依存症*子どものネット依存から大人のワーカホリックまでの要因と対応について
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理士)です。
「またやってしまって自己嫌悪を感じる」
今日はさまざまな依存症(大人と子どもの) についてお話します。
依存症とは
依存症というと、アルコールや薬物をイメージするかもしれませんが、実はさまざまな依存症があります。
■ゲーム依存 ■SNS依存
■仕事依存
■たばこ依存 ■アルコール依存
■食事に関する依存(過食・拒食)
■恋愛依存 ■対人関係依存
■自傷(リストカット) ■抜毛
■買い物依存 ■ギャンブル依存
■万引き依存 ■薬物依存・・・
実は、依存症というのは、アルコールやギャンブルといった”特定”なものがあるのではなくて、インターネットやゲームのように、ほどよくつき合えたら問題はないが、「昼夜逆転してしまう」とか「他のことが手につかなくなる」ほどになると依存症になってしまうものがあります。
また、仕事や恋愛のように、一見すると「仕事熱心な人」「恋多い人」のように捉えられている中に、自分の不安を打ち消すために次々と仕事・恋愛をする、というような依存もあります。
依存症のメカニズム
依存症は、こころの中にある「空虚感」や「不安感」を埋めようとして生じます。
人は誰でも、寂しかったり、不安だったりしたら、自分でなんとかこころを落ち着かせよう、気持ちを明るくしようとするでしょう?
「依存」は、このようなこころの隙間を自分でなんとか埋めよう、立て直そうとする試みなのです。
寂しさや不安が、例えば、ゲームや美味しい食事やアルコールなどで、ほどよく解消すれば、良いのですよね。
けれど、解消しないと、余計不安になって、エスカレートしてしまう。
それが、習慣化することで、依存症となってしまうのです。
「依存症」と「熱中する」の違い
ちなみに、「依存症」と健康的な「熱中する」の違いは、あとで「すっきり」するか「後悔・罪悪感を持つか」です。
空虚と不安はどこから来るの?
そのような強くて大きな空虚感(寂しさ)や不安感はどこから生じてくるのでしょう?
ベースには、愛着障害があると考えられます。
人は、幼少期に親(養育者)から温かくお世話をしてもらうことを通じて、生涯自分を支えるベースとなる安心感と信頼感を獲得します。
(愛着の不全について詳しくはこちら)
獲得できないと、常に、不安感、不信感、緊張感や高いストレスを抱えて生きなければなりません。
依存症というのは、このような不安や緊張を緩和し、ストレスを開放しようとして”自己治癒的に”始めた「ゲームやアルコール、お買い物や恋愛など」が、エスカレートしていき(エスカレートしても不安から逃れられず)生じていくのです。
依存症を改善するには
依存症は「意志が弱い」とか「快楽に溺れている」と考えがちですが、そうではないことがお分かり頂けたでしょうか。
そこで、依存症について、誰に相談し、どう治療・改善していくのかについてお話しします。
依存症は、身体・社会生活への影響の大きさと治療の難しさから、異なる支援機関を併用しての治療が望ましいように思います。
医療機関
- 適切な診断と治療方針を立てる
- 依存症状の緩和・ベースとなる強い不安感や緊張感などの緩和のための服薬治療
- 必要な場合は、入院治療など
お薬の治療に抵抗を感じる方もおられますが、お薬のちからを借りることが不可欠な場合もあります。
「お薬をのむのが不安な気持ち」を相談して、納得して服薬しましょう。
カウンセリング
- 生活の見直し
- ストレスや緊張へ緩和
- 依存のベースにある不安感・不信感(愛着障害)へのカウンセリング
つい依存してしまうこころの中の空虚感がいつ生じたのか、そのためにいつも不安で孤独だったこと、それは自分のせいではないことを理解していきます。
呑み込まれそうに大きかった空虚感が分解できると、依存以外の方法でも自分を落ち着かせることができるようになっていきます。
すると、少しずつ、自信がついていきますし、自分のままでも大丈夫だという感覚を取り戻せます。
自助グループ
- 同じ困難を抱えた人(家族)とつながる
依存に苦しむのは自分ひとりではないと知ることや、お互いに支え合う関係性を持てることが自助グループのメリットです。
本人だけでなく、支える家族のための自助グループもあります。
■ アルコール、薬物、ギャンブル、買い物、万引き、摂食障害、性依存、恋愛依存、共依存などの自助グループがリストされています。
相談窓口
どこに相談したらよいかわからない時は、こちらの相談窓口を参考にしてください。
依存症について、保健師、精神保健福祉士、医師などが相談に応じます。保健師の家庭訪問を受けることもできるので、相談しましょう。
■ 精神保健福祉センター
子どもの依存症
依存症というと大人の病であると考えがちですが、インターネットやゲーム、SNS三昧で日常生活に大きな影響が出ていてもやめられない、依存症が疑われるケースは少なくありません。
子どもの場合、愛着障害というより、学校や勉強が楽しくない・自信が持てない状態が続いている場合や、傷つきから目を逸らすために、はまり込んでいくことが多いように感じます。
(愛着障害の場合、子どものうちは親の目が怖くてゲーム等に逃げることもできないケースが見られます。もちろん、将来的に依存症になる可能性は高いので注意が必要ですが。)
最初は本当に小さなこころの隙間だったのに、あっという間に習慣化・エスカレートしやすいのが子どもと電子機器の関係性の特徴です。
ベースにあるのは、やはり、「不安」「緊張」「孤独」なので、夢中になっている電子機器を取りあげると、子どもたちの不安が増大・爆発してしまいます。
小さな隙間のうちに気づけなかったことを大人が反省しつつ、親子関係の見直し、お互いほっと安心できる場所の確保、「いい子じゃなくても大丈夫」という感覚を育てることなどをしていきましょう。
■ お子さん学校のスクールカウンセラーに相談する(いちばん身近なプロ)
■ お住まいの地域の、「子育て相談」「教育相談所」に相談する(検索してみてくだいね!)
■ はこにわサロンでもご相談をお受けしていますので、必要なときは「カレンダー」からお申し込みくださいね。
まとめ
依存症は、「意思の弱い人」や「快楽に溺れる人」がなるのではなく、人間が自分の不安と上手に付き合おうと思って行う行動から満足が得られないときにエスカレートしてやめられなくなることで生じます。
ベースには、こころの中にある圧倒的な空虚感、不安感、孤独、恐怖や悲しみなどがあります。依存症を治療するには、症状だけでなく、こころの中の欠乏に対処する必要があり、ひとりで行うのは困難です。専門家に相談する・自助グループを通じて仲間とつながりましょう。
行き違ってしまっているこころの状態を解きほぐして、自分を取り戻してくださることを願ってやみません。