東京・青山の心理カウンセリングルーム オンライン・電話対応可

オンラインやお電話でも相談できます

情緒的ネグレクトは「見えない虐待」その影響と変えるためにできること

 
この記事を書いている人 - WRITER -
アバター画像
外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
詳しいプロフィールはこちら

東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

情緒的ネグレクトとは、子どもの気持ちや感情が受け取られず、応答されない状態を指し、「感情の無視」や「感情のネグレクト」と呼ばれることもあります。

 

情緒的ネグレクトは「虐待」の一つ

暴力を振るう、怒鳴る、食事を与えないといった、目に見えてわかりやすい虐待ではありません。生活は整っており、衣食住も与えられ、学校にも通わせている。それでも、子どもの「気持ち」に大人が関わらない状態が続くと、情緒的ネグレクトになります。

 

情緒的ネグレクトは、日本を含む多くの国で、心理的虐待の一つと位置づけられています。

 

特徴的なのは、「何かをした」ことではなく、「何もしなかったこと」が問題になる点です。

そのため、子ども本人だけでなく、周囲の大人や親自身も気づきにくい虐待だといえます。

 

なぜ、情緒的ネグレクトは「虐待」になるのか

子どもにとって、気持ちを受け止めてもらい、言葉やお世話を向けてもらうことは、自分の存在を認めてもらうことであり、「生きていていいよ」と肯定してもらう大切な体験です。

 

怖い時には「大丈夫」と守って安心させてもらえる、悲しい時は気持ちを受け止めてなぐさめてもらえる、嬉しい時は一緒に喜んでもらえる。

 

こうしたやりとりを通して、子どもは「自分は大切な存在」と感じられるようになり、また、人を信じる力を持てるようになっていきます。

 

自律神経の視点でいうと、親子の温かい関係を通じて、子どもの腹側迷走神経(副交感神経の1つで安心とつながりを持つことを助ける)が育ちます。

すると子どもは、自分の気持ちをコントロールできるようになり、また対人関係を楽しめる人になります。

愛着の観点から見ると、こうした関わりは「安心基地」を育てる体験です。親という安心基地があるから、子どもは好奇心を持ってチャレンジしたり、人と信頼関係を気づくことができるようになるのです。

 

ところが、自分の気持ちを聞いてもらえなかったり、感情を否定されたり、無視やスルーされたりが続くと、

  • 自分の気持ちがよくわからず、言葉にできない
  • 情緒的に不安定
  • イライラ、不安、緊張しやすい
  • 落ち着きがない
  • 衝動的で暴言暴力が出る
  • 消極的で無気力、引きこもりがち
  • 甘えたいのに甘えられない
  • 親や周囲の顔色を過剰に読む

になりやすくなります。

 

また、大人になってからも

  • 情緒不安定
  • 不安や緊張が強い
  • 人に頼ることが苦手で、何でも一人で抱え込む
  • 自分に自信が持てず、判断に迷いやすい
  • 親密な関係で我慢しすぎる、または突然距離を取る
  • 安心した人間関係を築くのに時間がかかる
  • 燃え尽きやすい

といった問題を抱えやすくなります。

だから、情緒的ネグレクトは「虐待」に含まれる

情緒的ネグレクトは、子どもの心だけでなく、自律神経の発達や愛着の形成という、人生の土台そのものに影響するため、虐待の一つとして位置づけられています。

 

目に見える暴力がなくても、「安心が与えられない状態」が続くことは、子どもにとって深刻なストレスなのです。

 

子育てでよくある「情緒的ネグレクト」の例 7つ

子育てで起きやすい情緒的ネグレクトの例をご紹介します。どれも「悪意がない」ことが多いです。

 

① 話を最後まで聞かず、すぐ正論やアドバイスをする

例)「だから言ったでしょ」「こうすればいいでしょ」

子どもが話している途中で正論やアドバイスが返ってくると、子どもは「気持ちを話す前に評価された」「結論だけ求められている」と感じやすくなります。

親に悪気はなく、助けたい一心での言葉でも、子どもにとっては「気持ちは聞いてもらえなかった」という体験になります。

これが続くと、子どもは感情を話す前に引っ込め、「どうせ言っても無駄」と感じるようになります。

② 気持ちより行動・結果を優先する

例)「泣いてないで早くしなさい」

忙しい日常の中では、行動を優先する声かけになりがちです。

しかし、泣いている子どもにとっては、「泣いている理由」や「つらさ」が置き去りにされた感覚が残ります。

子どもは「気持ちは後回し=大切じゃない」と学び、次第に感情を感じたり表現したりすることを控えるようになります。

③ 感情を小さく扱う

例)「そんなことで怒らないの」「大したことないよ」

親としては励ましや落ち着かせるつもりでも、感情を小さく扱われる言葉は、子どもにとって「感じてはいけないもの」というメッセージになりやすいです。

すると子どもは、自分の感情を信じられなくなり、「感じてはいけない」と思うようになります。

感情が受け止められない経験が積み重なることで、人の気持ちの理解も難しくなります。

④ 忙しさを理由に感情への反応が後回しになる

例)「あとでね」が積み重なる

忙しい毎日の中で、「あとでね」は必要な言葉でもあります。

ただ、それが繰り返されると、子どもは「自分はいつも後回し」「自分は大切じゃない」と感じやすくなります。

特に小さな子どもは「あとで」を待つ力が未熟なため、怒りや悲しみが感情爆発になったり、逆に感情を出すことを諦めてしまうこともあります。

⑤ 子どもの感情を“面倒なもの”として扱う

例)ため息、無言、目をそらす、話題変更

ため息や無言、目をそらす、話題を変える態度は、子どもにしっかり伝わります。

子どもは「自分は迷惑なんだ」と感じ、不安や緊張が高まったり、衝動的に発散せずにはいられなくなったりします。

自分の感情を邪魔なものと受け取るようになり、親子関係だけでなく、友人関係や社会性にも影響を与えます。

⑥ いい子・手のかからない子を無意識に求める

例)感情を出さない子ほど評価される

親が忙しかったり、余裕がなかったりすると、無意識のうちに「静かで手のかからない子」「感情を荒らさない子」を「いい子」「望ましい」としてしまいやすくなります。

泣かない、怒らない、反抗しない子には「えらいね」「助かるよ」と声をかけ、反対に感情を強く出すと怒ったり突き放したりしてしまうのです。

 

すると、子どもは、「感情を出すと困らせる」「我慢している方が大事にされる」と学びます。

 

その結果、子どもは本音や弱さを外に出さなくなり、周囲に合わせて振る舞う一方で、内側には不安や緊張を溜め込みやすくなります。大人になってから、突然の不調や生きづらさとして表れることも少なくありません。

⑦ 親自身が感情を扱われずに育っている

例)どう関わればいいかわからないまま親になる

情緒的ネグレクトは、世代を超えて連鎖しやすい特徴があります。

親自身が、子どもの頃に気持ちを聞いてもらった経験が少ないと、「どう共感すればいいのか」「感情にどう反応すればいいのか」がわかりません。その結果、意図せず感情を避ける関わりになりがちです。

これは能力不足ではなく、学ぶ機会がなかっただけであり、今から学び直すことが可能です。

情緒的ネグレクトを手放すためにできること 5つ

情緒的ネグレクトは、気づいた時点から少しずつ手放していくことができます。

大切なのは、今日からできる小さな関わりを重ねていくこと。

ここでは、無理なく始められる5つのヒントをご紹介します。

 

① 子どもの気持ちを、そのまま受け止めるだけでいい

子どもが感情を出したとき、大切なのは正しい言葉をかけることではありません。

「悔しかったんだね」「怖かったね」と、感じている気持ちをそのまま言葉にして返すだけで十分です。

アドバイスやしつけは後回しで大丈夫。まず「気持ちはちゃんと受け取られた」という体験が、子どもの安心と信頼を育てます。

② 解決しなくていい

親はつい、問題を解決しようとしますが、子どもが求めているのは答えではなく「わかってもらえた」という感覚です。

気持ちを受け止めてもらうだけで、子どもの心は自然と落ち着いていきます。

解決できなくても大丈夫。そばにいること自体が、十分な支えになります。

③ ネガティブな気持ちも、大切な気持ち

怒りや悲しみ、不安といったネガティブな感情も、子どもにとって大切な心の反応です。叱ったり、止めたりする必要はありません。

「悔しかったね」「悲しかったね」と受け止めることで、子どもは感情を感じても安全だと学びます。

年齢に応じて抱きしめる、背中をトントンする、温かい飲み物を一緒に味わうのも、安心を伝える方法です。

④ 親の気持ちも、大切にしていい

子どもの気持ちが大切なのと同じように、親の気持ちも大切です。

イライラすることも、疲れることも自然なこと。

ただし、親は子どもに対して圧倒的に大きな力を持っています。

感情をそのままぶつけるのではなく、「お母さんも今ちょっと疲れているよ」などと、落ち着いた形で伝えることが大切です。

⑤ 一人で抱え込まない

情緒的ネグレクトは、誰か一人の努力だけで防げるものではありません。

安心して気持ちを話せる相手はいますか?

信頼できる人とのつながりは、親自身の余裕を支え、子どもへの関わりも変えていきます。

また、学び直しや相談は、弱さではなく、回復のための大切な選択肢です。

はこにわサロンでも、情緒的ネグレクトを手放すためのカウンセリングを行っていますから、ぜひご相談ください。

はこにわサロンについて

子育てブログ記事

 

情緒的ネグレクト・おわりに

情緒的ネグレクトは、殴る・怒鳴るといった目に見える虐待とは違い、「気持ちに関わってもらえない」という形で起こる、気づかれにくい虐待です。

多くの場合、親に悪意はなく、余裕のなさや学ぶ機会がなかったことから生じます。

しかし、暴力や身体的ネグレクトと同等か、場合によってはそれ以上の悪影響を子どもに与えることがあります。

ですから、「これくらい」と思わずに、修正していくことがとても大切です。

ただ、完璧を目指す必要はありませんから、少しずつ変えてみてください。

この記事を書いている人 - WRITER -
アバター画像
外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
詳しいプロフィールはこちら