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不登校24万人〜50%が「無気力・不安」が要因と回答:なぜ?対応は?

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。

 

文部科学省は2022年10月27日、全国の学校を対象に2021年度実施した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表しました。

 

 

この中で、全国の不登校児童生徒の数が24万人と大幅に増加したこと、また、不登校の要因として約50%の子どもたちが「無気力、不安」を挙げたことが話題になっています。

 

 

不登校といえば、わたしたち大人は、「学校で何か嫌なことがあったのか?」「いじめじゃないか?」と考えたり、「生活リズムが乱れているから」「怠けているのでは?」などと思いがちですが、そういう不適応ではなくて、もっと根の深い問題があることをこの統計は示していると思います。

 

この記事では、この問題がなぜ生じているのか?どのように対応してあげる必要があるのかについて、検討していきます。

 

不登校の理由 No.1 「無気力」「不安」とは何か

まず、子どもたちが訴える「不安」「無気力」とは、どんなことを指すのでしょうか。

 

不安

〇自分は学校でがんばれないのではないか。

〇自分は学校でうまくふるまえないのではないか。

〇勉強についていけないのではないか。

〇友だちができない・うまく関係をつくれないのではないか。

〇先生に叱られるのではないか。

○うまくできないと笑われたりバカにされたりするのではないか。

○みんなと同じようにできない自分はダメなのではないか。

 

何か特定の科目や活動、先生や友だちに対して不安を感じている場合もあれば、漠然としていることもあります。

 

また、今まで既に、学校での適応状態があまりよくなかった子どももいれば、今まではうまくやれている、大人から見ると何が不安なのかわからない、という子どももいます。

 

不安要素が具体的に判明する場合は対処がしやすいですが、対処しても不安が消えず、次々と新しい不安要素が生まれることもあります。(つまり、本当の不安は言葉にできていないということ。)

 

不安な気持ちは、学校が安心できる場所だと感じられていないことから生まれます。

 

「ちゃんとできないと先生から叱られたり、友だちからバカにされるのではないか?」と思うと、いつも緊張して、不安を抱えながらの学校生活になるでしょう。少しのミスでも苦痛に感じたり、悲観的に思いつめてしまうこともあります。

 

「考え過ぎ」「甘え」とお感じになるかもしれません。

 

実は本人たちもそう思っている場合も多いのです。だから、よけいに不安になってしまうのです。

 

そのため、安心させようとして「大丈夫だよ」と伝えたり、「こうしてみたら?」と助言することでは、子どもたちの不安を解消できないことが多い、というのが難しいと思います。

 

無力感

〇どうせ頑張っても無駄だ。

○また失敗する。

○がっかりするだけ(がっかりさせるだけ)。

○どれだけやっても終わりがない。

○最初からやらない方がマシだ。

〇頑張る気力がわかない。

〇努力する意味がわからない。

 

子どもがこんな風に「やってみること」「がんばること」を怖がる、嫌がるとき、おそらく、それまでに失敗して責められた・笑われた、どれだけ努力しても達成できない・終わりがない、というような体験、そんな風に傷ついていることを誰にも気づいてもらえない・わかってもらえない苦痛があったものと考えられます。

 

ですから、ただ励ましたり、ご褒美でモチベーションを持たせて動かそうとしても、うまくいきません。(励ましやご褒美作戦は、こころが元気な子どもたちにのみ有効なアプローチです。)

無力感や不安を感じて不登校になる子どもが増加した理由は?

なぜ、無力感や不安を感じて学校に行けない子どもが増えたのでしょう?

3つの視点から考えてみたいと思います。

 

①大人・社会と連動している

子どもたちの無力感・不安感は、大人・社会の無力感・不安感と関係があるのではないでしょうか。

 

こちらは、内閣府・世論調査のデータで「日常生活に悩みや不安を感じているか」をグラフにしています。

 

平成に入った頃から、「悩みや不安を感じている」人の割合が上昇し、コロナ禍で一気に8割弱まで増加していることがわかります。

 

 

大人が感じた社会経済への不安、将来への不安は、大人の態度、言動、また子どもたちへの日常的な係りを通じて子どもたちにも伝わっています。

 

実際、子どもたちとの対話のなかで、「人並みの学歴がないと将来正社員になれないかも」とか「コミュニケーションが苦手だと将来ひきこもりになってしまうかも」など、大人から聞きかじった不安を口にすることがしばしばあり、潜在的な不安の高さを感じることがよくあります。

 

②子どもへのプレッシャーが増している

いま、子育てをしている平成生まれ世代(30~40代)は、生まれた時から、あるいは社会に出るときには、経済が低迷し、就職氷河期を体験していたり、ブラック企業悲話を耳にする、何かにつけて「自己責任」と言われる、自助努力を求められる時代を生きてこられています。

 

そのため、子育てでも、「学歴は大事だけどそれだけじゃ足りないのでは?」「人よりすぐれた能力・個性を育てないと生き残れないのでは?」と不安に感じてしまい、子どもへの要求が高くなってしまう傾向があるのではないか、と感じます。

 

「教育虐待」と言う言葉がありますが(子どもに勉強や習い事を強要する)親世代の不安が、子どもへのプレッシャーとなってしまっていると感じられます。

 

 

③マルトリートメント

マルトリートメントというのは、英語で「不適切な養育」を意味します。

 

いま、子どもへの虐待やネグレクトについては「してはいけないこと」という共通認識が育ってきていますが、それは、暴言暴力やネグレクトなどの極端な子育てイメージに偏っているようです。

 

実際に一番多いと思われる心的虐待やマルトリートメントは、「自分もそう育てってきたのだから」と見逃されやすく、しかし子どもへの悪影響はとても強いので注意が必要です。

 

マルトリートメントは例えばこのような子育てです(家でも学校でも)

〇できて当たり前、できないと否定する

〇条件をつける(いい子はうちの子、悪い子はいらない)

〇人格や存在を否定する

〇怒鳴ったり脅したり、恐怖で支配する

〇親の言う通りにすることを求める

〇何をしても親を満足させられない

〇言葉でなく態度で注意を与える(例えば無視する)

 

実は、昭和・平成世代の子育て・学校教育の中には、このような係りはよく見られていたと思います。そのため、「これが普通」「このくらいで傷つくほうがおかしい・弱い」と思われていることもあります。

 

しかし、マルトリートメントを受けて育つと、大人になっても、いつも人目を気にする、自己肯定感がない、いつも緊張していて情緒不安定(たとえば怒りが抑えられない)、どんなに成功しても自信が持てない・不安が消えないなどの生きづらさを抱えるようになります。

 

子どもの不安・無力感は、世代間連鎖もあるのかもしれません。

 

 

不登校の子どもの無力感・不安を解消するには?

①安心安全な居場所の確保

まず、何より大切なのは、子どもが安心していられる居場所を確保することです。

 

安心していられる居場所、というのは、子どもが「いい子でいなくても大丈夫」つまり「学校に行かない自分でも変わらず愛してもらえる場所がある」ということです。

 

これは、家庭・学校、両方にいえることです。

学校にいま行けないとしても、子どもの居場所はなくならないし、いつでも来てくれたら嬉しい場所であることを伝えてあげられるといいと思います(プレッシャーではなくて)。

 

家では、生活リズムが乱れたり、ゲームや電子機器使用が増えたり、情緒不安定になって扱いづらくなってしまうことがあります。でも、それが今子どもにできるベストであることも多いので、否定しないで受け入れてくださるとありがたいです。

 

 

②子どもの気持ちを理解する

大人が温かい態度で話を聴いてくれる、理解しようとしてくれることは、子どもの気持ちを落ち着かせます。

 

アドバイスは不要です。

 

といっても、うまく自分の気持ちをお話することができないこともあります。また、大人には言いたくないときもあります。

 

まずは、本人が嫌がらない話題から、少しずつコミュニケーションがとれるようにしていけるといいと思います。

 

たとえば、食べ物の話(食べたいもの、おやつ何にする?)や、子どもの好きなもの(アニメ、ゲーム、YouTubeでも)、欲しいものの話など、子どもが聞かれても嫌がらない・話しやすい話題でキャッチボールができたり、子どもの好きなことを教えてもらう感じがいいのでは、と思います。

 

親子の対話ができるようになってくると、本音がこぼれ落ちることがあります。大切に聴いてあげてください。

 

 

③本人ペースでの成長を検討・応援する

家庭での過ごし方、習い事に行きたいか、友だちには会いたいのか、子どもによって様々です。

 

大人が勝手に優先順位を決めてしまわないようにしましょう。(例えば、勉強が優先、とか、学校に行かないならゲームや好きな遊びはなし、など、大人が決めてしまうと、子どもの安心感が損なわれてしまいます。)

 

ペースを尊重する、ということは、存在を尊重することです。

 

 

④親が相談する

子どもの安心安全を確保するためにお勧めすることは、大人にとってはかなり我慢や努力がいる内容です。

 

でも、大人が我慢・無理をしていては、続きませんし、子どもにも伝わります。ですから、大人がサポートを得ること、安心して話せる場所、相談できる場所を得ることはとても大切です。

 

家族や友だちで話せる人はいますか?(ただし、子どもに相談することは避けましょう。)

学校でしたら、担任の先生やスクールカウンセラーなどが窓口になりますが、「話しやすい」と感じる相手を見つけましょう。

 

当事者・経験者とつながったり、適応指導教室などの不登校サポート、フリースクールを探してみることも一案です。

 

いまは、オンラインでつながることができる場所も増えています。

 

こちらからは、全国の臨床心理士を検索することができます。

臨床心理士に出会うには

 

はこにわサロンでもご相談を受付けていますので、カレンダーからお申し込みください。

 

 

まとめ

全国の不登校児童生徒の増加は、大人や社会の不安の高さと関係があるのではないか、ということをお話しました。

 

不登校支援をしているといつも思うのは、不登校は子どもからのSOSであり、親子関係や生き方を見直す機会でもある、ということです。

 

コロナ禍による社会不安はまだまだ続きますが、親子のコミュニケーションを通じて、安心感・信頼感を獲得していけますように願っています。

 

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