子どもが発達障害かもしれない?子どものうちに検査して理解するメリットとは?
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。
週の半分は中学校でスクールカウンセラーをしています(以前は保育園〜小学校でもカウンセラーをしていました)。
子どもの発育・成長がゆっくりだったり、落ち着いて座っていられないなど、社会生活で気になることがあるとき、「発達検査」を勧められることがあります。
「発達検査」という言葉からは、なんとなく、「発育の遅れを指摘されるテストなんじゃないか」とか「発達障害だと診断されるテストなんじゃないか」と不安を感じる方も多いです。
でも実は、発達検査は、そんなに怖くて不吉なものではありません。
検査自体はクイズ形式なので、「テスト」という感じではないですし、子どもが得意とすること、苦手なことを理解することもできます。
子どもの苦手なことがわかると、どこで手をかせば良いか、無理強いしないほうがよいかがよくわかります。すると親子関係も改善しますし、何より本人の自己肯定感を守ることができます。
この記事では、発達検査を受けるかどうか迷っている方に向けて発達検査を受けることによって得られるメリットについてお話ししてみようと思います。受ける・受けないに関わらず、お子さんの理解の一助になることを願って書きますので、どうぞ最後まで読んでみてくださいね。
発達検査とは
「発達検査」というのは、子どもの発達について客観的に把握するためのテストを指していて、実はたくさんの種類があります。でも、このページでは、「発達検査=WISC-IVウィスク・フォー」として話をしていきます。
WISC-IV(ウィスク・フォー)というのは、5歳0ヶ月から16歳11ヶ月までの子どもが対象の知能検査です。小・中学生が「発達検査をしてみましょう」と勧められた時には、このWISC-IVであることが多いです。
テスターと対象の子どもが一対一で90〜120分くらいかけて行います。内容的には学校のお強に近いものもありますが、遊びのようなものや、テレビのクイズ番組に出てくるようなものなど色々あり、これらの結果を総合して、子どもの力を把握していきます。
発達検査(WISC-IV)で何がわかるのか?
- 子どもの知的な能力の程度
- 子どもの能力の中で優れていることと、苦手としていること
- 物事を理解したり、実施するときの、傾向(クセ)。
- 気持ちの落ち着きや集中力など
このように、発達検査で発達障害かどうかを判定するわけではありません。
(発達障害かどうかの診断は、専門のドクターが行います。その際の判断材料として使われることはあります。)
でも、自分の子どもが発達障害かどうか心配している保護者の方もいらっしゃいますよね。
では、そもそも、発達障害とは何なのでしょう?
発達障害とは?
専門用語で説明するとこんな感じです。
実際にはこれらの発達障害は「スペクトラム」といってグラデーションで理解されるのですが、「スペクトラム」言われてもよくわからないですよね。
すると、なんとなくこんな風に理解する方が多いような気がします。
でも、実際にはこちらの方が、実情に近いのではないかと思います。
黄色の○が「敏感さ」や「こだわり」などの「日常生活で困る事柄」だと思ってください。左側は黄色の○がたくさんあって、日常生活でも支援や配慮が必要な場合。右側は○が少ない。でも、ないわけではないんですよね。
いわゆる「グレーゾーン」の人はたくさんいる
そして、この円がそこそこまばらに存在する真ん中周辺の人って、世の中にとても多く存在するように思うのです。
ちなみに、私も真ん中辺に位置する人です。わたしはADHD傾向があります。子どもの頃は忘れ物や失くし物が多かったし、今は一度に色々なことをやりたくて(やって)よく失敗しています。家事をいくつも同時並行するのですが、必ず後でやりかけのまま放置されているものが見つかります。ひとつずつ順番にやればいいと思うけど、やっぱり同時並行が好きなのです。
そして、多分、「サザエさん」も私の近くにおられるのではないかと思います(よくお財布を忘れてお買い物に・・・笑)
社会人として大人を見回した時に、同じような「黄色い円があるね」という方は概ね「普通」に生活しておられます。きっとご本人は自分の苦手さをよく理解していて何かしらカバーする方法をとっておられると思います。
活躍する発達特性のある人々
そう、大人になれば、いろいろなことが少しずつできるようになったり、カバーできるようになってきます。それに、短所として捉えられがちな「黄色い円」が「長所・得意なこと」として発揮されていることもとても多いです。
例えば、会社の上司はいつも新しいアイディアを思いついてガンガン前進する人でしたが、このエネルギッシュなところはADHDの衝動性と関係があります。また、緻密な仕事でいつも私のミスをクールに指摘・カバーしてくれた同僚はアスペルガー傾向があったのかな、と感じます。
何が言いたいかというと、「何らかの“発達障害傾向”を持つ人」はたくさんいるし、普通に成人して、普通に働いて生きている。
だから、子どもの時点でなんらかの発達障害傾向があるとわかることは、何らその子の将来を閉ざすものではないです。
では様子見でよいのでしょうか?
「じゃあ、特に何もせずに、過ごしていっても大丈夫ですよね?」と思われるかもしれませんが、それは違います。
子どもが今、家庭や社会生活の中でうまく過ごすことができない(本人もイライラしていたり、悲しい思いをしていたりする)なら、何がどのように苦手なのかを理解して、手助けしてあげることはとても大切です。
確かに、子どもが成長したら、いま困っていることの何割かはなくなるかもしれません。
でも、それは何年も先になるでしょう。
そしてそれまでの間、子どもは不全感を感じながら過ごしていかなければなりません。
気持ちが落ち着かなくて学ぶべきことが学べなくなってしまうかもしれません。
イライラするあまり喧嘩が多くて、お友だちと楽しく過ごす機会が減ってしまうかもしれません。
その結果、「自分はダメな人間」と思い込んでしまうかもしれません。
それは本当に悲しいことです。
だから、「今」できることをしてあげましょう。
子どものために「今できること」とは?
子どもの「困った」を理解する
-
- 本人に聞いてみる(主観的な困り感を理解する)
- 先生に聞いてみる(集団活動の中での困っていることを理解する)
- 発達検査をしてみる(本人の困り感を引き起こしている認知特性について理解する)
-
- この段階で相談に加わった
「本人+保護者+先生+発達検査をした心理士」が、子どもの「困った」を解決するためのチームメイト
- になります。
- このチーム内では情報は共有することが望ましいと思います。(共有する=手助けするメンバー、ということになります。)
子どもが困らないように環境を整える
情報を共有した上で、子どもが困らないようにするために何ができるかを話し合います
- 子どもが過ごしやすい環境を整える
- 困った時に誰にどのように「ヘルプ」を求めるか決めておく
- 整えた環境で子どもが頑張ったら、いっぱいほめる
- 定期的にふりかえりのミーティングを持ち、本人の成長や必要な手助けをアップデイトしていく
そして、子どもがこのような支援が不要になったら、チームは解散です。
まとめ
子どもに発達検査を勧められたら、親御さんはきっとショックだったり、悲しかったりすると思います。
でも、発達検査を受けることを通じて本人の成長を力強く応援することができます。
また発達障害の傾向があっても、学齢期に必要な手助けをしてもらうことで、自分を嫌いになることなく、自立して、豊かな人生をおくっていくことができます。
それは、大人になるまで困り感をひとりで抱えて、大人になって「発達障害だった」とわかるより、ずっとよいことなのです。
ですから、どうぞ、必要以上に怖がってしまって子どもの成長を手助けするチャンスを見逃しませんように!
心から願っています。