子どもを感情的にどなって怒ってしまった時の対処方法と予防する方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
「自分の気持ちを抑えようと努力しているのに、また爆発してしまった」
親が自分の気持ちをコントロールできず子どもにぶつけてしまう、というのは、子育てでいちばんやりたくないことではないでしょうか。
でも、親も生身の人間。
子どものことを大切に思えばこそ、イライラが増してしまうことは自然ですし、日々の忙しさやストレスの影響もあって、親側が気持ちをコントロールできなくなってしまうことは生じるものです。
そのような時にどう対処したらよいのか、再発防止するにはどうしたらよいのかについてお話したいと思います。
子どもを感情的に怒ってしまったら
①クールダウン
まず必要なのは互いのクールダウンです。
お互いに少し離れた場所で気持ちが落ち着くのを待ちましょう。
数分で落ち着けることもあれば、1時間とか、半日かかる時もあるかもしれません。
特に親側は、「またやってしまった!」という後悔(痛み)を感じつつ、「何がいけなかった?」と振り返り、「今後どうすればいいの?」を考えるものですから冷静になるまでに時間がかかることもあるでしょう。
親側の怒りの再燃を防ぐために、冷静さを取り戻すまでは、子どもとは少し距離をとりながら接するほうがいいかもしれません。そのような時は、努めて淡々と接するのが楽ですよ。
②落ち着いたら気持ちを伝えよう
親がしっかり冷静に戻れたら、自分の気持ちを子どもに伝えてみましょう。
目的は●気持ちを伝えること、●次回策を相談すること。
無理に謝る必要はありません。
例えばこんな風に:
*お部屋で大声を出して騒ぐのをやめて欲しかったから怒鳴っちゃったんだよ。でも、びっくりさせてごめんね。どうしたらお部屋で静かに遊べると思う?
*朝は忙しいから自分で着替えて欲しかったんだよね。でも、朝は眠いからすぐにはエンジンかからないよね。どうしたら自分でできるかな?
ここで子どもと次回策について話し合うのは、子どもに主体的に考えてもらったり、大人を助けてもらうためです。
くれぐれも「ここでした約束が守られる」ことに期待しすぎないように(期待しすぎると更なる怒りや爆発を生む悲劇が生じます。)
約束、ではなく、子どもの好意や意欲を引き出す仕掛けに過ぎないと理解してくださいね。
③普段通りの生活を取り戻そう
人間だから感情的になってしまう失敗はあります。
そんなときはクールダウンをしたり、気持ちを伝えあったりすればよいこと、いつもの生活がちゃんと戻ってくることを、子どもに理解・体験してもらうことはとても大切です。
いつも通りの生活、というのは、子どもにとって安心と安全の基盤です。親に叱られて悲しかったり、友だちと喧嘩してイライラしたり、自信をなくす出来事があったりしても、いつも通りの生活をしているだけで多くのことは修復・回復できます。
ただの、いつも通りの生活をすること、というのは、実は人間にとって何よりの癒しになるのです。
それを支えているのが親であるあなたです。
誇りを持って、大切にしてくださるといいなぁ。
子どもを感情的に怒らないようにするためには
今度は予防策について考えてみましょう。
何度言ってもできない・いうことをきけないとき
まず、考えてみたいのは、親のメッセージが子どもにちゃんと伝わっているかどうか?です。
就学前〜小学校低学年ごろに特に多いのですが、言葉ではコミュニケーションできていても、子どもが親の言っていることを本当に理解できていないことがよくあります。
例えば「早くして」という言葉。
就学前の子どもでも「早く」という言葉の意味は分かっています。
でも、親が「早くして」でイメージしていること(例えば、遊んでいないで着替えて食べて、支度をしてほしい、そうしないと遅刻する、遅刻したら困る)はイメージできません。
そこでコミュニケーションギャップが生じ、どちらも悪くはないけど、双方が困る事態に陥るのです。
ですからまずは、親側が子どもにわかりやすく伝える工夫がいります。
■さっさとして → やってほしいことを、ひとつずつ伝える
■ちゃんとして・いい加減にして → シャツをズボンに入れて、黙って前を向いて話を聞いて、のように、やってほしい行動を伝える
■やることを先にやって → 宿題したらおやつにしよう、時間割をそろえてからゲームしよう
小学校高学年以上になると、親の言わんとしていることは理解できているがやれない・やらない、ということが生じてくることがあります。
親の言っていることの方が正しい、あるいはうまくいくとわかっているとついつい強く言いたくなる気持ちはわかります。でも、子どもにとっては、自分で考えてやってみる(失敗したとしても)ことが何より大事な時期なのです。必要な成長過程ですから、おおらかに見守れるといいですね。
いつも失敗するパターンがある?
例えば朝夕の、親は忙しく、子どもは眠かったり疲れていたりでコンディションが悪い時に衝突しやすい、というような魔の時間や、いつもこのパターンで感情的になってしまう、ということはありませんか?
一度、ゆっくりふりかえってみてください。そして、未然防止のためにできることはないか、検討してみましょう。
自分のこだわりが失敗確率を高めていると気づいたら、柔軟な対応策を考えましょう。
例えば、夕飯前の空腹時は親子ともにイライラしやすいのはわかっているが夕飯前に間食させたくない。何かひと口食べることで衝突が回避できるなら、やってみてもよいですよね。
自分のことは自分でやれる子に育ってほしいと願っていたとしても、その願いが親子の衝突を招いているなら、今は親が手伝う時期と割り切ることも有効です。(少しばかり親が手伝ったくらいで、自立が阻害されることは絶対にありませんからご安心を!)
親の不安が感情的にさせているとき
子どもの成長に不安なことがありますか?(例:成長がゆっくりなのでは?なんでできないの?)
あるいは、ご自分の子育てに不安がありますか?(例:子育てに向いていないと感じる。子どもがかわいいと感じられない。)
子どもに対して、子育てに対して不安を感じていると、日頃のなんでもない時にも不安を抑えるために我慢しているため、怒りの着火点が低くなってしまいます。ですから、不安なことがある時には、まず不安を解消することがとても大切です。
安心・信頼して不安を話せる人はいませんか?
不安な気持ちを否定しないで聴いてくれる人がいいと思います。
また、不安に思っている点を専門家に相談してみることもお勧めです。心配しないで済むとわかれば、ひとりで不安を抱える必要がなくなります。
親の不満を子どもにぶつけてしまうとき
夫が子育てを手伝ってくれない。ワンオペで疲弊している。仕事が忙しかったり、人間関係に悩んでいる。
心身ともにいっぱいいっぱいの時間が長く続き、誰からも助けが得られない時、その怒りが子どもに向いてしまうことがあります。
もし「子どもを怒ることでストレス解消してしまっている」と感じたら、どうぞひとりで抱え込まないで手助けしてくれる人を見つけてほしいと思います。
子どもを預かってくれる場所はありませんか?
あなたを責めることなく、話を聴いてくれる人はいませんか?
子どもにぶつけるのではなく、自分を責めるのでもない方法を探してみてください。
専門家の助けを借りる
子どもに対して感情的に怒ってしまう、ヒステリックになってしまう。自分で何とかしようとリサーチしたり試してみたりするけど、うまくいかない時。そんなときは、子育て支援をしている専門家の助けを借りることも一つの解決方法です。
地域の「保健所・保健センター」「子育て支援センター」「教育相談センター」、学校の「スクールカウンセラー」は無料で相談することができます。
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参考文献
伊藤徳馬「どならない子育て」ディスカバー・トゥエンティワン
河合隼雄「過保護なくして親離れはない」出版芸術社・五月書房
田中茂樹「去られるためにそこにいる」日本評論社
水島広子「怒らないですむ子育て:そのイライラは手放せます」小学館