”盗む”ということと箱庭療法
『はてしない物語』について書いた記事で、主人公のバスチアンが古本屋で本を盗むシーンがありました。
これは、結局は、盗んだのではなく、本の方からバスチアンのところにやって来たのだ、という終わり方をしていました。
けれど、やはり、わたしは、この物語の中で、バスチアンが『はてしない物語』を”盗まなければならなかった”ように感じてしまいます。
盗む、ということについて考えました。
成長のための盗み衝動
作家の田辺聖子さんが対談の中で、思春期の万引き衝動についてお話されています。
これも、古本屋さんでのことのようですが、本を盗みたくてたまらなくなるというのです。
それも、お金を持っている時に限ってそうなる。
田辺さんは、万引きはしないで済んだけれども、小学校高学年から何年もの間、この衝動に悩まされたそうです。
そして、その衝動が収まった後、小説を書き始めたのだそうです。
対談相手の河合隼雄さんは、物語を作ることと、ものを盗むことの共通点に取り憑かれたのではないかと話しておられました。
何かこう、莫大な成長エネルギーが必要な時に、盗みの衝動が起きることがあるのでしょう。
そういう視点で見てみると、バスチアンの盗みも、成長衝動と言えるかもしれません。
*河合隼雄『あなたが子どもだった頃』(講談社アルファ文庫)
足りなさを補うための盗み
一方で、自分が物理的にも精神的にも、死にそうに飢えていて、その飢えを満たすための盗みもあるのではないでしょうか。
家庭の事情などで、愛情を十分に得られない子どもが万引きしてしまう、というようなケースです。
このようなとき、きっちり叱ることは必要だけれど、それだけではやはり駄目だと思います。
その子の飢えを満たしてあげる手立てを講じなければなりません。
そんな子どもの箱庭には、宝物を探す冒険物語が展開することがあります。
箱庭というイメージの世界で、こころの飢えを満たす物語を作り出していく様子に驚きと感動を感じました。
一方で、この足りなさを補う盗みは、子どもだけなのかな、とも思います。
物理的に不足がないのに、お金も持っているのに、万引きしてしまう大人の様子を時折テレビなどで見かけます。
何かこころの満たされなさが切実になって、万引きをしなければ、飢えて死んでしまうような気持ちになるのかなぁと思います。
こんな時に、大人も箱庭の中に宝物を探しに来てくださればと思います。
もちろん、簡単なことではなく、バスチアンのように、長い長い物語になるかもしれませんけれども。
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