ほんとうは辛いのに、平気なフリをしてしまうあなたへ。カウンセリングにできること。
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。
本当は、つらい気持ちでいっぱい。
誰かに聴いて欲しいし、本当は助けてほしいのに、顔には出さない。誰にも言わない。
そんな苦しい状況がなぜ生じるのかについて考えたいと思います。
① 自分の感情がわからないから
② 表現の仕方・程よい出し方がわからないから
③ どうせ自分が悪いから
④ 受けとめてもらえる気がしないから
① 自分の感情がわからないから
感情は、人間が生まれ持った情動ではありますが、それが「喜怒哀楽」になるためには、幼少期に親(や養育者)に受けとめてもらい、「喜怒哀楽」として名づける必要があります。
人間は、子どもの時に、自分が感じた感情を親が共に感じてくれたり、受けとめてくれる体験を通じて、自分の感情を理解し、どう向き合えば良いかを学びます。
ところが、無視されたり、不適切な対応をされてしまうと、感情は不要なものとしてフタをする習慣が身についてしまったり、親(養育者)の不適切な対応を真似て成長してしまいます。
でも、感情は人間がもともと持っている(大切な)ものなので、なくなったりはしません。
そのため、不適切に封じられた感情は、以下のように表出することになります。
✔️ 切り離す(解離)
ひとつの手がかりは身体感覚です。
人間のこころと身体は分かち難く結びついているので、あなたの身体はあなたの感情をキャッチして反応しているものです。
例えば、怒っている時にはこんな反応が生じることがあります。
✔️ 首筋が強張る
✔️ 肩に力が入る
✔️ 心臓がばくばくする
✔️ 胃がきゅっと縮む
✔️ 胸がざわざわする
✔️ 手足がふるえる
✔️ 急に汗が出る などなど
身体の反応を手がかりに、ご自分の感情と繋がってみてください。
ちなみに、「怒りの感情」とのつながり方についてはこちらに書いています。
② 表現の仕方・程よい出し方がわからないから
自分の中に感情はある。
でも、それをどう表現したらよいかがわからない。
特にネガティヴな感情を「ほどよく」表出するのが難しい。
全く出せなかったり、我慢の限度を超えると不適切な怒り(例えば暴言暴力)になってしまう。
自分の感情をどのように表現するのか、というのも、幼少期から大人になるまでに、わたしたちが家庭や学校で学ぶことですが、よいお手本に恵まれない(不適切なお手本しかなかった)場合は、困難が伴います。
例えば・・・
このような時に、多くの親はこのような対応をするのではないでしょうか。
「どうしたの?どこが痛いの?」と問いかけながら身体の傷を調べる。
膝を擦りむいているし怯えて泣いているが、大きな怪我はない。
親は子どもを抱きしめながら「怖かったね。お膝も痛いね。よしよし、もう大丈夫だよ」となぐさめる。
できる怪我の手当てをし、水を飲ませ、気持ちが落ち着いたら「またやってみる?」と問いかける。
子どもがためらったら「一緒にやってみようか?」と投げかける。
子どもがもう一度登り始めたら、安心できるように後ろにいてあげる。
このちょっとした出来事の中に、
✔️ こころと身体に生じた恐怖と痛みを理解し受けとめてもらうこと
✔️ 身体の緊張をほぐし、怪我の手当てをしてもらうこと
✔️ 失敗しても大丈夫と教えてもらうこと
✔️ 心細かったら一緒にいるよと応援してもらうこと
などのメッセージが親から子へと伝えられています。こうして子どもは、最初は「泣く」だけだった怒りや悲しみの表現を少しずつ、言葉で、周りの人に伝えられるようになっていきます。
けれど、もし親(養育者)がこんな対応をしたらどうでしょう。
いても知らんぷりをする。
子どもの不注意や泣いている態度を叱ったり、
「泣き虫ねぇ」とバカにしたりする。
子どもは、感情を表現することは愚かなことだと理解し、表現しないようになっていくでしょう。
その時は、叱責やネグレクトを回避するための行動ですが、自分の感情を表現する練習チャンスのないままに大人になってしまいます。
でも、本当は、自分の感情は表現してよい(表現することでよりよく生きられる)のですよね。
自分の気持ちを表現し、相手に伝える方法を学ぶには、アサーションという方法があります。もしよかったら、調べてみてくださいね。(わたしも、また別の記事でご紹介したいと思います。)
③ どうせ自分が悪いから
だから、人に言っても仕方がない。
そう思っていませんか?
でも、本当にそうかな。
もし、いつも自動的に「自分のせい」だと思うなら、幼少期にまちがって学んでしまったのではないかと思います。
先ほど、③のところでジャングルジムの事例をお話ししました。
おそらく、二番目に紹介した親(養育者)は、ケガをした子どもをこう責めるでしょう。
不注意だ!
親に面倒をかけて!
なんて泣き虫なんだ!
でも、不適切なのは、遊んでいた子どもではなく、このような声かけしかできない(あるいは声かけもできない)大人側にあるのです。
例え「約束をやぶって勝手に遊んで怪我をした」のだとしても、まずは子どもの怒りと悲しみと痛みを受けとめてもらい、ケガの手当てをしてもらい、気持ちが落ち着いてから、注意や叱責の順番です。
ですから、仮に本当に「自分が悪い」としても、「ちょっと聞いて」もらったり「残念だったね」となぐさめてもらえるのですよね(本当は)。
④ 受けとめてもらえる気がしないから
このように、「本当は苦しいのに、苦しくないフリをする」背後には、幼少期の不適切な養育が大きく影響しています。
(機能不全家族・アダルトチルドレン と呼ばれます)
小さい頃から、本当は話を聴いてほしい・助けてほしいと思った時に、受けとめてもらえなかったり、拒絶されてきたため、今では人を信頼することができなくなってしまっているのですね。
信頼感、というのは、人間の成長のベースになるものなのですよ。
これは、子育て記事なのですが、信頼感について説明していますので、関心がある方はどうぞ。
でも、もし、「苦しくないフリに疲れちゃった」少しでも変えたいと思っていたら、身近にいる、なんとなく信頼できそうだなと思う人に、ちょっと相談してみることから始めてみるのはどうでしょうか。
「たいへんでしたね!」と言ってもらえたり、「わたしもありますよ!」と言われたら、自分だけじゃないと思えたりするかもしれません。
コツは、大きな相談はしないこと、相手の反応が「ちょっと嫌だ」と思ったら距離をとることです。
でも、なかなかこの小さなトライも怖くて無理だよという方もおられるだろうと思います。
そういう場合は、臨床心理士に相談してくださったらと思います。(こういう時のためにいるから。)
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はこにわサロンでもご相談を承ります。(カレンダーからご予約いただけます。)
どうぞ、おひとりで抱えて苦しみ続けずに、お話にいらしてくださいね。
参考図書
『児童期虐待を生き延びた人々の治療 中断された人生のための精神療法』星和書店