カサンドラ症候群とは?原因と対応方法(チェックリスト付き)

東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。
カサンドラ症候群とは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つパートナーや家族との関係において、「気持ちが通じない」「共感してもらえない」という孤独感が長期間続くことで、心身に不調をきたす状態を指します。
名前の由来は、ギリシャ神話の「予言が当たるのに誰からも信じてもらえなかったカサンドラ」。そのように「自分の苦しみをわかってもらえない孤立感」から、この呼び名がつきました。
カサンドラ症候群の主な症状
● 気分の落ち込み、不安
● イライラや怒り
● 頭痛、胃痛、慢性的な疲労などの身体症状
● 自分の存在価値を疑う感覚
カサンドラ症候群は、ASDの夫を持つ妻の苦しみがよく知られていますが、夫婦間だけでなく、親子間や職場の人間関係でも生じることがあります。
夫婦、親子、同僚は、一般的によい関係が期待されているため、違和感や困り感があっても、つい無理して相手に合わせたり、我慢してストレスを溜めやすくなります。面倒見が良く責任感が強い人ほど、自分の努力でカバーしようとしてひとりで抱えやすくなります。周囲も、悪意なく「気のせいじゃない?」「誰にでもあるよ」などと答えがちで、余計に当事者を追い詰めてしまいます。
カサンドラ症候群チェックリスト
次の項目にいくつ当てはまるか、チェックしてみましょう。
3つ以上当てはまる場合、カサンドラ症候群の可能性があります。
心のサイン
□ 話をしても共感してもらえず、虚しさを感じる
□ いつも「自分が悪いのかも」と責めてしまう
□ 「自分の方がおかしいのかも」と怖くなる
□ 強い孤独感があり、パートナーや家族といても一人ぼっちのように感じる
□ 相手に感情をぶつけたあと、罪悪感でつらくなる
□ 我慢ばかりで、喜びや楽しみを感じにくい
身体のサイン
□頭痛や胃痛、肩こりなどストレスによる不調がある
□ 夜眠れない、または朝起きても疲れが取れない
□ 動悸や息苦しさなど、自律神経の乱れを感じる
関係性のサイン
□ 相手に話をしても、反応が乏しく伝わらないと感じる
□ 「わかってもらえない」と思う出来事が繰り返される
□ 相手と過ごすのがつらく、避けたくなることがある
カサンドラ症候群・診断基準
カサンドラ症候群は正式な診断名ではありません。
症状には身体的な不調(例えば頭痛、動悸、めまいなど自律神経の乱れ、疲れやすさ、体重の増減)や精神的な不調(抑うつ、無気力、情緒不安定、孤独感、罪悪感など)があります。
日常生活へ支障が出ているときは、医療機関の受診や相談機関につながることが必要です。
ASDとは
ASD(自閉スペクトラム症)は、発達特性のひとつで、以下の特徴が見られます。
● 場の空気や相手の気持ちを察するのが苦手
● 曖昧な表現が伝わらない(例「困ったら質問してね」「適当にお願い」)
● 目が合いづらく、お礼や謝罪が苦手
● またはよくしゃべり、明るく社交的だが共感や情緒理解が苦手
● 柔軟な対応が苦手
● 学校や職場など、求められることと評価がはっきりしている場所で能力を発揮し、高い評価を得ることもある
● 自分や周りの人が困っていることに気づいていないことも、逆に、自覚していて適応のために努力を重ねているがうまくいかず自信を失っていることもある。
このように、ASDの特徴は人によって異なり、わかりにくい・気付かれにくいこともあります。
特に、本人に自覚がなく、優位な地位(例えば、上司、夫、親など)にある時に、ハラスメントが生じやすくなったり、それが、他の人からは気付かれにくいこともあります。例としては、仕事で優秀な実績を上げており、人柄もよく見えるが、部下にだけは過剰な要求をするとか、外ではいい夫・親に見えるが、家族に対しては過剰な要求をして、できるまでやらせるなどがあります。
しかし、本人に加害意識はなく、正しいことを伝えているだけ、あるべき姿を求めているだけなので、「やりすぎ」や「相手の気持ちを考えて?」が伝わりにくいのです。
ASDについて理解するには、ネットサーチだけでなく、本を読むことをお勧めします。また、その際には、発達障害について解説している本に加えて、ASD当事者が書いている本を読むと、より深く理解できるのでお勧めです。
本はたくさんありますが、おすすめはこちらです:
『みんな水の中』
カサンドラ関係
カサンドラ症候群は、夫婦関係で最も多く見られますが、以下のような関係でも起こり得ます。
● 夫婦関係:「何を言っても通じない」「一緒にいても孤独」
● 親子関係:ASD特性の親に育てられた子どもが「共感してもらえない」と感じ続ける
● 職場関係:上司や同僚にASD特性があり、意思疎通がうまくいかないことで消耗する
ポイントは「共感の不足による孤独感」です。相手が悪意を持っているわけではないことも多いのに、「なぜわかってくれないの?」という苦しさが積み重なるのです。
カサンドラ症候群:自分でできること
カサンドラ症候群のつらさの核心は「孤独」にあります。
回復のためには、コミュニケーションがうまくいかないのは自分のせいではないと知ること、そして、自分へのケアをして心身の回復を図ること、そして、信頼して繋がれる人に相談することが大切です。
気持ちを言語化する
● モヤモヤしたこと、嫌だったことをメモに書き出してみましょう。
● 気持ちを書き出して、少し、重荷をおろしましょう。
● 出来事をメモすることも大切です。というのは、パターン理解ができますし、今後、相談者につながる際に具体例が伝えられると、伝わりやすくなります。
小さなサポートを確保する
● 「ちょっと話せる友人」や「共感してくれる第三者」がいるだけで心が楽になります。
● オンラインのコミュニティや、当事者の交流会、カウンセリングなどもおすすめです。
● 「自分のせいじゃない」「自分だけじゃない」という感覚を回復させていきましょう。
境界線を引く
● 相手に、「わかってもらおう」と頑張りすぎないことも大切です。
● 例えば「一緒に過ごす時間は短くする」「必要な連絡だけに絞る」など、物理的・心理的な距離を確保しましょう。
● 境界線を持つことは「冷たくなる」ことではなく、自分を守るための健全な選択です。
身体ケアを優先する
● 「わかってもらえない気持ち」「孤独感」は心だけでなく身体にも大きな影響を与えます。
● まずはご自身の身体ケアを最優先しましょう。睡眠とお食事はとれていますか?休息時間を持つことができていますか?
● 自律神経が乱れがちになるので、自律神経を整える工夫をしてみましょう。
情報を得る
● ASD(自閉スペクトラム症)の特性や、脳や神経の働きについて学ぶと、「相手がわざとやっているわけではない」と理解でき、心が少し楽になります。
● 本や信頼できるサイト、カウンセリングで専門家に聞くのも有効です。
● 知識は「怒りや悲しみを減らし、対応のヒントを見つける力」になります。
カサンドラ症候群にカウンセリングができること
はこにわサロン東京では、カサンドラ症候群でお悩みの方に、以下のようなサポートを行います。
現状理解
臨床心理士がこれまでの経緯を丁寧にお聞きし、相手の特性やカサンドラ状況をアセスメントします。
「なぜこんなに苦しいのか」「何が起きているのか」が整理できるだけで、気持ちが軽くなる方は少なくありません。
気持ちを表現できる安全な場所
カサンドラ症候群の方は、「相手を責めたい気持ち」や「自分を責める罪悪感」など、複雑な感情を一人で抱えてきたケースが多いです。
カウンセリングでは、安心できる環境でこれらを言葉にすることができます。話すだけで心が少し軽くなります。
「わかってもらえる」体験そのものが、回復の一歩です。
関わり方の工夫を考える
「全部変える」のではなく、「自分を守りつつできること」を一緒に考えます。
例えば、負担を減らすコミュニケーション方法や、境界線の引き方、イライラした時の対処法などを具体的に検討します。
ご夫婦の場合は、ご希望に応じてパートナーとのカウンセリングを行い、相互理解を深めるサポートも可能です。
自律神経を整えるサポート
カサンドラ症候群の方の多くは、自律神経が慢性的に乱れています。これは、身近な人とのコミュニケーションで安心感が得られず、心身が緊張状態に置かれ続けるためです。
はこにわサロンでは、ポリヴェーガル理論に基づき、呼吸法・セルフタッチ・声かけなど、神経を落ち着ける具体的な方法をお伝えし、セッションで一緒に練習します。
自律神経が整うことで、心の余裕が少しずつ戻り、対応力や回復力も高まっていきます。
カサンドラ症候群・まとめ
カサンドラ症候群は、決してあなたの弱さや努力不足のせいではありません。長い間「わかってもらえない」中で一人きりで頑張ってきた心と身体が、限界に達しているだけなのです。
大切なのは、自分を責めることではなく、理解者を得ること。現状を理解して、今後どうなっていきたいのかを描くことです。
はこにわサロン東京では、あなたの孤独に寄り添い、回復への道筋を一緒に考えます。ぜひ、一度お話にいらしてください。お待ちしております。
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