子どもが遊びを通じて獲得する「今しか得られない」大事なこととは?
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。
夏休みの子どもたちは、夢中になって遊んでいるでしょうか。
わたしは、子どもが「時間を忘れて何かに没頭する時間」が何より大事だーと考えています。
遊びに没頭できる子どもは、誰にも邪魔されない自分の世界を持ち、物事に集中する力を持ちます。
それは、子どものうちに獲得して、その子が生涯、持ち続けることができる力です。
ですから、子どもが夢中になって遊んでいる時はできるだけ、そうっと見守ってあげたい。
そう思っておられるお父さん・お母さんもたくさんおられるのではないでしょうか。
今日は、そんな子育てを応援する絵本を紹介しますね!
『ジュリアスは どこ?』
(ジョン・バーニンガム作・谷川俊太郎訳 あかねせかいの本)
トラウトベックさんの家で、お父さん、お母さん、ジュリアスが家族そろって朝ごはんを食べているところから物語は始まります。
ページをめくると、今度はお昼ごはん。
お母さんがジュリアスを呼びますが・・・
「ジュリアスは
きょうはいっしょに おひるをたべられないんだそうだ、
いすみっつと ふるいカーテンと ほうきで、
へやに ちいさなうちをつくったから」
そう言って、お父さんはジュリアスのお昼ご飯をお盆にのっけて、ジュリアスのちいさなおうちへ持っていきました。
晩ごはんの時は、ジュリアスは世界の反対側に行くために穴を掘っていました。
次の日の朝ごはん、ジュリアスはピラミッドに登っていました。
お昼ごはんの時は、ジュリアスは中央アフリカでカバの背中に水をかけてやっていました。
晩ごはんには、ロシアの凍りついた荒れ野をソリで横断しながらオオカミに雪玉を投げつけていました。
あくる朝は、チベット近くのお山の頂上で日の出を見ていました。
お昼ご飯は、ペルーで急流下りをしていました。
ジュリアスが世界中を探検しているあいだ、お父さんとお母さんは、代わりばんこにご飯をジュリアスのところまで届けてあげます。
そうして、晩ごはん。
今度は、いったいどこで何をして遊んでいるのでしょう?
いえいえ
ジュリアスは、お父さんとお母さんと3人でおいしい晩ごはんを食べていました。
(ああ、よかった!)
さて。
遊びに夢中になっているジュリアスが、ごはんに帰ってこられないと、お父さんとお母さんが、ごはんをジュリアスのところまで運んであげるというストーリーにわたしはショックを受けました。
それは、わたしが子育ての中で、ごはんの時間は何にも優先してからです。
(遊びの途中なのに!と子どもが文句を言ったことも数知れず。)
この記事の冒頭で、わたしは「子どもの遊びを尊重しましょう」と書きました。
本当にそう思っているのに、実は毎日それを邪魔してきたんだなぁ・・・(反省)。
つまり、「子どもの遊びを尊重する」のと「規則正しい生活」は両立しないことが(よく)あって、それは仕方のないことなんだけど、その矛盾を親(大人)側が気づいているのが大事なんじゃないかと思います。
それからもうひとつ。
バーミンガムの絵本の中のお父さんとお母さんは、とことんジュリアスの世界に自分たちが近づいていきますよね。
これもとても大事なんじゃないか。
現代は、子どもをとにかく急いで大人にさせてしまおうとするでしょう?
でも、子どもには、子どもの時にしかできない大事な仕事がたくさんあって(たとえば自分の世界や集中する力)子どもの時間をはしょってしまうと、大事な土台のできないまま大人になるというハンデを背負ってしまわないか?
そんなことを『ジュリアスは どこ?』はわたしに気づかせてくれました。
ちなみにね、絵本の中でお母さんが用意するごはんはどれもとっても美味しそうなので、食いしん坊の方は必見(笑)
それと、ジュリアスが夢中で遊んでいるページは絵がとても素敵なので、ぜひ、よかったら実物の絵本を手にとって読んでくださったら嬉しいです。
本屋さんでは手に入りにくそう(アマゾンでは中古のみ)なので、図書館がおすすめです。