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教育虐待は毒親だけじゃない 親の3つの不安に注意【チェックリスト付】

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)

 

子どもに教育を受けさせるのは親の務めですが、過剰にやりすぎて虐待になってしまうことがあります。

 

虐待、という言葉から、一部の特別なケースだけだろう(例えば毒親とか)と思われがちですが、日々臨床に携わっていると「子どもを愛している普通の家庭でも生じる」と感じさせられます。

 

今日は、いわゆる教育虐待とはどういうものかに加え、普通の家庭でも生じる虐待リスクの高い教育についてお話したいと思います。

教育虐待リスクの高さをチェック

最初に、教育虐待リスクの高さをチェックリストをご紹介しますね。

いくつあてはまりますか?

 

A)子どもには親より高いところを目指してほしいと思う。

 

B)どうせだらだらするなら習い事をする方が有益だと思う。

 

C)子どもの頃に始めたら少しの努力でできるようになってお得だと思う。

 

D)たくさん習い事ができるのは幸せ・恵まれていると思う。

 

E)子どもには適切な意思決定は難しいのだから親が決めるし、その方が子どものためになると思う。

 

F)習い事を始める前に子どもの気持ちを確認するが、あとから子どもの気持ちが変化しても受け付けない。

 

G)子どもの気持ちを確認するが、親の願い通りになるよう誘導してしまう。

 

H)習い事には費用対効果を求めてしまう。

 

I)子どもが親の期待に応えないとがっかりしてしまう。

 

J)人より早く、たくさん学ぶことで、勝ち組になれると思う。

 

(A)から(J)まで10のチェックのうち、5つ以上当てはまるときや、(E)(F)(G)の意思決定項目にチェックが入る場合は、リスクが高いと感じられます。

 

それでは、教育虐待はなぜ生じてしまうのかについてお話していきます。

なぜ教育虐待は生じるの?

大きく

子どもで親の自己実現を果たそうとする歪んだ愛情(一般的な教育虐待の理解)

 

②子どもの幸せを願い愛情をかけているが不安によって暴走が生じる

 

の2つがありますから、順に説明します。

 

教育虐待の原因① 子どもが親の自己実現

「自分は勉強したかったのに親に反対された」

「自分は条件が整わず夢を叶えられなかった」

 

親が自分の人生に不満足・後悔があるときに、「子どもには自分が感じた悔しさは感じさせたくない」「子どもには夢を叶えてほしい」と願うものです。

 

そう感じることは、自然な感覚であると言えるでしょう。

 

ですから「子どもが自分の願いを叶えることを応援する」のは間違っていません。

 

ただ、親の願いを子どもに押し付けてしまうと、夢が実現するのは親で、当の子どもは親の身代わりを強いられることになります。

 

このようなことをしてはいませんか?

■進路を勝手に決める

 

■自分の理想を押し付ける(進路だけでなく、服装やふるまい、好みなども)

 

■子どもの行動や結果が親の思い通りにならないと非難する。罰を与えたり、できるまでやらせるなど無理を強いる。

 

■子どもの意志はすべて否定する

 

■親の願いを叶えられない子は「ダメな子」「うちの子ではない」などと存在を否定する

 

■親の言うとおりにしないと「将来社会で通用しない」などと脅す

 

■良い成果が出ても「当たり前」子どもが喜ぶと「いい気になるな」と非難する

 

このような関りはどれも、子どもの人格を認めておらず、親の権威を利用した不適切な子育てで、どれも虐待に当たると認識する必要があります。

 

子どもには子どもの気持ち、好み、望みがあり、たとえそれが親の願いと違っても、否定せずに、よく話を聴き、見守り、適切な助言や手助けをする、というのが「ありたい姿」です。

 

教育虐待の原因② 親の不安が暴走して

上記のような、子どもの人格を認めず、親の夢をかなえる道具のように扱う場合は、明らかに教育虐待であるとわかるのですが、そうではないケースが実は多いのです。

 

両親が子どもに温かい愛情をかけて育て、「子どもが好きな道で幸せに生きてくれたらいい」と願ってくれているときにも、親が「子どもが幸せになれないのでは?」と不安に感じると急に視野が狭まり、極端な教育方針をとってしまうことがあります。

 

親の不安には3つあります

不安①将来の不安

不安②子育ての不安

不安③子どもの力に不安

 

不安①親の愛情x将来の不安

昭和の時代は経済成長が約束されている時代でした。

 

それに比べて今は、経済の停滞、技術革新スピードが速く、未来予測が難しいです。そんなときに「今後は仕事がAIに奪われる」などと言われると、親はとても不安になります。

 

将来子どもが困らないようにするためにできることは何か?学歴なのか、人に誇れる特技があればいいのか、医学部か、留学か?

 

「のんびり育てよう」と思っていたのに、子どもの将来がかかっていると思うと、急に視野が狭まり思いつめてしまう。

 

「公立でいいよね」と言っていたのに、それではダメな気がして早期教育や塾通い・受験をする。毎日、習い事を詰め込んでしまうということが生じがちです。

 

もちろん、親子でよく話し合っている、子どもが望んでいるなら問題ないのですが、親側に「子どもの将来の不安」があると、子どもの弱音を許容できなくなったり、思うような結果が出ないと悲観的になって子どもを否定してしまいやすい。

 

その結果、親の望とは裏腹に、子どもに対して教育虐待的な子育てをしてしまうという悲しいことがおきてしまうことがあるのです。

 

不安②親の愛情x子育ての不安

今の親には、子育てのお手本がありません。

 

自分たちが子どもの頃は、家庭でも学校でも、しつけのための体罰が許容されていたり、精神論でがんばることを強要されたりするものでした。

 

今は体罰は許されていませんし、精神論でがんばっても成果は見込めないこともわかっています。

 

このように価値観が反転し、お手本がないときに、目の前の我が子にどうしてあげるのがよいか判断するのはとても難しいことです。

 

例えば「がんばれ」と「無理しないで」の塩梅がわからない。

 

子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、どう対応したらいいの?

 

昔は遊びの内容まで親が口出しする必要はありませんでしたが、今はゲームやタブレット使用の遊びが多く、親が遊びの内容や時間を制限しないといけない。

 

そもそもネットやSNSは親も不得意なのに、親として責任を持って子どもの安全管理をしないといけない。

 

ネットで調べれば手軽に情報が得られもするが、情報が多すぎてどれが正しいのかわからない。

 

このような状況で、自信を持って子育てをするのはどれほど困難なことか。

 

このような時に、塾や習い事は、子育てをプロに相談・分担してもらえる場として機能します。

 

ほどよく活用できれば問題ないのですが、親の不安が強いと依存してしまいがちです。

 

その結果、過剰な習い事やプレッシャーを与えてしまい、子どもが疲れきり、自信を失ってしまう、親子関係も不安定になってしまうのです。

 

不安③親の愛情x子どもの力に不安

子どもたちを見ていると、それぞれ独自の持ち味(長所短所の両方やその子独自の生きる力)を持っているなと感じさせられます。でも、子どもの頃はそれがまだ「原石」のせいか、親の目には価値あるものとして認識してもらえないことが(よく)あります。

 

自分の子どもの力に不安を感じると、ついつい周りに目がいって比べてしまいます。すると、周りの子たちのほうが優れて見えて、不安が増してしまう。

 

すると、子どもの力を伸ばすために塾通いや習い事が必要だと考えてしまうことになります。親が子どもの資質に自信がない分だけ、習い事が増える、ということもあります。

 

その結果、子どもがもともと持っていた持ち味が損なわれてしまったり、自信を失ってしまう、ダメな子だと思い込むような残念なことが生じます。

 

教育虐待をしないためにはどうすればいいの?

教育虐待が生じる背景には、親が自分の人生に不満があったり、子どもの将来への不安があるのですが、親はどうしたらこれらの課題を克服していけるのでしょうか?

 

大切なのは

子どもは別の人格であると理解する

■親が不安を相談できる場を持ち不安を子どもにぶつけない

 

子どもは別の人格

子育てをしていると、とくに生後1~3年のあいだは親子が密着して過ごすため、親子の境界が曖昧になるものです。

 

子どもが小さいうちは、親子が密着することで子どもが健やかに成長できるので、悪いことではない(むしろ必要なこと)です。

 

しかしこの密着した体験や、親が子どもの子育てに全責任を負うという気持ちから、子どもは自分の一部であるかのような錯覚、自分が何もかもしてあげないといけない錯覚をうむことがあります。

 

ですから、子どもの人格を認めない・親の思うように支配する子育てをしてしまう場合でも、子どものことを大切に思っていないわけではないのです。(大切にする方向は不適切なのですが。)

 

このように密着していると、「子どもは別の人格だ」と本当に理解することは至難の業です。

 

子ども側も、幼少期から親に支配されて育つため、親離れに不安や困難が伴うことが多くありますが(母子分離不安については別に書きます)、子どもの成長と親離れが、親に「子どもは別の人格」を理解させる貴重なチャンスです。

 

この過程で子ども側に分離不安、不登校自傷行為摂食障害などのこころの病が生じることがあるので、専門家への相談が必要になることも多いです。

 

不安を子どもにぶつけない

子育ての不安や、子どもの将来の不安は、ひとりで抱えて悩むと大きく膨らみやすいです。

 

ぜひ、ご夫婦やお友だちと話をする機会を持ってください。不安のすべてを解消することは難しいと思いますが、共有し、冷静な視点を持つことで、子どもに親の不安を丸ごとぶつけてしまう言動を防ぐことができます。

 

それから、いま親が「大事だ」と思う価値観も、子どもが大人になる頃には変わっているかもしれません。ですから、親の価値観を押し付けないことも必要です。

 

また、不安だからと詰め込むのではなく、子どもの自由な時間を守ってください。このような自由な時にこそ、子どもは物を考え、感じ、大きく成長します。

 

子ども時代に頑張りすぎて疲弊した状態で社会に出るより、意欲と気力、希望にあふれて社会に出る方がずっと活躍できるはずです。

 

教育虐待を克服するためにカウンセリングにできること

教育虐待(子どもに親の価値観で教育・生き方を押し付けること)は、親が「子どものためになる」と信じる・決めつけてしまって生じてくるということをお話しました。

 

この記事を読んで「思い当たる・・・」と思われたら、いちばん良いのは身近な信頼できる人と不安について話すこと、それから子どもに気持ちを聞いてみることです。

 

けれど、それだけでは解消できない場合もありますから、その時にはカウンセリングを利用することは有用です。

 

カウンセリングにできることにはこのようなことがあります:

■子育ての不安の解消

■親が自分の気持ちをコントロールできるようになる

■子どもへの接し方の修正

■他人と比較せず子どもの良さを見出す

■子どもを信じる力を持つ

■子どもの人格を認め、子離れする

■親が自分の人生を生きられるようになる

また、行き過ぎた教育で傷ついた子どもたちに対してもこのようなカウンセリングができます:

■分離不安への対応

■不登校、自傷行為、摂食障害などのケア

■自己理解を通じて自己肯定感や自信をとりもどす

 

子どもが元気で幸せに、その子らしく成長していけるよう、親が子どもを適切に育み、親子の良い関係をとりもどしていけるように応援します。

 

はこにわサロンのカウンセリングについて詳しく

 

参考資料

武田信子 『やりすぎ教育 商品化する子どもたち』(ポプラ新書)2021

武田信子 教育虐待(Educational Maltreatment)2019

「勉強しなさい!」エスカレートすれば教育虐待』 日経BPマーケティング 2019

古庄純一・磯崎祐介 『教育虐待・教育ネグレクト』 光文社新書 2015

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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