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「雑談が苦手」は性格じゃない?複雑性トラウマとの関係と5つの対処法

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

「雑談が苦手」
「何を話せばいいかわからず頭が真っ白になってしまう」
「話したら話したで、後で反省会が止まらない」

 

複雑性トラウマの方は雑談が苦手だと訴えることが多いです。

 

この記事では、なぜ、複雑性トラウマの方は「雑談がつらい」と感じるのか?どう対処すれば良いかについて、考えてみたいと思います。

 

複雑性トラウマ(C-PTSD)とは、長期間、家庭や学校、職場などの人間関係の中で傷つく経験が続いた結果、人と関わる場面で強い不安や緊張が出やすくなる状態のことです。雑談が怖い、相手の顔色が気になるといった困りごとも起こりやすくなります。詳しくはこちら

 

雑談とは何か?

雑談とは、お猿で言えば毛繕いのような、お互いの安心と信頼を確かめ合うためのやり取りです。天気の話やちょっとした近況など、内容そのものに大きな意味はなくてもよく、声の調子や表情、会話のリズムを通して「敵ではない」「仲間だよ」という安全のサインを交換しています。つまり、“こころの握手”のようなコミュニケーションです。

 

雑談にはもう一つ、人間関係の水面下の調整をする場という側面があります。公式な場では出てこない本音、立場、空気感、暗黙の了解などが、何気ない会話の中でそっと共有されます。「この人はどういう考えか」「どこまで踏み込んでいいか」といった距離感もここで測られます。つまり雑談は、表に出ない情報や関係性の温度を確かめ、安心して協力できるベースをつくる場でもあります。

複雑性トラウマ(C-PTSD)の方が雑談が苦手な理由は大きく3つ

C-PTSDの方が雑談が苦手な理由は大きく3つあります。1つ目は、C-PTSDの方は、そもそも、安心して人と繋がる心地よさ、楽しさを知らないから。2つ目は、雑談場面での辛い体験があったから。そして、3つ目は雑談の場がトラウマ再演の場になるからです。それぞれ、詳しく説明していきます。

 

つながる心地よさを知らないから

人は、安心できる誰かとの関係の中で、「人とつながることは心地よい」という感覚を身につけます。たとえば、赤ちゃんが泣いたら抱き上げてもらえる体験に始まって、怖いときや困ったときに、温かい眼差しで「大丈夫だよ」と言ってもらう体験を繰り返して、「失敗しても大丈夫」という自己肯定感や楽観性、「相手を信頼しても良い」という社会的信頼感を獲得します。

 

でも、親に子どもをサポートする力がなかったり、親の顔色をうかがわなければならなかったりすると、「つながると安心」という感覚が得られません。

 

すると、「雑談でつながると心地よい」という感覚もわからないし、うまく想像もできないため、不安や緊張で固まってしまったり、疲れるほど頑張ってしまいやすくなります。

雑談で辛い体験をしてきたから

雑談は本来、リラックスして交流する場ですが、ときにそれが悪用されてしまい、悪口や陰口、仲間はずれが起きたり、意図せず距離を詰められて困ってしまうことなどがあります。

 

「嫌だ」と思ったり、違和感を感じたときには、相手にそう伝えたり、距離をとって防いだり、信頼できる誰かに話して気持ちを整理するといった対応が大切です。そうすることで、健全な雑談と不健全な雑談の見分けがつくようになりますし、傷つくことがあっても、ちゃんとケアして回復することができます。

 

けれども、複雑性トラウマの方は、「嫌だ」と思っても「相手に悪い」と我慢し続けたり、安心して相談できず、「自分のせい」だと自責しやすいです。その結果、雑談で嫌な思いをすることが多くなってしまい、苦手意識が強まります。

 

逆に、孤独を癒すために、傷つけられてもなお、相手に近づいてしまう複雑性トラウマの方もおられます。

 

残念な雑談体験は誰にでも起こりますが、複雑性トラウマの方は、その影響を強く受けてしまいやすいと言えます。

③トラウマの再演

複雑性トラウマの方は、対人関係のトラウマを多数抱えているため、雑談の場面で、怖かった体験を思い出しやすいです。

 

例えば、親の顔色を心配して育った方は、相手の表情や声の調子、ちょっとした沈黙が気になり、「機嫌を損ねていないか」「嫌われていないか」と不安になりやすいのです。

 

また、学校や職場で仲間外れにされた経験があると、雑談に入っていくのが怖くなったり、みんなの笑い声が「自分のことを笑っているのでは?」と被害的に誤解しやすくなったりします。

 

「過去と今は違う」と頭ではわかっていても、身体が怖かったときのことを記憶していて、不安や緊張を通じて「危険だよ」とサインを送ってくるのです。すると、楽しいはずの雑談が不安と恐怖に耐える場所にすり替わります。それだけでも辛いですが、「場面が違ってもうまく振る舞えないのは、やっぱり自分に何か悪いところがあるからだ」のように考えて恥や罪悪感が湧いてしまうこともあります。

複雑性トラウマ(C-PTSD)の方の雑談対処法は?

このように雑談に対して不安や緊張を感じやすい複雑性トラウマの方は、どのように雑談に対処すれば良いのでしょうか。5つの対処法をご紹介します。

 

①雑談が苦手なのは「自分のせいではない」と知ること

まず大切なのは、「雑談が苦手なのは自分の性格のせいではない」と知ることです。複雑性トラウマの方は、これまでの対人関係の中で多くの緊張や不安を経験してきています。そのため、雑談で緊張したり、苦手だと感じるのは当たり前です。

 

ですから「これは防衛反応で、欠点ではない」と理解してください。自分を責めるのではなく、「今までよく頑張って生きてきたからこその反応なんだ」と受け止め直すことが、回復の最初の一歩です。

「仲良くならなきゃ」と思わなくていい

雑談というと、「面白いことを言って場を盛り上げなければならない」「感じの良い人だと思われなければいけない」と思ってしまうもしれません。でも、雑談は、何かを達成するための会話ではなく、「同じ場に安心していられるか」を確かめ合う時間です。

ですから、無理に仲良くならなくても構いません。気の利いたことを言えなくても、その場にいて、相手の話を聞き、うなずいたり笑顔を返したりするだけで十分に雑談は成立しています。

信頼の回復

複雑性トラウマの回復では、「人を信じる感覚」を少しずつ取り戻していくことが大切です。

 

ただし、いきなり人との関係でそれを取り戻そうとすると負担が大きすぎることがあります。まずは動植物や自然など、安心できる対象と関わるところから始めても良いでしょう。生き物の世話をしたり、季節の変化を感じたりする体験は、「穏やかなつながり」を思い出す助けになります。

また、人との関係でも、遠い距離のつながりから始めることができます。例えば、過去に安心して話せた人のことを思い出したり、本や映画の中で温かい関係を見たりすることも、信頼の感覚を取り戻す手助けになります。

映画では、少し古い作品ですが『ニュー・シネマ・パラダイス』『イル・ポスティーノ』『マカロニ』などは、人と人との温かい関係が描かれていて、静かに心をほぐしてくれる作品です。物語を通して、「人との関係には温かい形もある」という感覚を少しずつ取り戻していくことができます。

安心できる場を見つける

雑談が苦手な人に大切なのは、「どんな場に身を置くか」です。あなたをからかったり、無理に話させようとしたり、沈黙を笑う人がいたら、それは安全な場とは言えません。

 

安心できる場では、話す量やテンポに違いがあっても、それを自然なものとして受け入れてくれます。話す人もいれば、静かに聞いている人もいて、それぞれのペースが尊重されています。

そうした場を見極めるコツは、「会話のあとに残る自分の感覚」に目を向けてみることです。話したあとにどっと疲れたり、恥ずかしさや自己嫌悪が強く残る場合、その場はあなたの神経にとってあまり安全ではない可能性があります。反対に、あまり話していなくても、なんとなくほっとしたり、落ち着いていられたと感じる場所は、あなたに合っている場かもしれません。

 

ただし、複雑性トラウマの方は、健全で温かい場であっても緊張したり疲れたりすることがあります。そのため、「自分の感覚を感じ取ること」自体が難しい場合も少なくありません。最初はよくわからない、ということも多いでしょう。

 

それでも、不安や戸惑いがあっても、変わらない態度で受け入れてくれる場所は、必ず存在します。少しずつ「ここなら大丈夫かな?」という場を、実験するような気持ちで探してみてください。

 

聞き手にまわる、または、持ちネタを準備する

雑談では「話すこと」が重視されがちですが、聞くこともとても大切です。まずは、聞き手に徹して、話し手たちを観察してみましょう。

安心が確認できると、いつの間にか会話に加われていることが多いです。

 

もし聞き手が苦手・緊張する場合は、「持ちネタ」を準備しておくのも一つの方法です。スポーツ、食べ物、動物、好きなドラマや映画など、聞かれたら少し話せるテーマをひとつ持っておくと安心できます。雑談は安心を確かめるための会話なので、毎回新しい話題を用意する必要はありません。同じ話題でも、安心できる関係の中では十分に楽しめます。

雑談が苦手〜複雑性トラウマ〜まとめ

みんなが楽しそうに雑談しているのを見ると、不安や緊張を感じたり、「自分だけうまくできない」と羨ましさや自己否定の気持ちが湧いてしまうことがあります。

 

けれども、複雑性トラウマ(対人関係の中で繰り返し傷つく経験をしてきた方)が雑談を苦手とするのは、決して性格の問題ではありません。人とつながる心地よさを十分に経験できなかったことや、雑談の場で傷ついた体験があること、さらに雑談の場面が過去のつらい対人関係を思い出させる「再演」になりやすいことなど、いくつもの理由が重なって起きています。

 

雑談は、本来、互いの信頼や安心を確かめ合うためのやり取りですから、無理に上手く話す必要はありません。安心できる場を見つけて、「一緒にいても大丈夫」と感じる体験を重ねることが大切です。

 

ご自分のペースで、ご自分の雑談スタイルを見つけていけますように。

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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