「親に愛されなかった」愛情不足・愛着障害・機能不全家族から回復する方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
「親に愛されなかった」と感じて苦しむ人は少なくありません。
なぜ、親はあなたを愛せなかったのか?
親に愛されなかったことで生じる影響にはどんなものがあり、それらとどのように折り合いをつけることができるのか?ということについてお話したいと思います。
子どもを愛せない親
なぜ自分の子どもを愛することができなかったのでしょう?
親側の事情について検討したいと思います。
親自身が親に愛されなかったから
人間は、自分がしてもらったことを人にもする傾向があります。
子どもを愛せない親は、親自身がその親から愛してもらえなかった可能性があります。
親から温かい愛情をかけて育ててもらえなかったために、子どもを愛するということがどういうことか、どうすればよいのかわからないのです。「負の連鎖」とよばれます。
ただ、親から愛情をかけてもらえなかったら必ず子どものことも愛せない、というわけではありません。虐待など残念な生育歴でありながら、愛情深い子育てをする親もたくさんおられます。
子どもに愛着を持つチャンスが失われてしまったから(愛着の障害)
親が子どもを愛するためには、子どもとの間に情緒的な交流を持つことが不可欠です。
親が世話をしなければ1日たりとも生きられない赤ちゃんのお世話をすることを通じて、親側に子どもへの強い愛情(愛着)が育ちます。
けれど、何らかの理由で子どもの世話をすることが叶わない・子どもとの情緒的な交流ができなかった時に、親が子どもに対して愛着を持つことができなくなってしまうことがあります。
このように親から子どもへの愛着が希薄なままの子育てが続くと、子どもも親との愛着形成ができない、ということが生じてしまいます。
親が子どもの世話をする機会を持てない、というのは、親にとっても残念なことで、子育ての自信を失くしてしまったり、自分には子育ては無理と諦めてしまったりしていることがあります。
最初につまづきがあっても、理解や手助けがあればやり直すことはできるので、諦めないでくださるといいのですが。
夫婦間不和、経済的困難など、養育環境の問題があった(機能不全家族)
夫婦間で暴力や心的虐待、ネグレクトがある場合があります。
夫婦間でつねにケンカが絶えない、信頼関係がつくれないこともあります。
このような場合は、子どもに対して適切な子育てや愛情を与えることが困難になってしまうことが生じます。
夫婦不和の中で育つ子どもは、愛情をもらえないだけでなく、その環境が「心的虐待」になることも少なくありません。
また、子育て・家庭生活を送るのに必要な収入が得られない場合や、長時間労働、不安定な就労などの理由から、安心して子育てができない場合も、親が適切な子育てが困難になります。
親になるこころの成熟度が足りなかったから
親になる、ということは、さまざまな責任を負う、ということです。
さまざまな事情から、親になる覚悟を持てぬまま親業を始める場合があります。
それでも多くの場合は、子どもを育てる過程で、少しずつ自覚や責任を持てるようになっていきます。「親」という立場が親を育てるのですよね。
それでも親の自覚が持てない、役割が果たせないという場合があります。
例えば、子どもに対して自分の感情をぶつけてしまうのを「子どものせい」「しつけ」と正当化してしまう。
子どもを保護する責任を、子どもを自分の自由にできることにすり替えてしまう。
周りが気づいて親を支援できるとよいのですが、それが叶わない場合は、子どもが親の役割を果たさずを得ない、ということも生じます。
価値観の偏り
子どもとの愛着形成もあり、責任を持って子育てをしている。愛情もかけている。けれども、その愛情に偏りがある場合、親子間で歪みが生じることがあります。
「条件付きの愛情」がその代表格です。
「よい子」「成績が優秀」「一芸に秀でる」「親の夢や願いを叶える」など、親が願った通りの生き方や成果を出さなければがっかりされたり叱られたりする。(教育虐待、ともいいます)
そのような偏りがある場合、親は子どもに十分な愛情を注いでいるつもりでも、子ども側は自己肯定感や自尊心を持てない、自信がない、など、生きる喜びを感じられない・生きるのがつらいと感じてしまいます。
偏りのある価値観、ここでいうと親の理想の体現を求める気持ち、は親であれば誰もが一度は持つものであるともいえるかもしれません。けれど、多くは理想よりも現実の子どもを優先して受け入れていきます。
理想をかたくなに子どもに押し付け続けてしまう場合は、そうしないではいられない親側の強いこだわり(コンプレックス)が介在すると思います。
親に愛されずに育ってしまったときに生じること
このように、親からの健康な愛情を得られないままに育った場合は、わたしたちにどのような影響が出るのでしょうか。
安心感・信頼感の欠如
親から十分に愛してもらうことで私たちが獲得する最も大切な感覚は「安心感」と「信頼感」です。
自分には安心して過ごせる居場所があると感じられること。
自分が生きている社会・周りの人々は信頼できる、と感じられること。
「そんなの当たり前じゃない?」と感じる人は基本的な安心感・信頼感を持てている人です。
安心感・信頼感は、自分が無力な子どもである時に、無償で愛し、世話してもらう体験を通じて獲得します。
基本的な安心感・信頼感があるから、家や学校で自分らしくふるまい、好きなことに集中できる、お友だちと楽しく遊ぶことができるのです。
逆に基本的な安心感・信頼感がない場合は、家でも学校でも常に緊張・警戒していなければならないため、生活を楽しむ、成長するということが阻害されてしまうことになります。
自分に自信が持てない・自己肯定感・自己有用感の欠如
親に丸ごと愛してもらう体験がないと、自分に自信を持つことが難しくなります。
乳幼児は親の献身的なお世話なしには1日たりとも生きてはいけません。
お腹が空けば泣き、オムツが濡れれば泣き、寂しければ泣き・・・このようなときに、無条件に抱き上げてお世話をしてもらう、愛情をかけてもらうことを通じて、わたしたちは「ありのままの自分でも愛される」ということを体得していきます。
親は、子どもが何かできるようになれば喜び、失敗が続くときには教えたり励ましたりして、無事に成長することを願って見守り続けます。この変わらぬ見守りがあるからこそ、子どもは「ありのままの自分でいい」(自己肯定感)、「自分は必要とされている」(自己有用感)、「自分にはできる」(自信)を持てるようになっていくのです。
被害感・罪悪感・悲観的
本来ならば誰もが等しく得られる(べき)はずの親からの愛情を得られなかったとき、「なぜ自分は愛してもらえなかったのだろう?」(被害感)や「親が愛してくれなかったのは自分に悪いところがあったからなのではないか?」(罪悪感)を持ってしまうことが生じるのは仕方のないことだといえます。
また、「どうせ何事もうまくいかないのではないか」のように悲観的になってしまうこともあるでしょう。
「親から愛されなかった」けれども自分らしく生きるためにどうすればよいのか?
①「自分のせいではない」と理解すること
「なぜ子どもを愛せないのか?」のところでお話したように、親が子どもを愛せないのは親側の事情によるもので、かつ親も適切な支援が得られないで孤立している場合です。
子どもは「自分のせい」だと感じてしまいがちですが、子どものせいではありません。
まずは、このことをしっかり理解することが大切です。
②親をゆるさなければいけないわけではない
「親側にも事情があったのなら、親のせいはない。だから、親を責めてはいけない(ゆるしてあげないといけない)と思う方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、親側に事情があったからといって、子ども側が親をゆるさなければいけない、というわけではありません。
③親との距離感について
多くの場合、一度、親と距離をとって冷静に考える時間と場所を持つことは大切です。
その上で、どのような距離感で生きるのがよいか、納得のいく距離感をご自分で決めていけるとよいです。
④自分をねぎらう
親から愛されなかったことは、生きる上で大きなハンディキャップだったはずです。
でも、親に愛されなかったことであなたの価値が減るわけではないですね。
これまでのがんばりをねぎらい、自分に自信と誇りを持ってください。
自分を愛してください。
いま、そうできなくても、そうしていくことはできるのですよ。
⑤信頼できる人との関係
親子間の関係性の欠如は、別の、信頼できる関係性で補えるとよいです。
もしかすると、育ってくる過程で、そのような出会いがあったかもしれません。
お友だちや先生、地域や習い事で出会う大人など。あなたのことを丸ごと受け入れて、応援してくれたり心配してくれた人はいましたか?
今は離れてしまっていたとしても、信頼できる人とのできごとを思い返してみてください。
こころの中に、ほのかに明かりが灯る感じがしませんか?
もちろん、今の人間関係の中に、これから出会う人のなかに、信頼できる人を見つけていくことも大切です。
友だちや恋人(伴侶、パートナー)、職場や趣味の場所などにも、そのような出会いがあります。
「親に愛されなかった」苦しみにカウンセリングができること
「親に愛されなかった」のはなぜか、どのように回復していけるのかについてお話しました。
自己理解を通じて、ご自分で整理したり、信頼できる人との関係性を通じて自分らしい人生を構築していけるとよいです。
ただ、このような場合はカウンセリングが有効です。
「誰を信頼すればよいかわからない」と感じる時
幼少期から、社会に対して、他者に対して安心してゆだねる、つながる経験がない場合は、誰を信じたらよいのか、どうつながればよいのかがわからないことがあります。
このような場合は、カウンセラーとの関係性を通じて、他者を信頼する力を育んでいくことができます。
頭ではわかっていても自分が変えられない時
この記事でお話しした内容は、もう十分わかっているし、そうしているつもり。
でも、苦しみが減らないし、いつも被害的に感じてしまったり、逆に「自分が悪い」と感じてしまうことが(よく)あります。
これまでずっと、ご自分なりの方法で自分を守ってきたのです。
理屈を理解しただけでは心身に織り込まれた考え方や感じ方、生き方を変えるのは難しい。
このような時には、親子関係や人間の発達成長に関する専門知識を持ったカウンセラーと一緒に、無意識に刷り込まれている感覚・感情を整理することが肝要です。
親に対して負の感情を抱いてはいけない、と自分を責めてしまうとき
親子関係をふりかえる時に、親に対して負の感情を抱くこと自体を「してはいけない」「感謝の気持ちを持たなければ」と強く感じてしまい、向き合うことが難しい場合があります。
専門知識を持つ信頼できるカウンセラーとの関係性の中で、少しずつ、強い否定感情、恐怖や不安を収めていくことが大事な最初の一歩です。
はこにわサロンでは、対面の他にオンライン・お電話でのカウンセリングを受付ています。