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【複雑性トラウマ・AC・愛着障害】罪悪感が消えない理由〜被害者・加害者・傍観者が重なる困難

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

 

家庭の中で傷ついた経験を持つ方(複雑性トラウマ・AC・愛着障害)から、よく聞く言葉があります。

「自分は被害者だったと言い切れない」
「自分も誰かを傷つけてしまった気がする」
「何もできなかった自分が許せない」

 

なぜ、家庭内でつらい思いをしてきたのに、自分にも落ち度があったと感じたり、罪悪感をもったりしてしまうのでしょうか。

 

今日は、なぜそう感じてしまうのか、その仕組みをお話します。

 

家庭内トラウマ(複雑性トラウマ・AC・愛着障害)の大きな特徴

トラウマ研究の第一人者である精神科医のジュディス・ハーマンは、家庭内のトラウマにはある特徴があると言っています。それは、守ってくれるはずの人が加害者だということです。

家庭の中では、子どもは親に依存して生きています。逃げることもできませんし、関係を断つこともできません。

 

つまり子どもは、親に傷つけられるが、その人に守られないと生きられないという矛盾を抱えることになります。これが、トラウマを複雑なものにするのです。

 

家庭内トラウマ(複雑性トラウマ・AC・愛着障害)で起きやすい「3つの体験」

家庭の中で長くストレスにさらされると、子どもは、被害者・加害者・傍観者の3つの立場を、同時に体験することがあります。

 

① 被害者としての体験

まず1つ目は、「傷つけられる側」に立たされる体験です。



怒鳴られる、否定される、無視される、過度に責任を負わされる。



あるいは、親の機嫌ひとつで家庭の空気が一変し、いつも顔色をうかがって過ごさなければならない日々。

 

子どもにとって家庭は本来、安心して甘え、失敗できる場所です。

 

しかしその場所が緊張と不安の場になると、「自分が悪いからこうなるのではないか」と感じるようになります。

 

こうして安心感や自己肯定感は少しずつ削られ、「本当の気持ち」を出せないまま大人になるしかありません。

 

② 加害者としての体験

ここがとても重要で、多くの人が苦しむ部分です。

 

家庭の中で子どもは、生き延びるために、次のような行動を取ることがあります。

・兄弟に怒りを向ける
・親の味方をして誰かを責める
・弱い立場の人を攻撃してしまう

 

これらは、性格の悪さではなく、本能的に、親の真似をしたり、強い側につくことで安全を保とうとする無意識のサバイバル戦略です。しかし、後から、自分が加害行為をしたこと、親と同じであることに気づいて、自分をせめて苦しむようになります。

 

ちなみに、加害者としてのふるまいは家庭内だけでなく、学校や友達関係などでも生じやすく、家庭の外で起きたとしても加害者体験となります。

 

③ 傍観者としての体験

3つ目は、見ていることしかできない体験です。

 

例えば、

・親の争いを見ている
・家族の暴力を止められない
・見て見ぬふりをしてしまった

 

すると子どもは、何もできなかった無力感に加え、「自分は逃げた」「卑怯者だ」という自分を責めるようになります。

 

家庭内トラウマの方にとって、この傍観者体験は深い無力感を刻みます。

 

「自分には誰も守れない」「自分は役に立たない存在だ」という感覚が、自己価値の低下として内面に残り、大人になってからも対人関係で過剰に責任を背負ったり、逆に何も言えなくなったりする背景になることが少なくありません。

 

なぜ「被害者・加害者・傍観者」の3つが重なると傷が深くなるのか

トラウマというと、「怖かった体験」「恐怖の記憶」と捉えられがちです。もちろん恐怖は大きな要素ですが、実は、トラウマが長引きやすく、回復を難しくするのは、そこに罪悪感や恥の感情が重なっているときです。

 

家庭内トラウマで、被害者、加害者、傍観者の3つの立場を重複して体験していると、「自分もひどいことを言った」「弟や妹に当たってしまった」「止めなかった自分も悪いのではないか」と感じる出来事が重なると、心の中で役割が混線してしまいます。すると、「自分も親と同じだ」「自分はダメだ」という思いが生まれます。

 

ここが、家庭内トラウマの複雑さです。加害者と被害者の境界があいまいになり、「本当は誰が悪かったのか」という構図が見えなくなります。

 

その結果、怒りは外に向かわず、自分に向かいます。悲しみは表現されず、恥へと変わります。そして「自分の性格の問題」「自分の未熟さのせい」という形で内側に固定されていきます。

 

本来は守られなかったことが問題なのに、「自分が悪かったからこうなった」と解釈してしまう。この自己責任化こそが、傷を深く、長く残す大きな要因なのです。

 

家庭内トラウマ(複雑性トラウマ・AC・愛着障害)が人間関係に影響する理由

こうした3つの体験は、心と身体の奥に“人間関係の型”として残り、大人になってからの人間関係にも影響することがあります。

 

家庭は、子どもにとって最初の人間関係の場です。そこで学んだ関係のパターンは、無意識のうちに「これが普通」「これが安心できる形」としてインプットされます。たとえそれが、つらい関係であってもです。

 

そのため大人になってからも、

・支配的で怒りっぽい人に親しみを感じてしまう

・強い相手に従うことで安心しようとする

・逆に、自分が攻撃的になって関係をコントロールしようとする

・対立が怖くて、自分を抑え込み、場を丸く収める役に回る

ということが起きやすくなります。身体の記憶が「かつて生き延びたやり方」を自動的に選んでいるのです。

 

たとえば、怒る人に従うことで衝突を避けてきた人は、無意識に「従属する=安全」と学習しています。

 

逆に、弱い立場に回ると傷つく経験が強かった人は、「攻撃する側に立つ=安全」という戦略を身につけることもあります。

 

また、家庭内で争いを見続けた人は、「対立=破滅」という感覚が強く、必要な主張さえ飲み込んでしまうことがあります。

 

その結果、

・親密になると不安になる

・信じたいのに疑ってしまう

・関係が壊れる前に自分から離れてしまう

・常に「自分が悪いのではないか」と考えてしまう

といった苦しさが続くことがあります。そしてうまくいかないたびに、「やっぱり自分はダメだ」とさらに自己否定が強まってしまう。

 

しかし、ここで大切なのは、これは“あなたの本質”ではなく、かつての環境に適応した結果だということです。関係のパターンが学習されたものなのだから、時間をかけて書き換えていくことも可能です。

 

そのためにも、まずは、「自分はどんな型を繰り返しているのだろう?」と気づくことが大切なのです。

 

回復のプロセス

ジュディス・ハーマンは、回復には三つの段階がある、と述べています。

 

① 安全を取り戻すこと

最初に必要なのは、「理解」よりも「安全」です。

 

ここでいう安全は、単に危険がないという意味ではありません。心と身体が、“今ここは大丈夫だ”と感じられることです。

 

家庭内トラウマを経験した人は、頭では「もう終わった」と分かっていても、身体がまだ警戒しています。例えば、
・人の表情に過敏に反応する
・いつも不安が強く緊張している
・人の評価を過剰に気にする
・自分の感情を飲み込む

これらは「気持ちの問題」ではなく、身体の記憶です。

 

だからまずは、

  • 安心できる人や場所を少しでも増やす
  • 身体が落ち着けるようにする(呼吸・温かさ・休息)
  • 境界線(無理をしない、断る、距離を取る)を練習する
  • 今の生活の中で危険を増やしているものを減らす

 

このようにして、身体が「守られている感覚」を少しずつ取り戻します。

 

体験を整理し、意味づけすること

安全がある程度整ってきたら、次に大切なのは、「あの時、本当は何が起きていたのか」「自分は本来背負わなくてよかったものまで背負っていなかったか」に目を向けることです。

 

家庭の中では、子どもが大人の役割を担わされたり、誰かの味方をするよう求められたり、争いの板挟みになったりすることがあります。その結果、加害者の側に立ったり、傍観者にならざるを得なかったりします。

 

しかしそれは、未熟だったからではなく、その状況で生き延びるための適応でした。過去の出来事を言葉にして、「本当の責任はどこにあったのか」を整理していくことで、長く抱えてきた恥や罪悪感は少しずつ緩んでいきます。

 

意味づけの作業は、自分を責めるためではなく、自分を取り戻すためのプロセスなのです。

 

③ 人とのつながりを回復すること

家庭内トラウマは、「関係」の中で起きた傷です。だからこそ、回復もまた「関係」の中で起きていきます。

 

・信じたいのに信じられない

・近づきたいのに怖い

・優しくされると逆に不安になる

 

これは、「近づく=危険」「頼る=裏切られる」「正直に言う=罰を受ける」という体験をしてきたからです。身体が、過去の記憶に基づいて警戒しているのです。

 

ですから、

・断っても関係が壊れない

・失敗しても見捨てられない

・泣いても怒られない

・自分の気持ちを言っても大丈夫

こうした体験を少しずつ重ねていくことが、つながりの回復につながります。

 

けれども、「でも、誰を信じればいいのかわからない」「また裏切られたらどうしよう」「そもそも安心できる人なんているの?」と感じて、糸口が見つからないことも少なくありません。過去に深く傷ついた経験があるほど、最初の一歩はとても怖いものです。

 

そのときに手助けできるのが、カウンセリングです。

カウンセリングの大きなメリットの一つは、相手が心理の専門家であるということです。トラウマや愛着の問題、罪悪感や恥の感情がどのように形成され、どのように回復していくのかを理解したうえで、相談者の状態に合わせて関わり方を調整していきます。無理に深掘りをしたり、準備が整っていないテーマに踏み込んだりはしません。その時点での安全を最優先に進めます。

 

「どうやって安心を増やしていくか」「今の生活のどこに危険が残っているか」「どんな関係なら負担が少ないか」といった具体的な相談ができるのも特徴です。安心は感覚的なものですが、日常の工夫によって少しずつ補強することができます。そのプロセスを一人で抱え込まず、一緒に整理できるのは大きな支えになります。

 

また、カウンセリングは料金を支払う限定的な関係ですから、遠慮せずに話すことができます。相手の機嫌を取る必要も、気を遣い続ける必要もありません。「嫌われたくないから言えない」という構図が起きにくいのも、大きな安心材料です。

 

このように、最初の“安全な他者”の選択肢としてカウンセリングを検討してみることをお勧めしたいと思います。

はこにわサロンでは家庭内トラウマの方のカウンセリングを行なっています。

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トラウマケアに関するブログ

 

まとめ:家庭内トラウマ(複雑性トラウマ・AC・愛着障害)の罪悪感について

機能不全家族で育ち、苦しんできたにもかかわらず、「自分にも悪いところがあったのではないか?」と罪の意識を持ってしまうわけ、わかっていただけたでしょうか。

 

わかったからすぐに手放せるわけではないのですが、やっぱり、まずは、この構造を知ることが大切ではないかと思います。

 

自分を責める気持ちが湧いた時には、「ちょっと待てよ」と立ち止まって、考えてみてください。少しずつ、自分の尊厳を取り戻していきましょう。

 

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