見捨てられないための努力が対人関係に悪影響を与えてしまうのはなぜ?
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。
先日、「いつも相手を優先してしまうのは、隠れ見捨てられ不安かもしれない」というお話をしました。
見捨てられ不安があると、人は関係を失わないために様々な努力をします。
■ 嫌われないように気を遣う。
■ 頼まれたことを断らない。
■ 相手を優先する。
こうした行動は、もちろん大人として必要なことでもあります。良い対人関係を築くためには、相手への配慮は欠かせません。
でも、それが、「見捨てられたくないからやめられない配慮」である時は、注意が必要です。
なぜなら、不安が理由の気遣いを続けていると、自分に過度な無理がかかり、破綻してしまうからです。

見捨てられ不安の強い人は対人関係満足度が低い
愛着研究では、見捨てられ不安が強い人ほど、人間関係の満足度が低くなりやすいことがわかっています。
なぜ、関係を守ろうとこんなに努力しているのに、満足度が低くなってしまうのでしょうか?
それは、「見捨てられるのではないか」という恐れがあると、自分の気持ちを押し込めたまま我慢を続け、いつか限界を迎えてしまうからです。

関係を守る努力が破綻を招く理由
例えば、相手を優先した笑顔の陰に、「いつも私ばかり我慢している」「なんで誰も気づいてくれないの?」という気持ちが隠されていると、その場はやり過ごしても、いつかは溢れてしまうでしょう?
それは、人間なのですから、仕方のないこと。
むしろ、ギリギリのところで身体と心があなたを守ろうと反旗を翻しているのです。
そこまで無理をしては、いけません。
でも、見捨てられ不安があると、自分の意思で気遣いを止めるのは難しいのも事実です。

「雑に扱ってもいい人」だと思われることも
一方、相手の側からすると、あなたが何も言わず、いつも笑顔で引き受けてくれているので、「この人は大丈夫なんだろう」と思われやすくなります。
場合によっては、「文句を言わない人」「雑に扱ってもいい人」だと思われてしまうこともあります。なぜなら、雑に扱っても苦痛を覚えない人だと勘違いされてしまうからです。
いつも我慢しているのに、気づいてもらえなかったり、便利に扱われたりしたら、本当に悲しいし、つらいですよね。
ですから、「もう無理!」と伝えることは大切です。
でも、突然溢れて攻撃的になったりすると、ぶつけられた側もびっくりしてしまい、あなたの気持ちをちゃんと理解してもらうのが難しくなってしまうこともあります。

愛着不安の高い人は相手の拒絶や否定を予測しやすい
それから、愛着研究では、愛着不安の高い人ほど、相手からの拒絶や否定を予測しやすいことがわかっています。
例えば、相手の返事がそっけなかったり、アイコンタクトが取れなかったりした時。多くの場合、ひとまずは「疲れているのかな」「忙しいのかな」と軽く受け流すことができます。
でも、見捨てられ不安が強いと、「怒っているのではないか」「嫌われたのではないか」と受け取りやすいのです。

愛着不安が強いとネガティブ解釈しやすい
研究では、愛着不安の高い人は、相手がニュートラルな状態であってもネガティブに解釈しやすいことも報告されています。
つまり、相手が実際には怒っていなくても、「怒っているはずだ」と感じてしまうのです。
すると、さらに気を遣って我慢してしまったり、相手のことを信頼できなくなってしまいます。
そして、ますます無理をしたり、ギクシャクしたり、してしまいます。

見捨てられ不安があると対人関係の体験不足になりやすい
本当に親しい関係とは、お互いがある程度本音を伝えられる関係です。
意見が違うこともあるし、相手をがっかりさせてしまうこともある。
それでも関係が続いていく経験を通して、人は信頼する感覚や安心感を育てていきます。
でも、見捨てられ不安が強いと、「本音を言ったら嫌われる」と思ってしまうため、意見をぶつけ合う経験をすることができません。経験不足が、ますます、無理する要因になってしまいます。

見捨てられ不安ゆえに対人関係が難しくなってしまう理不尽を変えるには
このように、見捨てられないための努力の報われなさがあるとき、この不安を手放し、自分を回復するために、どうすればいいでしょう?
① いい人をしていることに気づくこと
まず大切なのは、自分が自動的に「いい人」になっていることに気づくことです。
疲れた時。
モヤモヤした時。
相手に会った後にどっと疲れる時。
「私は本当は何を感じているんだろう」と自分に問いかけてみてください。
「もう嫌だ」
「疲れた」
「悲しい」
「寂しい」
そんな気持ちが出てきたら、それを否定せず大切にしてあげてください。
「よく頑張ったね」
「お疲れさま」
「(自分に)大好きだよ」と伝えて、自分が好きなこと、たとえば、ちょっとしたご褒美や、お風呂の入って早く寝るとかして、自分に優しくしてください。

② 大人の対人関係は「言葉で伝える」が原則
そして、可能であれば少しずつ相手に伝える練習をしてみましょう。
もちろん、最初はとても怖いと思います。
でも、大人の人間関係の基本は、気持ちを汲んでもらうのではなく、「言葉で伝える」が原則なので、やっぱり、伝えなければ伝わりません。
「なんとなく嫌なんだ」「疲れちゃった」くらいでもいいのです。
伝えてみると、意外にも受け止めてくれる人がけっこういます。
そして、そういう人は、あなたが安心してつながれる可能性のある人です。
逆に、無視したり、責めたりする人がいたら、「残念な人」なので、できる範囲で距離を取りましょう。

③ 相手の気持ちを勝手に決めつけない
また、相手の気持ちを勝手に決めつけないことも大切です。
「きっと怒っている」「きっと嫌われた」「きっと迷惑だった」と思った時は、一度、立ち止まってみてください。
相手の気持ちは、相手にしかわかりません。勝手に結論を出してしまうのは、ある意味では相手の領域に入り込むことでもあります。
できれば、「わからない」「保留」というニュートラルな場所を作ってみてください。
「とりあえず保留」ができるようになると、心はずいぶん楽になります。

④ お手本を見つけて真似てみる
安心できる人、信頼できる人が見つかったら、その人をお手本に、よく観察して、対人関係のふるまいを学んでみましょう。
健康な受け止め方や反応の仕方を真似しているうちに、少しずつ、適度な距離感で人と付き合うことや、少し冒険することもできるようになっていきます。

まとめ:見捨てられないための努力が対人関係に悪影響を与えてしまうのはなぜ?
見捨てられ不安のある方が、対人関係にとても気を遣っているのにも関わらず、対人関係がうまくいかないで、苦しんでしまうことが多いことについて愛着研究の知見からご説明しました。
見捨てられ不安は、原初的で強い恐怖感なので、これを手放すことは容易なことではありませんが、不可能ではありません。まずは、気づくところから、始めてみてください。
はこにわサロンでは、そのための情報をご紹介しているので併せて参考にしてください。
おひとりでは難しいと感じられたら、カウンセリングの利用も検討してみてくださいね。
