箱庭療法とは
箱庭療法というのは、箱庭を作ることを通じて心の深いところに作用する心理カウンセリングです。第一次世界大戦で傷ついた子どもの心を癒す目的で始まり、その後、子どもだけでなく大人の心を癒すのにも有効だということがわかりました。日本でも、50年以上の歴史があります。
このページでは、箱庭療法とはどんなカウンセリング方法なのか、どんな効果があるのかなど、箱庭療法について全く知らなかった方にもわかるように説明していきたいと思います。
箱庭療法とは?
これが箱庭療法の作品例です。
このように砂の入った箱の中で自由に造形したりフィギュアを置いたりして作品を創っていきます。
箱庭療法は、この写真から想像していただけるように、自由に心を遊ばせて制作する表現活動ですが、実はカウンセリングの効果をひきだすために道具の中に色々なしかけがしてあります。主なものは3つあります。
箱庭療法の道具①・・・砂
箱庭療法では砂に触れることでこのような効果があります。
● 子どもの頃の砂遊び体験を思い出す
● 自由に造形できる
箱庭療法の道具②・・・砂箱
実は箱庭の「箱」もとても大切な役割を果たしています。
● 水のイメージを表現できる
箱庭療法の道具③・・・フィギュア
箱庭療法で使われるフィギュアには、特に決まったセットがあるわけではありません。ですから、カウンセリングルームの・カウンセラーの個性が出ます。例えば、はこにわサロンではこんなものを揃えています。
● 子どもの頃に遊んだもの
● 民芸品や手作り品
● 自然のもの、など
箱庭療法はどのように行うの?
箱庭療法には、「箱の中に作る」こと以外、特にルールはありません。どのような作品を作るのかはもちろん、どのくらいの時間をかけて作るのかも自由です。5分でパッと作ってしまう方もいれば、1時間近くかけて箱庭作りに没頭される方もいらっしゃいます。
また、子どもの場合などは、箱庭の中でストーリーが展開していくので、「これが作品」というものが残らないこともよくあります。
作品が出来上がったら、カウンセラーと作り手で作品を眺めて、感想などを話し合います。この時に、心の深いところからのメッセージを読み解けることもありますし、少し時間をおいてから気づきが訪れることもあります。
箱庭療法の特徴は?
箱庭療法と普通のカウンセリング(対話によるカウンセリング)の違いはこんなところにあります。
● イメージ表現や心の遊びを通じて、心の深いところで問題の解決や治癒が生じてくる
箱庭作品から何がわかるの?
箱庭作品には、ご自分でもまだはっきりわかっていないこと(言葉にならないこと)が表現されてきます。例えば、心のコンディション、ご自分の本当の願いや課題、胸の奥深くにしまってきた傷つきなどを理解することができます。また、今後の見通しや方向性が示されることもよくあります。
箱庭療法はどんな効果があるの?
箱庭療法では、言葉のカウンセリングでは治療効果のなかった方・ケースにも高い効果が生じることがあります。それは、箱庭を創ることを通じて相談者がご自分の心と主体的に向き合うことや、イメージを通じて多面的に問題の理解や解決が図られることによってもたらされる効果です。
箱庭療法はどんな人に向いているの?
箱庭療法は、子どもから大人まで、どなたにもやっていただける[/keikou]カウンセリング手法です。中でも、絵や造形が好きな方には、ご自分の好きな表現方法でカウンセリングできるので、相性が良いようです。
では具体的にはどのような方にどのような効果があるのでしょうか。大人の場合と子どもの場合に分けてご説明します。
箱庭療法の効果が高いのはこんな方です(大人の場合)
● 普段あまり感情を表さない方・・・箱庭療法は情緒をしなやかに瑞々しくします
● 考えても堂々巡りになってしまっている方・・・箱庭療法が心の深いところに働きかけるので、突破口が見つかります
また、このようなお悩みをお持ちの方にもお勧めです。
● ひといちばい敏感な方(HSP) ● 強い怒りや孤独感で日常生活に支障が出てしまう方
● 人生の目的やエイジング(老い)について考えたい方
● 大切な人を失った方(グリーフケア)
精神科・心療内科に通院中の方の場合
箱庭療法は、心の深いところに作用するので、精神科や心療内科に通院中・服薬中の場合は、ふさわしい場合とふさわしくない場合があります。
● 抑うつや不安障害、適応障害などで服薬中だが、日常生活への復帰に向けて心のコンディションを整えたり、自己理解を深めることが治療に役立つとき
● 無気力、適応障害、摂食障害など、お薬だけの治療では改善が難しい場合
● 発達障害で服薬中だが、二次障害から来る傷つきや不適応を克服していきたいとき
●統合失調症の方にはやっていただくことができません
●抑うつなどで服薬治療中の方は、主治医とご相談ください。
箱庭療法は心の深いところに作用するため、統合失調症の方は不安を増悪させてしまう危険がありお勧めできません。
抑うつの方は、治療のステージによって、控えた方がよかったり、箱庭療法が治療の助けになったりします。抑うつの服薬治療を始めたばかりで、何事にも関心が持てない・無気力な時期は、箱庭を制作する気力がわきません(無理に作ってはいけません)。でも、治療が進み、少しずつ日常復帰へ向けての準備を始めてから行うと、心の調子を整えたり、自己理解を深めて社会復帰を助ける効果があります。
精神科・心療内科で治療中の方は、どうぞ主治医の方に事前に相談なさってくださいね。
子どもの箱庭療法
箱庭療法は、もともとが言葉で十分カウンセリングすることが難しい子どものために開発された手法ですから、子どもたちの様々な課題やケアに対応し、効果を発揮します。具体的にはこのようなお子さんにお勧めします。
●母子関係・愛着障害
● 不登校や行き渋り
● 嘘や盗みなどの問題行動
● 不安が強い、情緒的に不安定
● おねしょ(夜尿症)
● 衝動性や攻撃性が強くてトラブルが多い
● ひといちばい敏感な子ども(HSP/HSC)
● 発達障害の子どもの二次障害
● 性同一性障害・アイデンティティの課題
● 摂食障害
子どもたちが箱庭に出会うと、目を輝かせて夢中で遊びます。この集中した遊びの中に、その子にとって必要な治療が生じてくるのが箱庭療法のすばらしいところです。
箱庭療法は何回くらいやればいいの?
箱庭療法に決まった実施回数はありません。
1回でも大きな効果がある方もいらっしゃいますし、10回、20回と作っていくことで、深い心の悩みが解決されていく方もいらっしゃいます。
まずは一度、作ってみて「満足した」と感じたら、それでよいのです。「また作りたい」と感じたら、続きを作っていきましょう。
カウンセリングの中で箱庭を創る場合も、毎回創る方もいらっしゃれば、何度かに一度の方、一度だけの方など様々です。
箱庭療法を継続するときにはどのような頻度がよいのですか?
これも決まりはありません。切実な心の痛みや苦しさのあるときには、週1回が望ましいです。
日常生活は支障なく過ごせているけど、自分にとって大切な課題に取り組むときには、2週間〜1ヶ月に一度をお勧めします。
ご自分の心のコンディション作りが目的であったり、折々にご自分と対話をすることで自己理解を深めたいときは、数ヶ月〜1年に一度でもよいと思います。
箱庭療法はどこでできますか?
箱庭療法を行なっている心理カウンセリングルームで行うことができます。
カフェなどで気軽に体験できるところもありますが、心の深い、デリケートなところを扱うのですから、プライベートな時間と空間が確保されることは大切です。また、人間の心についてよく理解・経験のある臨床心理士のもとで行うことも大切です。
箱庭制作をする環境によって、ご自分の箱庭表現にも違いが出てきます(安心・信頼できれば深い表現ができるでしょう)。
箱庭療法は効果の割に知られていない・できる場所が少ないのはなぜですか?
箱庭療法は、50年以上前に河合隼雄先生によって日本に紹介され、以来、医療機関や教育機関でよく行われてきました。箱庭療法学会という学会もあり、その効果の高さもよく知られていますが、実施できる場所には限りがあります。
それは、箱庭療法には通常のカウンセリングより広いスペースや専用の設備が必要なこと。また、箱庭療法を専門にするためには、心理カウンセリングの知識に加えて、箱庭療法のための知識・研鑽が必要なので、心理カウンセラー側にも負担が大きいです。
しかし、箱庭療法は、言葉のカウンセリングでは治療困難な事例にも効果があったり、相談者本人の力を上手に引き出す効果があったりするので、今なお様々な相談機関で大切に行われているカウンセリング方法なのです。
東京・青山のカウセリングルームで箱庭療法を体験してみませんか?
● 箱庭療法に興味があるけど、どこでできるのかわからない方
● 一度体験してみたい方
はこにわサロン東京では、「箱庭体験」というメニューをご用意しています。