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その自己否定は、あなたの考え? セルフスティグマという見えない呪縛

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

「人に頼るのは甘えだ」「仕事ができない人間には価値がない」「頑張れないのは弱いから」。そんなふうに、自分を責めてしまうことはありませんか。

私たちは、家庭や学校、職場などで、さまざまな価値観を身につけていきます。それ自体は自然なことですが、その中には、偏見や決めつけも含まれています。そして、知らず知らずのうちに、そうした偏見を自分自身に向けてしまうことがあります。これをセルフスティグマといいます。

特に、機能不全家族で育った人や、複雑性PTSDの人は、他者からの否定的な評価を取り込み、自分を責めることが習慣になっている場合があります。

今回は、セルフスティグマとは何か、なぜ生じるのか、そして、どうすれば手放していけるのかについてお話しします。

 

セルフスティグマとは何か

「スティグマ」とは、ある特徴や立場にある人に対する、社会的な偏見や否定的なレッテルのことです。

例えば、「精神疾患になるのは心が弱い人だ」「失業するのは努力が足りないからだ」「子どもが不登校になるのは親の育て方が悪いからだ」といった考え方です。もちろん、どれも根拠のない決めつけですが、社会にはこうした偏見が存在しています。

そして、自分がその立場になったとき、社会の偏見を自分にも当てはめてしまうことがあります。これがセルフスティグマです。

例えば、「人に迷惑をかけてはいけない」と考えてきた人が、心身の不調で仕事を休まなければならなくなったとします。本来、体調が悪ければ休むことは必要なことです。ところが、「仕事を休むなんて周囲に迷惑をかける。自分はダメな人間だ」と、自分を責めてしまうのです。

あるいは、「親は大切にしなければならない」という価値観が強い人が、虐待や過干渉をしてきた親と距離を置こうとしたとき、「親を大切にできない自分は冷たい人間だ」と罪悪感を抱いてしまうこともあります。

このように、セルフスティグマは、単に自分に自信がないこととは違います。社会や周囲にある偏見や否定的な価値観を自分自身に当てはめ、自分を否定してしまうことなのです。

 

セルフスティグマはなぜ生じるのか

では、なぜ私たちは、社会の偏見を自分自身に向けてしまうのでしょうか。

セルフスティグマの研究では、社会の偏見が自分自身に取り込まれていく過程が説明されています。

例えば、まず「精神疾患のある人は心が弱いと思われている」という社会の偏見を知ります。

次に、「確かに、心を病むのは弱い人なのかもしれない」と、その考え方に同意するようになります。そして、自分自身が精神疾患になったとき、「自分も弱い人間なのだ」と考えてしまうのです。

その結果、自分に対する評価が低くなり、「自分には価値がない」「どうせ何をしてもうまくいかない」と感じるようになることがあります。

ここで大切なのは、社会に偏見があることを知っているだけでは、セルフスティグマにはならないということです。

例えば、「女性は家庭を守るべきだ」という価値観が社会にあることを知っていても、自分がそう思っていなければ、仕事をする自分を責める必要はありません。しかし、自分でもその価値観が正しいと思っていると、仕事を優先したときに「母親失格だ」と感じてしまうことがあります。

こうした価値観は、家庭や学校、職場、メディアなど、さまざまな場所で身につけていきます。

特に子どもは、大人の言葉や価値観を疑ったり、批判的に考えたりする力がまだ十分に育っていません。そのため、親から「泣くのは弱い人間だ」「人に頼るな」「親に逆らう子は悪い子だ」と繰り返し言われると、それを当たり前のこととして受け入れやすくなります。

そして、大人になってからも、悲しいときに泣けない、人に助けを求められない、親に怒りを感じる自分を責める、といった形で影響が残ることがあります。

つまり、子どもの頃に身につけた価値観が、大人になってからも自分を縛り続けてしまうことがあるのです。

 

セルフスティグマは複雑性トラウマの「否定的自己概念」とはどう違う?

ここで、複雑性PTSDの特徴の一つである「否定的自己概念」との違いについても考えてみましょう。

否定的自己概念とは、「自分には価値がない」「自分は欠陥のある人間だ」「自分は愛されない存在だ」など、自分自身を否定的に捉えることです。

例えば、子どもの頃、親から繰り返し叱責されたり、無視されたりして育った人が、「自分は愛される価値のない人間だ」と感じるようになったとします。これは、つらい対人関係の経験を通じて形成された否定的自己概念と考えられます。

一方、「親に愛されないのは、子どもの方に問題があるからだ」という考え方を取り込み、「だから自分はダメな人間なのだ」と考える場合には、セルフスティグマにつながるような偏見の内面化も関わっている可能性があります。

つまり、否定的自己概念は、自分をどのような人間だと認識しているかという問題であり、セルフスティグマは、社会的な偏見や決めつけを自分自身に当てはめることによって生じるものです。両者は重なり合うことがありますが、同じものではありません。

機能不全家族で育った人の場合、親から否定的な扱いを受けてきたことに加え、「親を大切にするのは当然」「家族は仲良くするべきだ」「親に感謝できないのはおかしい」といった社会的な価値観に苦しめられることがあります。

また、「自立した大人は自分の問題を自分で解決するべきだ」という考え方が、カウンセリングを受けたり、誰かに助けを求めたりすることへの抵抗につながる場合もあります。

このように、トラウマ体験による否定的自己概念と、社会の偏見を取り込むことによるセルフスティグマが重なると、自分を責める気持ちがさらに強くなることがあるのです。

 

セルフスティグマを手放すための3つの方法

では、どうすればセルフスティグマを手放していけるのでしょうか。ここでは、3つの方法をご紹介します。

 

① 自分の中にある「当たり前」を疑ってみる

私たちは普段、自分がどのような価値観を持っているか、あまり意識していません。

例えば、「人に頼るのは甘えだ」と思っている人は、なぜそう考えるのでしょうか。親からそう言われて育ったからでしょうか。それとも、学校や職場で、人に頼らず頑張ることが評価されてきたからでしょうか。

また、最近はSNSの影響も無視できません。SNSには、「仕事ができない人は努力が足りない」「子どもをきちんと育てられない親は失格」「いい年をして親に頼るなんて情けない」など、特定の人を厳しく批判したり、見下したりする投稿もあります。

こうした言葉を繰り返し目にしていると、知らず知らずのうちに、その考え方が正しいように感じられることがあります。そして、自分が批判されている人と同じ立場になったとき、「自分もダメな人間なのだ」と感じてしまうかもしれません。

しかし、SNSで多くの人が賛同している意見が、必ずしも正しいとは限りません。誰かを一方的に非難するような投稿からは、意識的に距離を置くことも大切です。

そして、自分が当たり前だと思っていることについて、「本当にそうだろうか」「誰かの偏見や決めつけを取り込んでいないだろうか」と、問い直してみてください。

大切なのは、自分が信じてきた価値観が、必ずしも唯一の正解ではないと気づくことです。

 

② 自分と他人に違う基準を使っていないか考える

例えば、友人が体調を崩して仕事を休んだら、「無理をしないで、ゆっくり休んで」と声をかけるのではないでしょうか。

それなのに、自分が休むと「情けない」「周囲に迷惑をかけている」と責めてしまう。

あるいは、友人が親との関係に悩んでいたら、「無理に仲良くしなくてもいい」と思うのに、自分が親と距離を置くことには強い罪悪感を抱く。

そんな違いはないでしょうか。

他人には認められることを、なぜ自分には認められないのでしょうか。

もしかすると、そこには「自分だけは頑張らなければならない」「自分は人に迷惑をかけてはいけない」といった、厳しい思い込みがあるのかもしれません。

 

③ 別の価値観に触れてみる

長い間、同じ環境で同じ価値観に接していると、それが当たり前になってしまいます。しかし、世の中にはさまざまな考え方があります。

例えば、「親には感謝するべきだ」という考え方もあれば、「親子であっても、お互いの境界線を尊重することが大切だ」という考え方もあります。

「人に迷惑をかけてはいけない」という考え方もあれば、「人は誰でも、助けたり助けられたりしながら生きている」という考え方もあります。

どちらか一方が絶対に正しいということではなく、これまで自分が信じてきた価値観以外にも、さまざまな考え方があると知ることが大切なのです。

本を読んだり、異なる経験を持つ人の話を聞いたりすることも役立ちます。また、カウンセリングで、自分がどのような価値観を身につけてきたのか、それが今の自分にどのような影響を与えているのかを振り返ってみることもよいでしょう。

これまでの価値観を無理に捨てる必要はありません。ただ、「こんな考え方もあるんだ」と知ることで、少しずつ自分を縛ってきた思い込みが緩んでいくことがあります。

 

セルフスティグマまとめ:社会の偏見で自分の価値を決めなくていい

セルフスティグマの厄介なところは、もともとは社会や周囲から取り込んだ偏見なのに、いつの間にか、自分自身の考えや評価であるかのように感じられることです。

「自分は弱い」「自分は甘えている」「自分は親不孝だ」。

そんなふうに思ったときには、少し立ち止まって、「これは本当に自分の考えだろうか。それとも、誰かから教えられた価値観だろうか」と問いかけてみてください。

もちろん、自分を責める気持ちのすべてがセルフスティグマというわけではありません。特にトラウマ体験のある人は、過去の経験から身についた否定的自己概念にも目を向ける必要があります。

ただ、これまで当たり前だと思っていた考え方が、実は一つの偏見や決めつけだったと気づくことで、自分を見る目が変わることがあります。

社会の偏見を、自分自身の価値を測る物差しにしなくてもよいのです。

自分を縛ってきた価値観を少しずつ見直し、自分なりの考え方を育てていってください。

 

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