捨てられない・片づけられない・ためこみ症のカウンセリング
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。
ためこみ症とは、多くの人にとって不要で価値のないものを大量にためこみ、片づけられない、捨てられない障害です。
ためこむものは、本や新聞をはじめ、衣類や文房具など日用品、商品パッケージなどのゴミ、動物の多頭飼いなども含まれます。
ため込んでいるわけではないものの、不用品を捨てることが難しかったり、片付けが苦手なために、部屋が汚れて、日常生活に不自由が生じることもあります。
本人には自覚がない、または困っていない場合もあれば、本人も困っているものの変えられない場合もあります。
この記事では、捨てられない、片づけられない、ためこみ行動がなぜ生じるのか、改善・解消するにはどうすればよいのかについてお話します。
ためこみ症の原因
ためこみ症には、優柔不断、完璧主義、回避的、先延ばし癖、注意散漫などの気質的な特徴があります。
ためこみ症には遺伝性・生理学的な要因があり、ためこむ人の約半数には同様のためこみ行為をする親族がいると言われます。
また、強いストレスや心的外傷体験(トラウマ)の影響でためこみが始まったり、悪化する場合もあります。
ためこみ症と他の障害との関係性
DSM-5によれば、「ためこみは、他の精神疾患の症状によってうまく説明されない」として、強迫性障害の強迫観念、抑うつによるエネルギー低下、統合失調症や他の精神病性障害による妄想、認知症における認知機能障害、自閉症スペクトラム症における限定的興味とは異なるとされています。
一方、強迫性障害やADHDの方の20〜30%にためこみ行為が認められると言われます。また、抑うつやトラウマ(複雑性PTSD)が影響することもあります。それぞれ、詳しく説明していきます。
ためこみ症の治療
ためこみ症の治療には薬物や認知行動療法がありますが、治療効果が低く、非常に難しいと言われます。
ためこみ行動だけを変えようとするのではなく、ためこみ行動を引き起こす性質や困りごとに対して、理解や整理をするカウンセリングが必要であると考えられます。
ADHDと片づけられなさ
ADHDの性質に衝動性の高さと過集中・不注意があります。
思いつきで行動することが多く、途中で気が変わって投げ出されてしまうことがあります。逆に周りが目に入らないほど集中することもあります。そのため、散らかりやすく、分別して整理したり、ゴミを出したりすることが苦手です。
ADHDの方の片付けられなさには、ストレスの影響や二次障害(ADHDの性質を非難されてしまい自尊心を傷つけられてしまう)が関係していることがあります。
ADHDの片づけられなさを改善するには
ADHDの方のためこみ行動の改善には、同じような悩みを持つ人の片づけ方法や片づけ成功例を知ることが有効かもしれません。
自分にもできる理想像を知ると、片づけや、片づけられる生活スタイルに変える意欲が持てます。
その際に大事なのは、事前にリバウンド(また汚くなる)を想定しておくことです。リバウンドからの立ち直りを繰り返す中で、自分に最適な片づけスタイルを見つけていけます。
ASDと片づけられなさ
ASDは自分の秩序を大事にします。そのため、整理整頓が得意であることもありますが、こだわりの内容によっては、捨てられず、ため込んでしまうことも起きます。
また、「目に見えないものはないもの」になることもあり、引き出しや押し入れにしまったものを忘れてしまい、必要な時に思い出せず、新しく買ってしまう、というようなことがあります。
日常生活でストレスや不安を感じることが多いと、こだわりが強まるため、それが片づけられなさにつながることもあります。
ASDの片づけられなさを改善するには
ASDの方にとって、今の生活やルールを変えることは苦痛が強く、また外からの働きかけによって変えるのは難しいことも多いです。しかし、自分にとってデメリットが大きいことに納得できると変えることができます。
片付けにあたっては、物の置き場を決めること、何がどこにあるのか視覚的に思い出せるような表示をすると良いです。
ADHDとASDをあわせ持つ場合
ちなみに、ADHDとASDの性質をあわせ持つ場合も多くて、片付けがより苦手になる、ストレスや二次障害が強まることもあります。
その場合は、ストレスとなっている環境に働きかけて理解や支援を得ることや、自己理解を通じてストレス軽減、自尊心の回復を優先する必要があります。
うつ病と片づけられなさ
うつ病は「気分障害」といわれる精神疾患のひとつです。
精神的なストレスなどから脳内の情報伝達を担う神経物質が減少することで発症し、眠れない、食欲がない、気持ちの落ち込み、意欲がわかないなどの症状があります。
片づけには、どのように片付けをするかを考えて実行する思考力や実行力が必要ですが、抑うつ状態の場合、考えること、片付けに意欲を持つこと、実行すること全てが難しくなります。
また、片付かないことで、余計に気分が落ち込んだり、諦めてしまう悪循環が生じてしまうこともあります。
うつ状態でためこみが生じている場合、まず、うつの治療を行うことが大切です。
こちらに、簡易テストをリンクしますから、自己チェックしてみてください。
きちんと治療をして、病気を治して、心身の健康状態と日常生活を取り戻すことで、片付けができるようになります。
強迫性障害と片づけられなさ
強迫性障害とは、きわめて強い不安感を持ち、それを打ち消すための強迫行為を繰り返す障害です。
鍵や火の元を何度も確認してしまったり、何度も手を洗う、手順や数字にこだわるなどの強迫行為のために、日常生活に支障が出てしまいます。
片づけられなさとの関連では、確認行為に時間がとられるために、片付けができず物がたまってしまい収拾がつかなくなる、ゴミの中に何か大切なものが混ざっていないか不安で捨てられない、捨てると後で後悔するのではないか?という不安から捨てられないなどがあります。
除菌用品などを過剰に買いためてしまうこともあります。
強迫性障害は、気質的な要因や脳機能の異常のほか、感情や行動を強く否定されたり、受験・就職・結婚・出産などのライフイベント、強いストレスなどがきっかけとなって発症することがあります。
治療は、服薬と認知行動療法が代表的です。ただし、強迫行為は、本人にとってもっとつらい何かから目を逸らすために生じていると考えられているため、それほどまでにつらいと感じられることに対して、理解や整理、ケアのカウンセリングが必要だと考えられます。
トラウマ(複雑性PTSD)と片づけられなさ
複雑性PTSDは、慢性的な傷つき体験から発症する精神障害で、通常のPTSDより複雑な症状が見られます。
症状は、恐怖や不安の再体験、自己評価の低下、自己否定感、感情コントロールの難しさ、対人関係の難しさ、身体の症状や痛み、自傷行為、希死念慮などがあります。
慢性的な傷つき、というのは、家庭での不適切な養育や学校やネットのいじめ、職場でのハラスメントなどによる、日常的で長期間にわたって傷つき体験が起き、またそれが誰にも気付かれなかったり、気付かれても十分なフォローやケアがされないままに放置されてしまった傷つきを指します。
本人が慢性的な傷つきに気づいていないことも多く、発達障害や不安障害、HSPなどと誤解されることもあります。
複雑性PTSDの方は、自分を「ダメな人間」「疎外された人間」と感じることも多く、自分を正当に大切にすることに意欲がなかったり、不安や恐怖感を紛らわせるために、片づけられない・捨てられない、ためこむなどの行動が生じます。
まずは、複雑性PTSDに気付き、治療やケアを行うことが必要で、回復の過程で、少しずつ身辺の整理や自分を大事にすることができるようになっていきます。
複雑性PTSDの方の中には、片づけを通じて、自分の傷つきに気づき、過去との向き合いや整理をする、身辺を整えることから自分のケアを見出していく方もおられますので、まず、ご自分でチャレンジしてみるのもよいと思います。
片づけられない・捨てられない・ためこみ症にカウンセリングができること
片づけられない・捨てられない・ためこむことは、その行動だけを取れば、問題行動だといわれてしまいます。
けれども、そこには、そうせずにはいられない理由や、そうすることで自分を何かから守るなどの動機があります。
ですから、隠された動機を理解して整理することが必要です。
また、ストレスや不安、傷つきに気づいて、ケアすることや、自己理解を深めて、自尊心や自己肯定感を取り戻すことで、問題行動に頼らなくても済むようになっていきます。
はこにわサロンでは、対話によるカウンセリングに加えて、イメージ(絵、箱庭、夢分析)を使ったカウンセリングも行っています。
頭で考えてもわからない時に、イメージが本当の願いやカウンセリングの道筋を示唆してくれることがよくあります。
カウンセリングを通じて、ご自分らしくいられる生活を取り戻していただければと思います。
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