『はてしない物語』に学ぶ なりたい自分になるために絶対に忘れてはならないこと
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をお読みになったことはありますか?
『ネバーエンディングストーリー』という映画にもなっていますね。
わたしは映画は観ていないので、本を元にお話するのですが、この物語は、心理療法と似ているなぁとよく思います。なぜ、そう思うのかを書いてみたいと思います。
『はてしない物語』の主人公はこんな男の子
バスチアン・バルタザール・ブックス
年齢は10〜11歳
ふとっちょ
弱虫
臆病
落第生
スポーツがとても苦手
いつも学校でいじめられている
お母さんとは死別
お父さんは無関心
好きなことは読書
ファンタージエンの物語
ある日、この少年バスチアンが古本屋から一冊の本を盗んでしまうことから物語は始まります。
バスチアンが盗んだ本は、読んでいる人が物語の中に入ってしまう魔法の本なのです。
そこは、ファンタージエンという国で、女王・幼ごころの君が病気になっているため、国も滅びようとしているのです。
バスチアンは、請われて幼ごころの君に「月の子(モンデンキント)という名前を授けます。
そのお礼に、バスチアンは、美しい容姿や能力と魔法の力をもらいます。ただし、この魔法を使うたびに、バスチアンは自分が元いた世界の記憶をひとつずつ失くしてしまいます。
最初のうち、バスチアンは記憶を失うことを気にしていませんでした。だって、元いた世界には、バスチアンがなくして困るものなど何もなかったからです。
いじめっ子のいる学校、自分に無関心な父親、ふとっちょで取り柄といったら本を読むのが好きなだけの冴えない男の子だったんです。
それが、今は、容姿端麗・万能になれたのですから、このまま元の世界に戻れなくたって構わない、とバスチアンは思ったのです。
バスチアンを心配する友だち
そんなバスチアンのことを心配している友だちがいました。
アトレーユという少年とフッフールという竜です。
この二人はバスチアンが魔法を乱用して記憶を失っていくことや、自分の属する場所へ帰ろうとしないことを心配していました。
けれど、バスチアンは、アトレーユとフッフールのことを、だんだんうるさいと感じ始めるのです。
一方で、何かこころの中に満たされないものがあるバスチアンは、もう一度、モンデンキントに会いたいと願っていたのですが、もしもう一度会って、魔法を取り上げられたらどうしようかと思うと、素直に会いたいと願うこともできなかったのです。
勇者でありながら孤立してしまったバスチアンはますます捨て鉢になり、自分の記憶も、自分の願いも、わからなくなってしまいました。
バスチアンがたどり着いた場所
全て失ったバスチアンがたどり着いたのは、バスチアンを無条件に受け入れて、食べ物を与え、甘やかし、愛する、母なるおばさまのいる家でした。ここで魂の渇きを癒したバスチアンは、ようやく自分の願いを見つけます。
それは、自分も愛することができるようになりたい!というものでした。
この後、バスチアンにはまだまだ難題が降りかかります。
けれど、なりたい自分を見出したバスチアンは困難にあっても逃げ出すことはしませんでした。
アトレーユとフッフールにも無事、再会することができました。
二人は、ファンタージエンでバスチアンがやり残したことを引き継いでやってくれると約束してくれました。
こうして、バスチアンは、命の水を飲み、再び生まれ変わり、元の世界に、元のバスチアンとして戻ってくることができました。
自分から愛するために生まれ変わったバスチアン
おそらくは妻を亡くして無気力になっていたのでしょう。
普段はバスチアンに対して無関心であった父親は、バスチアンを心配して夜も眠れずに待っていました。
そして、無事に戻ってきたバスチアンをこころから喜んで受け入れました。
バスチアンは、自分に起きた不思議な物語を父親に語って聞かせました。
そして、あの古本屋に、『はてしない物語』を盗み、失くしてしまったことを謝りに行くと言いました。
謝りにいってみると、『はてしない物語』はバスチアンが盗んだのではなく、向こうからバスチアンの元に来たのだ、ということがわかりました。
また、古本屋の主人もかつてファンタージエンに行って来たことがあるとわかりました。
バスチアンは、もう一人、友だちを得ることができました。
なりたい自分になるための物語にはとても時間がかかる
このお話、日本語の単行本で約600ページあります。
バスチアン少年が悩んで、失敗して、迷い、回り道をして、ようやくなりたい自分を見出す旅の物語です。
「自分から愛せる人になりたい」という願いを叶えられる人へと変容するために、600ページかかるのです。
もっと早く、できなかったのかしら?と思いませんか?
わたしも、いつも、そう感じるのです。
でも、やはり「かかる時間はかかる」のですね。
そして、必要なだけの時間をかけて納得のいく答えを見出したバスチアンは、別人のように変わります。
外見はふとっちょのままですけれど、活き活きとして、意思と勇気がある子どもになっていました。
バスチアンは物語の最後で”命の水”なるものを飲んで生まれ変わったわけですけど、そこまでに長く苦しいプロセスがあったのですよね。
ですから、バスチアンは、この後、きっと「自分から愛する」という姿勢を失うことはないでしょう。
もしも。
物語の冒頭で自信を失って投げやりになっているバスチアンに「あなたは、自分から人を愛せる人にならなければいけないよ」と言ったらどうなっていたでしょう。
きっと、もっと自信を失くし、こころを閉ざしていたのではないでしょうか。
あなたのはてしない物語
古本屋の主人はこう言います。
「ファンタージエンの入り口はいくらでもあるんだよ。それに気づかない人が多いだけなんだ」
さらにこうも言います。
「きみはファンタージエンに友だちができた。そしてモンデンキントにまた新しい名前が必要になった時には、また会うことができる」
つまり一度ファンタージエンに行って戻って来た者のこころの中には、ファンタージエンが生き続けるということですよね。
そして、長い人生の中で、再びバスチアンが自信をなくすことがあったら、その時はまた、ファンタージエンの力を借りることができるということです。
ファンタージエンと箱庭はとても似ている
これは、とても箱庭的だと思います。
箱庭療法は、してみたいと思う人には開かれています。
そうして、箱庭の中にあなたのファンタージエンを創り出すことができます。
それはもしかすると長い旅になるかもしれません。
けれど、自分が紡ぎ出した箱庭の物語は、あなただけのものです。
あなたは、箱庭の旅から得た宝物を持って、日常生活に帰っていくでしょう。
ご自分のこころの物語を通じて、ご自身の内面との関係を持ち続けることができるでしょう。
セラピストにとっても大切な、『はてしない物語』
『はてしない物語』は、あなたにとっての大切な宝物を探す旅について書かれた本です。
けれど、実は、この物語は、セラピストのわたしにとっても、暗闇を照らすロウソクの灯りのような本です。
一生懸命やっても糸口が見出せない時というのが、セラピストにもあります。
そんな時に、バスチアンを思い浮かべるのです。
アトレーユやフッフールを遠ざけてひとりぼっちになってしまったバスチアン。
何もかも失くして尚、自分の答えを見つけ出したバスチアン。
ご紹介した本
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