子どもの不登校〜スクールカウンセラーが伝授する「学校に行けない本当の理由」を理解する方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
臨床心理士としてスクールカウンセラーをしている吉田です。
以前は週5日、今でも週3日は学校の中でカウンセリングをしています。
学校では、子育てのことと不登校(行きしぶりを含む)が一番多い相談内容です。
今日は、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときに、子どもの本当の気持ちを理解する方法をご紹介します。
子どもは「不登校」を言葉でうまく説明できない?
子どもと、言葉でコミュニケーションをとるのって、案外むずかしいなと思っています。
「何があった」とか事実を話すことはまだしも、自分の気持ちや考えを大人に伝えるのは、かなり言葉の力がないと難しいことが多いです。
10歳までは上手に表現できないし、10歳を超えると言葉では表現してくれなくなります。
ましてや、「自分が学校に行けない・行きたくない」というのは、その子どもにとっても「緊急事態」です。心配する親や先生などの大人に、その理由や気持ちを話すことができる子はほとんどいないです。
それは、子どもたちの悩みを聞くスペシャリストであるスクールカウンセラーであっても同じことです。
信頼関係のある親や先生以上に、子どもの本音を聞き出すことは困難です。
では、スクールカウンセラーは一体どうやって子どもの本当の気持ち、困っていることを理解しているのでしょうか?
子どもが発した一片の情報がとっかかりとなる
わたしたちスクールカウンセラーは、子たちが発する一片の情報(あるいは発しなかった情報)にも細心の注意を払って、子どもたちの気持ちを把握していくのですが、その様子を「群盲象を評す」を例にお話しします。
群盲象を評す(インドの寓話)
6人の盲人が、ゾウに触れることで、それが何だと思うか問われる形になっている。
足を触った人は「柱のようです」
尾を触った人は「綱のようです」
鼻を触った人は「木の枝のようです」
耳を触った人は「扇のようです」
腹を触った人は「壁のようです」
牙を触った人は「パイプのようです」と答えた。それを聞いた王は答えた。「あなた方は皆、正しい。あなた方の話が食い違っているのは、あなた方がゾウの異なる部分を触っているからです。ゾウは、あなた方の言う特徴を、全て備えているのです」
(出典:ウィキペディア)
不登校の理由①隣の子が意地悪する
あおくんは、「学校で何か困っているの?」というお母さんの声かけに、一生懸命お話しします。
あおくん「となりの席の子がイジワルを言うのがイヤだから学校に行きたくないんだ」
お母さん「もしかして学校でいじめられているの!?」
あおくん「先生に相談したら、二人とも悪いって言われちゃったの。」
お母さん「先生はいじめを理解していないのね!?」
不登校の理由②学校で誰も僕の話を聴いてくれない
あおくん: 学校でも誰もぼくのお話を聞いてくれる人がいないんだよ。(いつもお話を聞いてくれていた保健室の先生が産休に入っちゃったの。)
あなた: 学校では誰もあなたの味方をしてくれないのね!?
あおくん: だから、学校でいつもひとりぼっちなんだ。(本当は、家でもいつも一人ぼっちで寂しいけど、お父さんもお母さんも大事なお仕事で忙しいし、ぼくはもう大きいから、寂しいなんて言っちゃいけない。)
あなた: ひどい!安心して学校に送り出せない!
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あおくんはウソを言っているのでもなく、大げさに言っているのでもない。
一生懸命、自分の置かれた状況や気持ちを説明しようとしています。
でも、これは全体の一部分。
だから、あおくんが一生懸命お話してくれることを尊重しつつも、あおくんの困り感の全体像はもっと広がりや深さのあるものとして、読み取っていかなくてはいけない。
箱庭療法と不登校カウンセリングの共通点
「箱庭療法」というのは、砂箱の中に、自由にフィギュアを置いて作品を作ることを通じて、心の理解やケアをする心理療法です。
簡単にいうとこんな感じ。
砂箱に
好きなフィギュアを選んで置いていく
砂箱にオリジナルな作品を作る
箱庭の作品は、あなたの心のメッセージを表現しています。
このようにフィギュアに込められた可能性を、ひとつひとつ丹念に検証していくことで、箱庭作品に込められたメッセージを解読していきます。
スクールカウンセラーが理解した学校を欠席しているあおくんの本当の気持ち
あおくんのお話も同じです。
● 教室の居心地が落ちてきているな
● 今までは友だちとケンカしても、翌日にはケロッとしていたのにおかしい
● 先生への不満は、もっと見て欲しい気持ちの裏返し?
● おうちではどんな様子なのかな?
● 家でも学校でも、がんばってきて、電池切れかな?
・・・のように可能性を洗い出します。
そして、洗い出された可能性をひとつずつ、あおくんにそれとなく確認していきます。
そう、例えばこんな風に。
こんな風にあおくんに話しかけてみて、本人の表情や、その後の行動を確認していきます。
「読み」が正しければ、あおくんの表情や行動も少しは改善するし、外れていたら改善しないから、次の可能性をチェックしてみよう、となる。
子どもの不安を解消できる方法とは
そして、物理的な学校の環境よりも、「大人(特にお父さん・お母さん)がとても心配してくれている」という手応えが本人の満足度や安心感をあげて、もう少しがんばって学校に登校したり、学校でも頑張れる子になっていくかもしれない。
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