大切な人を失った時にあなたを勇気づける4冊の絵本〜グリーフケア
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。
あなたにとってかけがえのない大切な人を失った時。
それは、人生最大の試練だと思います。
胸が張り裂けてしまって、泣いても暴れても、何をしてものがれられない。
あまりに衝撃的で、胸にぽっかり穴が空いてしまって、悲しみすら感じられないほど無気力になってしまう。
自分でも、しっかり悲しんで、折り合って、日常の生活にもどったけれど、ふとした時に涙があふれる。
死という絶対的な力を見せつけられたことで、のみ込まれそうな恐怖感を感じるようになった。
最終的には時が癒してくれることを待つしかないのですよね。
でも、少しでも、あなたの心と身体を温めてあげたい。
そんな気持ちで、今日は、何冊かの絵本をご紹介してみようと思います。
『わすれられないおくりもの』by スーザン・バーレイ
みんなから慕われ、愛されていたおじいさんアナグマ。
かけがえのない友だちを失ったみんなが、共に悲しみ、アナグマの思い出を分かち合いあいます。
そして、それが、アナグマからのおくりものだったんだ!って気づくのです。
大切な人と過ごしたたからものを、思い出していって、もう一度、自分の胸の中にしまい直す。
そんなプロセスを踏んでいくことで、少しずつ、大切な人を自分の胸の中に生き返らせて、一緒に生きていくことができるようになるのだと思います。
もう一つ、この本の素敵なところは、アナグマの気持ちも書かれているところです。
年をとって、身体の自由が効かなくなっていたアナグマ。
モグラとカエルのかけっこを眺めて「あぁ〜、ぼくも一緒に走れたら!」と思っていたアナグマ。
アナグマは、夢の中で、地面をしっかりと蹴って、どんどん走っていました。
そして、ふと地面からうきあがって、そうしたらまるで身体がなくなったように自由になった!と感じたのです。
きっと、この時、アナグマの魂は、こちらの世界からあちらの世界へと旅立ったのだと思います。
もちろん、この記述はスーザン・バーレイの想像にすぎませんけれど。
でも、生き返りを体験した人のお話などと一致するのかなーと思います。
そして、こんな体験だったら、きっと誰もが、残していく人たちに伝えたい!と願っているのではないかと思うのです。
『わすれられないおくりもの』は絵もスーザン・バーレイが描いていて、とても優しい絵なので、文章を読む気力もわかない、という時にもオススメしたいです。
『てんごくのおとうちゃん』by 長谷川義史
個人的に大好きな長谷川義史さんの、あったかくて、底力が湧いてくる絵本です。
妻と子ども二人を遺して天国に行ってしまったおとうちゃん。
この絵本は、末っ子の「ぼく」からおとうちゃんへの語りかけであり、お手紙です。
おとうちゃんと過ごした何気ない生活のエピソードが語られます。
おとうちゃんとキャッチボールしたけど、ぼくはへたくそで、いつも泣いて帰っていた。
でも、泣かないで、おとうちゃんともっと一緒にキャッチボールしてあげればよかったなぁ。
おとうちゃんが買ってくれたウクレレ、こわしてしまって必死で直したけど直らなくて。
秘密にしてた。ごめん。
おかあちゃんは絶対に買ってくれない立ち食いホットドック買ってくれたな。
げんこつされたのも、痛かったけど、もういっぱつどつかれてもよかったかな。
そんな風におとうちゃんと過ごした日を思い出している。
悪いことしようとした時には「まてよ、悪いことして地獄に行ったら、おとうちゃんに会えなくなるから、やめとこ」って思う。
でも、ぼくのとこに会いに来た時もあったよね?
見ててくれてるよね。
おとうちゃんが生きていてくれたら一番よかったけど、死んでしまったら、ぼくの中で生かしといてあげよ。
そんなつぶやきが聞こえてくるような感じがします。
『クマよ』by 星野道夫
アラスカの写真を撮り続けた星野道夫さんの写真絵本です。
わたしは、わたし自身が大切な人との別れを経験する中で、「こちら側の世界」と「あちら側の世界」があるのではないかーと思うようになりました。
星野さんが、東京に生きながら、今この時をアラスカで生きるクマを思って書いたこの絵本を読むと、「こちら側」と「あちら側」が本当にあるよね!と言ってもらえるような気持ちがするのです。
星野さんのアラスカ。
命が、命ある限り精一杯、貪欲に生き、いつか終わりが来たら、次の命へとバトンタッチする世界。
ひとつの命が消滅しても、アラスカの草や風や水の中に生き続けていると感じさせられる場所であるように思います。
『クレーの天使』by 谷川俊太郎
パウル・クレーというスイスの画家が描いた天使たち。
その天使に谷川俊太郎さんが詩を書きました。
わたしは、この本を何度も見返したものです。
そして、大切な人を失った友に贈る本でもありました。
(そんなわけで、何度か買っているけれど、今手元に1冊もないことに気づきました。)
ですから、記憶を探って書いているのですが・・・。
大切な人を失った時。
人は誰もが、自分が小さな子どもに逆戻りしてしまったような気持ちになるものです。
この衝撃や悲しみにどう対処したらよいか、まったくわからない。
自分の中に、役に立つことは何もない、と感じて、無力感にさいなまれてしまう。
クレーの天使たちは、ちっぽけで、身よりなく、ぎこちない自分の自画像であるかのようです。
でも、天使ですら、こんなに無力なのだったら、人間が無力だってかまわないよね。
谷川俊太郎さんの詩も、心にじんと響きます。
こちらは、断然、自分向けの本です。
もし、大切な人を失ったつらさで夜も眠れなかったら・・・
大切な人を失ったとき。
じゅうぶん時間をかけて、思い出を話し、共有し、自分の胸の中におさめていくことが大切です。
けれど、忙しい現代では、思いを共有できる人とその時間がとれないまま、ただ無理に忘れようとして、もっと辛くなってしまうことが少なくありません。
もしよかったら、思い出を話しにいらっしゃいませんか?
あたたかい思い出、おかしかった思い出、もしかしたら今なお腹立たしい思い出もあるかもしれません。
でも、どれも大切なあなたの思い出です。