複雑性トラウマ:親に甘えられなかった影響は?回復のためのセルフケア
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理士)です。
子どもの頃に親に甘えられないと、大人になってどんな影響が出るのでしょう?
4つの影響と3つの回復方法、それからセルフケアの方法についてお話していきます。
正式には複雑性PTSDといいますが(診断名)長期にわたるストレス・傷つきの影響が蓄積されたことで、
●フラッシュバック
●苦手なことを回避する
●警戒心の強さ
●感情コントロールが難しい
●自己否定
●対人関係が苦手、などの症状がある人を指します。
親に甘えられなかった影響① 安心感が持てない
子どもは親に甘えることを通じて、自分が丸ごと肯定される体験をします。
それがないといつも不安で人といることが苦痛です。
親に甘えられなかった影響② 自己肯定感が持てない
子どもが失敗した時に親から「大丈夫」「心配ないよ」と受けとめてもらうことで、自分で自分に言えるようになるのです。
そう言ってもらえないと、自分に言えるようにはなりません。
親に甘えられなかった影響③ 感情コントロールができない
怒りや悲しみのようなネガティブな感情は、親に「悔しかったね」「悲しかったね」と受けとめてもらうことで消化されるのです。「泣くな!」「怒るな!」と叱られると、感情がわからなかったり、爆発させやすくなります。
親に甘えられなかった影響④ 過剰な自己コントロール
親に甘えられなかった子どもは、自分の気持ちや願いを抑えこみます。幸せになりたいのに、どうすればよいかわかりません。
複雑性トラウマの傷つきから回復するために今日からできること
まず、これらの生きづらさは個人的な欠点ではなく、親に甘えられなかった影響、複雑性トラウマだ、と知ることが大切です。
複雑性トラウマがあると、安心感・信頼感が持てないため、たとえサポートを得るためでも人とつながることが難しくなります。ですから、自分でできることから始めましょう。まずは、自分のネガティブな気持ちを「そうなんだね」「教えてくれてありがとう」と自分で認めてあげてください。
セルフケアをしましょう。
複雑性トラウマの方のセルフケアの重要性
複雑性トラウマの方は安心感や信頼感を育めないまま大人になっていることがあります。そのため、困っていても人に頼るのが怖いと感じてしまいやすい。
また、「いちばん大切な存在」としてお世話をしてもらった経験が薄いことや、自分より他者を優先する傾向を持つために、自分を大切にすることが苦手です。
この2つの理由から、複雑性トラウマの方には、セルフケアを始めてみることをお勧めしたいのです。
セルフケアを通じて、自分の感覚を取り戻す、気持ちがよい、リラックスの方法を知る。その過程で、普段の自分の心身がどのくらい緊張しているか、無理をしているのかにも気づくことができます。
このように自分の心身とのつながりを取り戻すことができると、信頼できる人か、相談してみるか、まずは少し試してみるかなど、落ち着いて考えることができるようになります。
では複雑性トラウマの方向け、最初のセルフケアをご紹介します。
①温かいものを「ふ〜ふ〜」しながらゆっくり飲む
好きな温かい飲み物を、ゆっくり味わいます。
味、かおり、湯気や、喉、胸が温まる感覚に意識を向けます。
ふ〜ふ〜して冷ますことで呼吸が整います。
②心地よいものをさわる・くるまる
肌ざわりがよく、心地がよいと感じる衣服を身につける。タオルやぬいぐるみを触る。毛布にくるまります。肌が心地よいと緊張がやわらぎますし、毛布にくるまると守られている感覚を持つことができます。
③整える
机の上、カバンの中、本棚。少し片付けて整えます。小さな部分でいいのです。自分が、自分のために秩序を回復できる感覚を持ちましょう。
④五感を感じる
見る、聞く、香りをかぐ、味わう、さわる。できれば、デジタルではなく、自然や素材を感じてみてください。感じやすく心地よい感覚から、ご自分の感覚を取り戻していきましょう。
⑤言葉にして受けとめる
「不安なんだな」「頭が重い」「イライラする」「泣きたくなる」自分が感じていることを、言葉にしてみます。そして「不安があるね」「イライラしてるんだよね」のように、ただ、肯定的に受けとめてください。自分で丸ごと受けとめると、不思議とちょっと落ち着きます。
まとめ
複雑性トラウマの方が子どもの頃に親に甘えられなかった影響にはどのようなものがあるか、そのケアの方法をご紹介しました。
複雑性トラウマの回復には時間がかかります。でも、回復していけることがわかっています。ですから、あきらめてしまわず、少しずつやっていきましょう。
カウンセラーに相談してみよう、と思われたら、ぜひ、ご連絡ください。