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会食恐怖とは?特徴・診断基準・治療・周囲のサポートについて

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

「人前で食事をするのが怖い」「緊張して食べられなくなる」——こうした症状が続く場合、それは「会食恐怖(かいしょくきょうふ)」かもしれません。

 

会食恐怖とは、人と一緒に食事をすることに対して強い不安や恐怖を感じる症状のことで、心理的な要因が大きく関与しています。 

 

この記事では、会食恐怖の特徴や原因、診断基準、治療方法、自分でできる対策、周囲のサポートについて詳しく解説します。 

 

会食恐怖とは

会食恐怖(Social Eating Anxiety)とは、人前で食事をすることに対する強い不安や恐怖を感じる症状を指します。食事の場面で過剰に緊張し、食べることが難しくなったり、吐き気や動悸などの身体症状が出ることがあります。 

 

「食べたくても食べられない」という状態に陥り、食事の場面を避けるようになるため、社会生活に影響を及ぼすこともあります。 

 

会食恐怖の特徴

会食恐怖の人は、次のような症状を経験することがあります。

① 会食恐怖の身体的な症状

■喉が詰まる感じがする 

■吐き気、胃の不快感 

■口が渇く 

■動悸、手の震え 

■顔が赤くなる、汗をかく 

 

② 会食恐怖の心理的な特徴

■「食べる姿を見られるのが恥ずかしい」と感じる 

■「食べられなかったらどうしよう」と強く不安になる 

■「周囲に変に思われるのでは?」と過剰に気にする 

■過去に「食べられなかった経験」がトラウマになっている(次項で詳しく解説)

 

③ 会食恐怖の行動面の特徴

■外食や飲み会を避ける 

■誰かと食事することを考えるだけで不安になる 

■家では普通に食べられるのに、人前だと食べられなくなる 

■無理して食べようとして、かえって緊張する 

 

このように、会食恐怖は「身体的症状」+「不安感」+「回避行動」が組み合わさったものといえます。 

 

会食恐怖の食事トラウマの例

会食恐怖には、食事に関するトラウマ体験がきっかけになっていることがあります。以下に、よくある例を挙げます。

 

学校給食

少食で給食が食べきれなかったり、食べるスピードが遅くて食べ終わらない時に、先生や友だちから注意されたり笑われたりして、給食の時間が苦痛になる。

 

プレッシャーを感じてますます食べられなくなってしまったことが繰り返されると慢性的なトラウマ(複雑性トラウマ)になることがあります。

 

体調不良の時に我慢して食べて、気持ちが悪くなったことがきっかけになることもあります。

「食べられないこと」を責められた経験

苦手な食べ物があることを「わがまま」と叱られたり、無理に食べさせられた体験がきっかけで、食事に対する緊張が高まり、それが人との食事の場面で強まることがあります。

 

緊張やストレスで食べられなくなり、「おかしい」と言われる

緊張する学校行事や受験などのプレッシャーで食事ができなかった時に「そんなことで食べられないなんて」と呆れられたり、叱られたりしたことで、恥ずかしく、自信をなくす。

 

「自分は変なのでは?」と感じて、人前で食べられなくなることがあります。

 

会食恐怖になりやすい人の特徴

完璧主義・人の目を気にしやすい人

完璧主義の人や、人の評価を気にしやすい人は、「食べる姿を変に思われたくない」「迷惑をかけたくない」と強く意識しやすいため、会食の場面で過剰に緊張することがあります。

 

例えば、「食べ方が汚く見えないか」「食べるスピードが遅すぎたり早すぎたりしないか」といったことを気にしてしまい、自然に食べることが難しくなります。

 

さらに、「食べられなかったらどうしよう」と考えて緊張が増し、結果的に本当に食べられなくなることもあります。

 

こうした傾向が強いと、食事をすること自体がプレッシャーになり、会食を避けるようになってしまうことがあります。

 

特に、仕事や学校の会食、フォーマルな場面では、より「ちゃんとしなければならない」という気持ちが強まり、恐怖心が増すことがあります。 

 

いじめや過去のトラウマがある人

過去に「食事中にからかわれた」「食べられなかったことを責められた」といった経験があると、食事に対する不安が強くなることがあります。

 

例えば学校や家庭で食事に関してトラウマ体験がある場合は、それが成長してからも影響を及ぼし、「食べなければいけない場面」になると身体が拒否反応を起こし、会食恐怖につながることがあります。 

 

社交不安が強い人

もともと社交不安が強い人は、人前で話すことや人付き合いに苦手意識があり、会食の場面でも強い不安を感じやすくなります。

 

特に「他人の視線が怖い」「自分がどう見られているか常に気になる」といった特徴を持つ人は、「食事をしている自分の姿をどう思われるか」が気になり、リラックスして食べることができなくなります。

 

また、会話をしながら食べることにも苦手意識があるため、「うまく話せなかったらどうしよう」「食べることに集中できなくて失敗したらどうしよう」といった不安が強まりやすいです。

 

自律神経に乱れがある人

食事は本来、リラックスした状態で摂ることが望ましいです。

 

自律神経の働きで言うと、食事や消化は副交感神経優位(リラックスしている時)にうまく働きます。

 

でも、緊張が強い人や自律神経の働きが乱れている人は、食事の時にも緊張がやわらがず、その影響で食事が楽しめない、人前でますます緊張してしまうという悪循環になることがあります。

 

会食恐怖の診断基準

会食恐怖は、正式には「社交不安障害(SAD)」の一種として分類されることが多いです。DSM-5(精神疾患の診断基準)では、以下のような基準に当てはまる場合、社交不安障害と診断されることがあります。 

 

  1. 食事をすることに対して強い不安や恐怖を感じる
  2. この不安が過去6か月以上続いている
  3. 会食を避ける、もしくは非常に苦痛を伴う
  4. この症状が仕事や学校などの日常生活に影響を与えている

 

「ただの緊張」ではなく「恐怖や回避行動が続いている」「日常生活に影響を及ぼしている」場合、会食恐怖として治療の対象になることがあります。 

 

会食恐怖の治療方法

認知行動療法(CBT)

会食時の不安を和らげるために、「不安のもとになっている考え方」を見直し、「食べられる経験を少しずつ積む」ことを目的とします。 

■「食べられないと恥ずかしい」という考えを見直す

■緊張しすぎないためのリラクゼーションを学ぶ

■一人で食事できる環境から、少しずつ段階を上げる(例:親しい人と少人数で食べる→カフェで食べる→会食に挑戦)

 

薬物療法

不安が強い場合、SSRI(抗うつ薬)や抗不安薬が処方されることがあります。 

 

はこにわサロンのカウンセリング

人前での食事に強く緊張する背景には、「ちゃんとしたい」「失敗したくない」という心理が働いていることが多いです。

 

ですので、なぜこのような気持ちになるのかを理解することや、自分の中の「ちゃんとやりたい自分」を受け入れながらも、「失敗しても大丈夫な自分」(自己肯定感)を育てていくことが大切です。

 

自分を批判する自分と肯定する自分のバランスが取れるようになると、会食の恐怖がやわらいでいきます。

 

会食恐怖の方は、食事の場面でリラックスできず、緊張してしまう、食べることを拒否したくなるなど、自律神経の影響もあるので、自律神経を整える活動についてもご一緒に検討します。

 

生活の見直しや、ご自分で緊張を緩和する方法、不安をコントロールする方法を身につけると、自信が生まれます。

 

また、食事に関する過去のトラウマの理解と整理をすることも必要です。

 

強い給食指導や、いじめ、過度なしつけによる強い不安や傷つきがある場合は、このトラウマについて対話を通じて理解と整理をする、自分の中で収められる程度に解消していきます。

 

これらのアプローチで不安を和らげ、肯定的な自分を作り、本来の自分の力を回復できると、会食恐怖は自然とやわらいでいきます。

 

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会食恐怖・ご自分でできること

自分のペースで食事をする時間を大切にする

会食恐怖の方は、食事全般に対してネガティブな気持ち、消極的な気持ちが湧きやすいです。

 

まずは、ご自分がリラックスして好きなものを食べること、食事を楽しむことから始めましょう。

 

好きなものをゆっくり味わいましょう。

 

「リラックスして味を楽しむこと」が、いずれ、人との食事を楽しむ基盤になります。

 

人前で食べられなくてもOKと思う

無理して人前で食事をすることはあまりしてほしくありません。

 

まずは、「人前で食べられなくても、今はO K」と自分を肯定するところから始めましょう。

 

会食の機会がある場合は、無理のないしのぎ方を工夫することも大切です。

 

自律神経を整える

自律神経が乱れていると、くつろいで食事をすることが難しくなってしまいます。

 

ですので、自律神経を整えるための生活見直し・修正をしてみましょう。

 

一番大切なのは、規則正しい生活、お食事、睡眠、軽い運動です。

 

その上で、他にも自律神経を整える方法を工夫して取り入れてみてください。

 

不安な時の自分の対処方法をいくつか準備しておく

食事時に限らず、自分が不安になった時の対処方法を事前にいくつか準備して持っておきましょう。例えば:

場を変える・・・ちょっと外の空気を吸ったり、周りの景色を眺めて気持ちを軽く切り替えます。

 

身体の緊張をほぐす・・・不安な時は身体も固まりがちです。違和感を感じる部分を温めたり、さすったり、軽くストレッチをするなどしてほぐしてみましょう。ゆっくりした呼吸もおすすめです。

 

水や熱い飲み物を飲む・・・飲み物を飲みましょう。お水でも良いですが、熱い飲み物をフーフー冷ましながら飲むと呼吸も整い、身体が温まって緊張が和らぐのでおすすめです。

 

■肌触りの良いタオル、よい匂いのハンドクリーム、気分転換ができる音楽などをあらかじめ準備しておく。

 

あらかじめ準備をしておいて、不安なときに実行できると、コントロール感を取り戻せるので、ぜひやってみてください。

 

会食恐怖・周囲の人ができること

プレッシャーをかけない

周りの人が「なんで食べられないの?」と聞くと、プレッシャーになりますし、「理解してもらえない」と感じさせてしまいます。

 

できれば、不安な気持ちをそのまま「不安だよね」「苦しいね」と受けとめて聞いてください。

 

丸ごと受けとめてもらえると、本人の不安を半分くらい減らしてあげることができます。

 

食事以外の方法でリラックス・楽しい時間を過ごす

会食恐怖のある方は、人とのコミュニケーションにも不安を感じてしまいやすいです。

 

ですので、食事以外の方法で、くつろいで一緒に過ごす、だらだらする、楽しむことをしてください。

 

具体的には、一緒にテレビを見る、散歩をする、趣味の活動をするなどですが、一緒にスポーツを楽しむ、歌を歌う、お笑いを見るなど、軽く興奮して楽しめることができると、対人不安をやわらげる助けになるのでおすすめです。

 

食事を楽しむ協力をする

ご本人が楽しく食事を取れるよう、協力してください。

 

苦手なものに挑戦するよりは、好きなものをリラックスして楽しむ、味わうこと、家族と楽しんで食べることが大切です。

 

家族と一緒なら外食も楽しめるという場合は、そのような機会も持ってもらえるとよいです。

 

会食恐怖・まとめ

会食恐怖は、単なる「恥ずかしさ」ではなく、不安が大きくなりすぎて食事ができなくなる状態です。

 

しかし、適切な治療やサポートによって克服することが可能です。

 

ご自分を否定しすぎないでで、自分を肯定する力をつけること、不安な時の対処法を身につけること、自律神経を整えること、食事なしのリラックスして楽しむ時間を作ることなどから少しずつ、会食への恐怖をやわらげていくことができます。

 

食事を楽しむ時間を取り戻していきましょう。

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