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動きたいのに動けないのは「怠け」ではなく「低覚醒」かもしれない

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

前回の記事では、神経が覚醒しすぎて、考えがまとまらない、集中できない、ミスが多くなることがあるということをお話しました。実は、その反対に、神経がスリープ状態に入ってしまって、やるべきことがやれない、動きたくても動けなくなる状態の「低覚醒」があります。この記事では、それはどのような状態か、なぜそうなるのか、改善方法について、お話したいと思います。

 

低覚醒な人の日常

朝、起き上がれない。

やるべきことがたまっているのに、取りかかれない。

ぼーっとして頭が働かない。

自分は意志が弱い人間だ・・・と落ち込む。

何もできないから、ついついスマホをさわっていると何時間も経ってしまい、ますます自己嫌悪を感じる悪循環の方もおられるかもしれません。

このような状態にあるときは、甘えや怠けではなくて、自律神経が低覚醒になっているのかもしれません。

 

低覚醒とは

低覚醒、というのは、自律神経が、自分を守るために心身の状態をスリープ状態にしている状態を指します。

 

これも、サバイバルのための神経反応です。

 

動物は、危険を感じたら、闘うか逃げるかして生き残ろうとします。でも、もう逃げられない、抵抗しても意味がないという状況では、死んだふりをすることで身を守ろうとしたり、苦痛を和らげようとします。これは、意識的にそうしているのではなく、神経が瞬時に反応しています。

 

人間も、同じです。逃げることも闘うこともできない時、自律神経は意識や感覚を落とすことで、苦痛やつらい状況をしのごうとします。これがフリーズ反応です。

 

低覚醒によるサバイバル(子どもの場合)

虐待やいじめ、家庭内で逃げ場がなかったりすると、低覚醒になることで、身を守ろうとすることがあります。

 

低覚醒になると、子どもだったら、おとなしくて人と目を合わせないとか、ぼんやりして反応や動きが遅い、意欲がないように見えるかもしれません。

 

朝起きられないとか、学校に行けなくなることもあるかもしれません。

 

ぼんやりしているから、授業の内容も理解できず、成績があまりよくないことも起こり得ます。

 

低覚醒によるサバイバル(大人の場合)

大人の場合は、人と話していても内容が頭に入ってこない、考えなきゃいけないけど考えられない、何から始めればいいかわからない、やらなければならないことはわかっているのに、身体が動かないということが起こります。

 

これらは、「やりたくないから、やらない」と選んでいるのではなくて、脳や神経レベルでエンジンを切ることで危険から身を守っているために、エンジンをかけたくてもかけられないのです。

 

 

誤解からさらに低覚醒になることも

でも、周りからは「やる気がない人」「甘えてるんじゃない?」と誤解されてしまうこともあります。

 

本当はすごく困っていて助けを必要としているのに、こんなふうに誤解されてしまうと、身体と心は「危険だ」と感じて、ますます動けなくなってしまうのですよね。

 

これも、甘えじゃなくて、人間は、腹側迷走神経で安心して人と繋がりながら生きるようにできていて、誤解されて、排除されるかもしれない、と感じたら、危険信号が点滅して、過覚醒や低覚醒になるようにできているのです。

 

 

 

自分で自分を責める悪循環

ですが、過覚醒とか低覚醒は、神経レベルの反応で本人が選んでいるわけじゃないために、自分でも、理由がわからない。

 

それで「みんなが甘えている、というなら、甘えているのだろう」と誤って認識してしまうことになります。

 

それで、自分を責めてしまうのです。

 

「自分はダメだ」「意志が弱い」「行動できない」自分を責めることで、やる気を引き出そうとしているとも言えますが、やっぱり逆効果です。

 

「動けないことを責めること」が、さらに動けなくするという悪循環です。

 

いったい、どうしたらいいんでしょう?

 

 

低覚醒から回復するために最も大事なことは?

答えは、頑張ることや、気合を入れることではありません。安心と安全を回復することです。

 

人間は、安全や安心が感じられたら、自然と腹側迷走神経で繋がろうとしますし、そうしたら、低覚醒にならずにすみます。

 

ただ、複雑性トラウマの方は、安心・安全体験が少なくて、それがどういうものかよくわからなかったり、危険じゃない時にも自動的に警戒してしまう、過覚醒や低覚醒になってしまうことがよくあります。ですので、安心・安全とはどんな感じかを、知るところから、自分に教えて育てていくところから、してあげる必要があるかもしれません。

 

甘えじゃなくて自然な反応だと知ることが大事

まずは、自分の状態について知るところから始めましょう。複雑性トラウマ、や、ポリヴェーガル理論、で調べていくのがよいと思います。つまりは、自分の今の状態は、甘えや怠けではなくて、人間の自然で正常な反応〜危険から自分を守ろうとしているのだ、と知ること。

 

ただし、その結果、本来だったら、安心できるはずの場面でも安心に気付けなかったり、心身を緩めるための行動、例えば、深呼吸とか、温かい飲み物を飲む、と言ったことも、心地よく感じたりしない、何も感じない、といったこともあります。そういう場合は、最初は、知識を得ていく方が取り組みやすいでしょう。

 

なんとなく、感覚的に、これは心地よさそう、とかイメージできて、取り組めるようだったら、ぜひ、やってみてください。

肌触りの良いタオル、とか、いい香り、とか、お散歩が好き、とか、好きなものを見つけてください。

 

「つながる」ことで安心安全の腹側迷走神経を回復させる

次にトライしてみて欲しいのは、人とつながることです。

 

といっても最初は、小説とかドラマ、音楽やお笑いのように、人が作る作品に触れることや、押し活のように遠くの人を応援することも良いでしょう。

 

人じゃなくて、動物などの生き物に触れる、も、グッドです。

 

こんなふうに、安心が増えていったら、人とつながる機会が、なぜか自然と生まれたりするものです。

 

一緒にいても怖くない、むしろ温かい気持ちになれる人につながっていきましょう。

 

無理せず、ゆっくり、こころと身体の軽快を解いて、温めていきましょう。

 

低覚醒から回復するために、カウンセリングにつながるというのもひとつの方法です。無理なく、ご自分のペースで相談することができ、自己理解から始めて、あなたオリジナルの回復方法をご一緒に検討することもできます。

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