「いい人」をやめたい〜人の機嫌を取らなくてもいい、自分軸で生きる方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。
「いい人」をやめたいと思う方に共通するのは
- 人の役に立つことで居場所を得る。
- 相手の期待に応えて、喜んでもらうと安心する。
- 自分より相手優先してきたら、自分の気持ちがわからなくなってしまった。
という気持ちではないでしょうか。
この記事では、
人の期待に応えすぎてしまう「いい人」は、なぜ生まれるのか。どうすれば自分の軸を取り戻して生きられるのかを、心理的な視点からお伝えします。
「気づいたら自分のことが後回し」になっていない?
こんなこと、思い当たりませんか?
- 頼まれると断れず、いつも人助けばかり
- 本当は自分も疲れているのに、「大丈夫」と引き受けてしまう
- 相手の気分や期待を優先して、自分の気持ちがわからなくなる
あるいは
- 周りの人には任せておけない
- 自分から気を利かせ、率先して仕事を担う
- 「ちょっとやりすぎではないか?」と悩むし、疲れも溜まっているが、やめられない
周りからは「優しいね」「気が利くね」「頼りになるね」と言われることも多いでしょう。
でもその裏で、「私って何がしたいんだろう」「このままでいいのかな」そんな虚しさや息苦しさを感じてしまうのです。
なぜ、こんな気持ちになるのでしょうか。

他人を優先し期待に応える人 people pleaser とは何か
people pleaser(ピープル・プリーザー)という言葉をお聞きになったことがありますか?
これは、「人を喜ばせることを優先しすぎてしまう人」「人の期待に応えることで安心を得てきた人」を指します。
people pleaser(ピープル・プリーザー)は、生まれつきの性格ではなく、環境の中で身についた生き方のパターンだと考えられています。
つまり、そうなったのには、理由があるということです。

「いい人」は、子どもの頃に身につけた“安全戦略”
人の期待に応えすぎてしまう背景には、子どもの頃の体験が関係していることが少なくありません。
たとえば、
-
- 親の機嫌が不安定で、空気を読んで先回りする必要があった
- 「いい子」でいると親が喜んだ
- 甘えたり、頼ったりしづらい環境だった
- 自分の気持ちより、周りを優先することを求められた
このような環境で育つと、子どもは次第に、親や周りが求める役割を自ら引き受けるようになっていきます。なぜなら、そうしなければ親ががっかりしたり、不機嫌になったり、家族の空気が重くなってしまうことを、子どもなりに感じ取っていたからです。
こうして、親や周囲が求める役割を自分から進んで引き受けることが増えていきます。
やがてそれは、「いい人」でいることが当たり前の生き方となり、心と身体にしっかりと根づいた “安全戦略”になっていきます。
安全戦略とは、その環境の中で安心して生きるために、無意識に身につけた行動や心のクセのこと。それは欠点ではなく、その時を生き抜くために必要だった知恵でした。

いい人でいるほど苦しくなる仕組み
問題は、子どもの頃に身につけた安全戦略(生きるための知恵)が、大人になった今も自動的に働き続けてしまうことです。
嫌われる不安が先に立って断れない、相手にとって都合がよい人になってしまう、断ると罪悪感が湧いてつらくなる。そのため、限界を超えて頑張り続けてしまうのです。
その結果、心と身体には少しずつ無理がたまっていきます。
- 慢性的な疲労感
- 理由のわからない虚しさ
- イライラや怒りが溜まる
- 些細なことで感情が揺れやすくなる
さらに苦しいのは、そのしんどさを外に向けられないことです。「自分がもっと上手くやれればいい」「私の我慢が足りないだけ」そうやって、いつも自分を責めてしまい、次第に自分の本当の気持ちがわからなくなっていく。
人間関係に強い不満を感じているのに、関係を変えることも、離れることもできない。そして、そんな自分自身に対して、一番強い嫌悪感を抱いてしまうようになります。
こうして、「こんなに頑張っているのに、報われない」「でも、頑張ることをやめることもできない」という、身動きの取れない状態に陥ってしまうのです。

どうすればこのループから抜け出せるのか
「もう、他人軸で生きるのは嫌。変わりたい!」そう思っていても、すぐに変えるのは実はとても難しいです。
というのは、その行動は長い間、あなたを守ってきたものだから。いきなり手放そうとすると、不安や罪悪感が一気に押し寄せてきます。
だから大切なのは、無理に“いい人をやめる”ことではありません。代わりに、やってみて欲しいことを4つお話します。
① 変われない自分を責めない
ループから抜け出す最初の一歩は、変われない自分を責めるのをやめること。
やめられないのは、あなたの意思が弱いからではなく、無力な子どもの自分が生き延びるために必要だった生き方だからです。
これまで頑張ってきた過去の自分に、「よく頑張ってくれたね、ありがとう」を伝えましょう。そして、その生き方を続けてきた自分にも、「よく頑張ってきたよね、お疲れさま」を伝えて欲しいのです。
ありのままの自分を認めて受け入れることが、子どもの頃に、本当は必要だったこと・欲しかったことです。
大人の・今のあなたが、過去と今の自分を丸ごと受け止めることが、悪循環を止めるために必要なのです。

② 自分の不安に気づく
多くの人がつまずくのが、「断れるようにならなきゃ」「自分軸で生きなきゃ」と、急に理想の自分になろうとすることです。
でも、いきなり行動だけを変えようとすると、罪悪感や不安が一気に強まり、結局、元のやり方に戻ってしまいます。
だから、まずは、自分の内側で何が起きているのかに気づくことが大切です。
- 今、どんな不安があるのか
- 断ったら、何が起きそうだと感じているのか
- 本当はどうしたいと思っているのか
答えがはっきりしなくても大丈夫です。
不思議に思われるかもしれませんが、不安を消そうとしなくても、「気づく」だけで心と身体の反応は少し緩みます。
- あ、不安だから断れないんだな
- 怖いから、つい引き受けてしまうんだな
そう言葉にできると、不安に飲み込まれるのではなく、不安を一歩引いて眺める位置に立てるようになります。
この「少し距離ができた状態」では、これまで反射的に選んでいた行動の前に、
- 今すぐ引き受ける
- 少し考える
- 条件をつける
- 今回は断る
といった複数の選択肢が見えてきます。

③ 安全な場所で「新しい体験」を重ねる
選択肢が見えてきたら、安全な場所で小さな練習をしていきましょう。
最初は、
- 関係が薄い知人
- 関係が安定している友人
- お店やサービスなどの軽いやりとり
- 家族の中でも影響が小さい相手
「少し気まずくなっても大きな問題にならない相手」を選びます。
また、いきなり断らなくても構いません。まずは即答しないことから始めてみてください。
- 「一度考えてからお返事しますね」
- 「今日中じゃなくても大丈夫ですか?」
- 「少し確認してもいいですか?」
慣れてきたら、「やる・やらない」の二択にせず、条件をつける練習もおすすめです。
- 「今回はここまでならできます」
- 「◯時までなら大丈夫です」
- 「△△はできませんが、□□ならできます」
これは、相手を否定せずに、自分の限界を守るための大切な練習です。
こうして、「断っても相手が怒ったりしないのだな」とか、「相談するともっと良い案が出てくるのだな」といった体験を通して、少しずつ「いい人一択」を手放していくことができます。

④ ひとりで抱え続けなくていい
人の期待に応えすぎてしまう背景には、長年ひとりで抱えてきた不安や緊張があります。それを関係性の中で、少しずつほどいていく場として、カウンセリングも有効です。
はこにわサロン東京には、
- 「いい人をやめたいけれど、怖い」
- 「自分の気持ちがわからない」
- 「人間関係でいつも疲れてしまう」
そんな方が、相談に来られています。
無理のないペースで、「自分らしい生き方」を見つけ、育てていくお手伝いをさせていただきます。
いい人を手放すために〜まとめ
「いい人」をやめるために必要なのは、なぜ自分がそうせずにいられないかの理由や構造を知ること。そして、頑張ってきた自分を認め、ねぎらい、不安を少しずつ手放していくことです。
自分にていねいに向き合うことを通じて、自尊心や自己肯定感を取り戻していくことができます。また、小さな練習を通じて、いい人を演じなくてもよいこと、むしろ、いい人を手放すことでもっとよい人間関係を作ることができると発見していくことも大切です。
ぜひ、この記事を通じて、その一歩を踏み出していただければと思います。
お手伝いが必要だと感じる時は、カウンセリングをご利用ください。
いつでもお待ちしています。