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逆境の小児期体験がもたらす影響とその克服方法

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

日本人の3人にひとりが当てはまると言われている逆境的小児期体験をご存じでしょうか。

 

この記事では、逆境的小児期体験とは何か、その影響について、いま逆境を生きる子どもに向けて、また、逆境体験を持って大人になった方に向けて、対応方法、ケアの方法を詳しくお話ししていきます。

 

逆境の小児期体験がもたらす影響とその克服方法

子ども時代は、人の成長においてとても大切な時期です。この時期に経験することが、その後の人生に大きな影響を与えます。

 

ですから、子どもたちが安心安全な環境で育つことが必要ですが、すべての子どもが恵まれた環境で育つわけではありません。家庭内の問題、経済的困難、虐待やいじめなど、さまざまな逆境を経験する子どもたちがいます。

 

このような困難な環境で子どもが育つことを『逆境小児期体験(Adverse Childhood Experiences, ACEs)』といいます。

 

逆境的小児期体験とは

逆境的小児期体験とは、子どもが成長する過程で経験する重大なストレスや困難を指します。

以下がチェックリストです。

18歳になるまでに以下の体験をしましたか?

① 心理的虐待

② 身体的虐待

③ 性的虐待

④ 身体的ネグレクト

⑤ 情緒的(心理的)ネグレクト

⑥ 家族の離別

⑦ 家庭内暴力の目撃(DV)

⑧ 家族の物質乱用(アルコール・薬物)

⑨ 家族の精神疾患

⑩ 家族の収監

 

18歳までに1つ以上の逆境体験がある人は、日本では32%(アメリカでは64%)にのぼります。

 

逆境体験の数が多いほど、成人後の健康リスクが高まります。

 

逆境がもたらす影響

逆境的小児期体験は、短期的および長期的に子どもの健康や行動、感情に影響を与えることがわかっています。

 

心理的な影響

逆境を経験した子どもは、不安が高く、消極的、回避的になりやすいです。

 

思春期に入ると、自傷行為、摂食障害、不安障害などの困難が生じることがあります。

 

影響は大人になるまで持ち越されることが多く、抑うつ、複雑性PTSD、社会不安障害、解離性障害、依存症などにつながることもあります。

 

情緒への影響

逆境体験のある子どもは、喜怒哀楽を感じたり表現することが不得意です。

 

感情を切り離して解離してしまったり、溜め込んで爆発させるなど、感情コントロール、アンガーマネジメントが苦手です。それが、対人関係に望ましくない影響を与えることもあります。

 

身体への影響

ストレスが長期間続くと、身体の健康にも影響を与えることがわかっています。慢性的なストレスは、免疫機能の低下や炎症反応の増加を引き起こし、心臓病、糖尿病、肥満などのリスクを高めることが知られています。

 

行動への影響

逆境体験が、子どもの問題行動となって表れることもよくあります。例えば、他の子へのいじめ、暴言、暴力が生じたり、薬物乱用、非行につながることもあります。

 

これらの行動は、社会との関係を悪化させるだけでなく、自分や他人に対して危険をもたらすこともあります。

 

逆境を生きる子どもへの支援

逆境小児期体験が与える影響は深刻ですが、適切なサポートと環境があれば、子どもたちは逆境を乗り越えて、健康な成長を取り戻すことができます。

 

家族支援

子どもの逆境を改善するには、親へのサポートを行うことが重要です。というのは、親自身が逆境体験者で子育ての方法がわからず孤立していたり、家庭内暴力などの問題を抱えている、経済的な困難があるなど、支援が必要なことがあるからです。

親が適切な子育てについて知ることや、必要なサポートを受けることで、家庭環境が好転することがよくあります。

 

専門的なサポートの活用

逆境を経験した子どもには、臨床心理士・公認心理師による支援、子ども家庭支援センターや児童相談所などの専門機関、医療機関の支援が有効です。

 

特に、インフォームド・トラウマケア(TIC)の考えに基づき、子どもの身体、心理、情緒の安全性を大切にした支援をすることが大切です。

 

子どものトラウマを理解して、自尊心や自己効力感の回復、健全な日常生活の回復、トラウマを癒す手助けをします。

 

教育やコミュニティの支援

学校や地域社会も、逆境を経験する子どもの支援に重要な役割を果たします。

 

まず、学校は、子どもにとって重要な日常生活の場であるので、子どもが学校を楽しいと感じられること、居場所があることが必要です。子どもの逆境環境・体験を理解して温かく関われるよう、先生やスクールカウンセラー、学校全体での見守りがあることが望ましいです。

 

また、学童や地域センター、支援グループ、ボランティアなどによる子どもの居場所づくり、ピアサポートなども、子どもがこころの傷を癒やし、健康を回復するための貴重な資源となります。

 

レジリエンスの獲得

レジリエンスとは、こころの回復力を指し、逆境から立ち直っていく時に重要な役割を果たします。

 

特に、子どもがストレスに対処するセルフケアを学ぶことが助けになります。身近な大人が教える、一緒に行うことで、子どもが自分なりのセルフケアの方法を身につけることができます。

 

信頼できる人間関係を持つ

仲のよい友だちがいることや、周りに信頼できる大人がいることが、子どもに大人信頼感や社会への信頼感を育みます。

 

子どもが好きなこと、例えばスポーツや趣味の活動を通じて、子どもが自分らしさを発揮できる場所を作ることも重要です。

 

逆境体験のある大人への支援

逆境体験を持って成人した方にはどのようなサポートが必要でしょうか。

 

複雑性PTSDの理解とケア

子どもの頃に逆境体験があると、複雑性PTSDが生じることが多くあります。

 

複雑性PTSDとは、慢性的な傷付きを指します。一度の大きなトラウマ体験(例えば事故や自然災害など)と比べても、重篤になりやすく、ケアが難しいと言われています。

 

複雑性PTSDについて知ることで、これまでに、また現在も生じている不適応、生きづらさ、不全感、心身の病が自分のせいではないと理解することが大切です。

 

自律神経を整える

逆境体験があると、リラックスすることが難しく、常に警戒・緊張しています。

 

そのため、自律神経の乱れが生じ、動悸や息切れ、めまい、頭痛、倦怠感、不眠、食欲不振、冷えやほてり、便秘や下痢を引き起こすと言われます。

 

生活習慣を見直し、バランスの取れた食事や適度な運動が効果的です。

 

回避や解離からの回復

逆境体験があると、人や物事に対して避けがちになったり、ひきこもりがちになったりすることがあります。

 

また、いつも感覚や感情を切り離してしまうということが起こりやすくなります。重症の場合は、記憶がなくなる、複数の人格が表れることもあります。

 

思い当たる場合は、医療機関や心理の専門機関に相談することが望ましいです。

 

情動調節不全からの回復

逆境体験によって、感情コントロールが難しくなることがあります。

 

具体的には、喜怒哀楽が感じられなかったり、普段は我慢しているのに、我慢が爆発すると強い怒りとして人にぶつけてしまい、後悔しても変えられない、アンガーマネジメントの6秒ルールが効かない、いつもイライラしている、などがあります。

 

一般的なアンガーマネジメントでのコントロールは困難で、専門のカウンセリングが必要です。

 

こころの病気の治療

逆境体験によって、抑うつ、不安障害、パニック障害、依存症、摂食障害など、さまざまな精神疾患が生じます。

 

まずは、精神科・心療内科を受診して、適切な医療ケアを受けることが必要です。

 

治療が長引く、服薬しても効果がない時は、主治医と相談して、カウンセリングを並行することも有効です。

 

対人関係を作る

子どもの頃の逆境体験は、対人信頼、社会への信頼に大きな影響を与えます。そのため、対人関係全般が苦手だったり、親密な関係が苦手、子育てに困難が生じることもあります。

 

自分のせいではなく、逆境体験の影響であることを理解して、安心感、信頼感の持てる対人関係を作る必要があります。

信頼できる友だちが糸口になることもありますし、同じ体験をした人と繋がること、カウンセリングも助けになります。

 

レジリエンスの獲得とセルフケア

困難に直面した時に、適度にストレスを発散しながら、やわらかな態度で応じることや、その間、必要なセルフケアを行えることは、誰にとっても必要なことですが、逆境体験のある人にとってはより一層、大切です。

 

逆境体験のある人が困難な状況に置かれた時のつらさは、逆境体験のない人に比べて格段に重いため、自暴自棄になって生活が荒れてしまったり、人や社会に対する不信感が募って孤立してしまうことが起きやすいです。

 

そうなりやすいことを知り、「自分の責任」「恥ずかしい」「誰も信頼できない」などと思いつめてしまわずに、助けを求めてください。

 

逆境的小児期体験にカウンセリングができること

子どもの頃の逆境体験がある人に対してカウンセリングができること。

 

それは、何よりまず、子どもの頃に逆境体験を持つことが、人間にとってどれほど過酷なことであるか、どのような影響があるのかについて理解していただくための知識・情報をお伝えすることです。

 

子どもの頃にどのようなことがあったのか。それが、なぜ、どのように、心身や、友だち関係や、学校生活などに影響したのか。ふりかえり、整理、理解していきます。

 

その過程で、凍らせてきた恐怖や孤独、怒りや悲しみを少しずつ回復させていきます。

 

自尊心や、自己肯定感(ダメな自分も肯定できること)、自己効力感(自分にはきっとできると思えること)を取り戻します。

 

もともと持っていた性格・長所を回復します。

 

合わせて、日常生活や社会生活の見直しと再構築をしていきます。

 

はこにわサロン東京では、臨床心理士・公認心理師資格を持つ女性カウンセラーが、逆境的小児期体験、複雑性PTSDのカウンセリングを行なっています。

 

ご予約はこちらから

 

はこにわサロンについては詳しく知りたい方はこちらをどうぞ

 

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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