、できるだけ本人に寄り添って、ゆったりと過ごしてくださるとよいです。

 

アンバランスな子ども

おねしょに悩む子どもの中には、能力面・精神面でアンバランスさを感じさせる子がいます。

 

秀でたところがあるのだけど、それがまだうまく活かせない・まだうまく支えきれない子というのでしょうか。

この図もわかりにくいかもしれないのですが、「頭でっかち」という意味ではなく、「大きな頭=何か突出して秀でた力」という意味で表しています。

 

何か突出した力があることは、ない人からしたら羨ましいことなんだけど、成長過程では、ちょっと持て余しちゃうことがあるかもしれない。

 

(みんなが普通のハサミを使っているのに、それで足りるのに、ひとりだけ高性能のハサミを持っていて、使いこなせない、とでもいうのかな。)

 

このバランスの悪さがずっと続くかというと、それはケースバイケースなのですが、成長すると次第にバランスがとれるようになり、安定感が出てくることが多いように思います。

 

すると、おねしょを含め、不適応なことが落ち着いていくのです。

 

でも、長期戦になることが多いので、自信を失うことのないように気をつけてあげたいです。

 

おねしょで傷ついたこころのケアとは

おねしょだけじゃない「ちょっと困ること」

最初にも書きましたが、おねしょは、子どもにも大人にも、何かこう、強い失敗感が伴うような気がします。

 

赤ちゃんに逆戻りしてしまうような感じがするのかもしれませんね。 

 

でも、寝ているときのことだから、子どものせいじゃないんですよね。

おねしょって、考えてみれば「お父さんのいびき」とか「お姉ちゃんのアレルギー体質」と同じなんじゃないかな?

 

そう思って、少し気持ちを楽にしてもらえるとうれしいなぁと思います。

 

(*でも、病気からくることもあるから、治療が必要な病気が隠されていないかどうかはチェックしてくださいね。)

 

ストレスのケア

子どもにとって、大きな変化や不安なことなどがストレスとなって、おねしょが生じることがあるとお話しました。

 

つまり、おねしょは、子どもからの「SOS」というわけですね。

 

何か最近、気になることはありませんでしたか?

 

子どもの表情が固かったり、食欲がない、遊ばない、ぼんやりしている、など、変化はありませんか?

 

子どものストレス源がわかって、何か少し手助けできることがあればしてあげましょう。

 

でもいちばんよいのは、お父さん・お母さんが「困った時にはいつも一緒にいるよ、心配しなくて大丈夫だよ」というメッセージを伝えてあげることです。

 

おねしょを通じて、親子の関係が深まっていくと、その後の子育てにもよい影響となっていくと思いますよ。

 

子どもの性格・気質・個性を認める

身体でもなく、ストレスでもなく、なんとなく、この子の個性・持ち味なのかなぁ・・・というような場合。

 

「この子はきっと大物になるぞ」って思って、気長に成長を見守ってくださるとうれしいです。

 

長期戦でちょっとつらいよ、という場合は、親子それぞれに、信頼できる相談者を持てるといいかもしれません。

 

■  お子さんの通う幼稚園や学校のスクールカウンセラーに相談する(いちばん身近なプロ)

 

■  お住まいの地域の、「子育て相談」「教育相談所」に相談する(検索してみてくだいね!)

 

■  お住まいの地域の臨床心理士に相談する→日本臨床心理士会

 

■ はこにわサロンでもご相談をお受けしていますので、必要なときは「カレンダー」からお申し込みくださいね。

 

おねしょについて理解を深められる絵本

おねしょをした子どもの気持ちを理解するのに、もしよかったら手にとってみて欲しい絵本があります。

 

『モチモチの木』

『旅するベッド』

『きょだいな きょだいな』

の3冊です。

 

『モチモチの木』

斎藤隆介作、滝平二郎絵、岩崎書店

 

『モチモチの木』は、読んだことのある方も多いのではないかと思います。

 

主人公の「豆太」は、とにかくおくびょうで、夜中にひとりでトイレに行けないのですよね。

 

いつも「じさま」に一緒に行ってもらう。

 

さて、今を生きる子どもたちは、豆太と同じ境遇だという子どもはいないかもしれません(お父さんとお母さんがいなくて、おじいさんと一緒に住んでいて、その上、トイレが外にあるという・・・)が、「なんとなく不安」や「自信がない」と感じている子どもはたくさんいるのではないでしょうか。

 

あるいは「昼間は元気なのに、夜になると不安」とか「家の中では大将なのに、家の外に出ると借りてきた猫」みたいな子とか。

 

こんな時は、この「じさま」のように、気長に子どもの不安に寄り添ってくださるといいなぁと思うのです。

 

お話の中で、豆太は、急病のじさまのために、勇気をふりしぼってお医者を呼びに行くんですね。

 

そして、その帰り道に、勇気のある子どもにしか見ることのできないモチモチの木に火が灯っているのを見ることができました。

 

さて、その後、豆太が夜ひとりでトイレに行けるようになったかというと、やっぱり行けないんです。

 

わたしは、この終わりが大好きです。子どもが何か大きなことを成し遂げた後にグイッと成長することはもちろんありますけど、あんがいと「行ったり来たり」なんですよね。

 

だから、「やっぱり行けない豆太」も「気長にトイレにつきあったじさま」も、「そうそう、そうなのよ!」と言いたくなるのです。

 

でも、いざとなったら頑張れる豆太は、やがて、ひとりでできる豆太になっていくと思います。

 

おねしょの話から少し離れてしまいますが、子どもが頑張った時に「いつでも同じだけ頑張れる・同じことやそれ以上ができる」と思わないでくださるといいな、と思います。

 

「いずれできるようになる」予想図を見せてくれたと思ってくださると、子育てに無理がなく、予想が外れないと思います。

 

『旅するベッド』

ジョン・バーニンガム作、長田弘訳、ほるぷ出版

 

この絵本は、ひとりっ子のジョージーが、自由に旅のできるベッドを買ってもらうところから始まります。

 

迷子のトラを親元に返してあげたり、海賊と戦ったり、魔女と空飛ぶ競争をしたり、毎晩、とても楽しそうです。

 

ときには、海でイルカと泳いだり・・・

ジョン・バーニンガム作、長田弘訳、ほるぷ出版

 

ときどき ジョージーは海にいって イルカと およいだ。

その つぎのあさ ベッドのまわりは びしょびしょになった。

ジョン・バーニンガム作、長田弘訳、ほるぷ出版

 

なんか、おねしょみたいじゃありませんか?

 

おねしょの朝に、「昨日は夢の中で、イルカと泳いできたのかなー」って思ってみるゆとりやユーモアが持てたら、親子で少し気持ちが楽になるかもーと思います。

 

「おねしょ小人のしわざかな〜?」のように擬人化そると、おねしょの苦しさが少し軽くなるようにも思います。

 

『きょだいな きょだいな』

長谷川摂子作、降矢なな絵、福音館書店

 

これは、ちょっと不思議な感じのする絵本です。

 

急に野原に、きょだいなピアノや、きょだいな泡立て器や、きょだいなトイレットペーパーなんかが現れて、100人の子どもが「うわぁ〜」とばかりに遊ぶお話で、おかしいような、ちょっと怖いような。

 

でもね、この絵本に描かれている不思議なアンバランスが、子どものアンバランスさに、不思議と重なるように感じます。

 

ですから、子どもの理解の一助として一度、手にとってみていただけるとよいかもしれません。

 

また、親子の絵本タイムにもおすすめです。

 

この本に限らず、ちょっと怖い・ハラハラする本は、大人と一緒に、安心できる設定で読んでもらえると、子どもには、大人と一緒の安心感を体験できる、大事な時間になると思います。

 

まとめ

おねしょは、子どもにとっても、親にとっても、失敗感や不安感をもたらしやすいです。

 

でも、おねしょは子どものせいではなく、身体やこころのSOSメッセージであったり、成長のプロセスであったりします。

 

ですから、どうぞ、否定的に考えすぎないで、そして成長とともに卒業していってくださいね。

 

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