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摂食障害(拒食症・過食症)の治し方〜カウンセリングにできること

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。

 

摂食障害(拒食症・過食症)は、思春期・青年期に多くみられ、低年齢化傾向があります(小3の報告もある)。

 

早期発見が治療の鍵と言われますが、最初は「気軽なダイエット」や「やけ食い」といった、誰もが「よくする」食事行動から始まるため、見つけにくい・気づいたときには重症化していることも少なくありません。

 

重症化すると命の危険があり、医療的な治療が必要となりますが、「食べる・食べない」に焦点化すると治りにくくなる難しさがあります。

 

今日は、摂食障害(拒食症・過食症)について、その症状に隠されたこころの状態について考えることで、回復への道筋を検討してみたいと思います。

 

拒食症とは

拒食症とは、その名の通り「食べることを拒否する」病気で、以下のような特徴があります。

 

□ 低カロリー、低脂質、低糖質などにこだわり、納得したものしか口にしない

□ みんなと食事をすることを嫌がる

□ 「痩せすぎ」を認めない

□ 体重増加を異様に怖がる

□ 学業・仕事や運動に過剰に打ち込む

□ 自分は食べないが家族には無理やり食べさせようとすることも

 

拒食症は、最初は、「スタイルをよくしたい」「キレイになりたい」のような誰もが持つような願いから始まります。

このような願いを持つことは自然なことですし、そのために努力することも決して悪いことではないのですが、実は危険が隠されています。

 

それは

✔️ 成功すると社会的評価が得られること

✔️ 自分でできて最初は結果が出やすいこと

です。

 

ダイエットに成功して、周りから「キレイになったね!」と言われると、とても嬉しいでしょう?

 

しかもそれは、自分の努力によって獲得したことなのですから、「ダイエットをして痩せると自分の価値が上がる」と誤って体験されてしまいます。

 

これが「誤りの体験である」と理解するのは、実は簡単ではありません。なぜなら、「努力をして自分を高めること」は、わたしたちの社会において、家庭でも学校でも常に「よいこと」として奨励されているからです。

 

拒食症と思春期の心理

拒食症の発症年齢は、中学生・高校生が多いと言われていて、思春期との関係性が強い病だと言えます。

 

思春期に情緒的に不安定になりがちなのは、こころの成長と大きな関係があります。図解しますので、ご覧ください。

この図のように、生まれたばかりの赤ちゃんは、自分と母親の区別がつきませんが、つかないことで安心していることができます。

 

「自分と母親は違う人間だぞ」と気づき始めるのが2〜3歳。いわゆる「いやいや期」です。

 

*この図はちょっとわかりにくいですが、水色(子ども)はピンク色(親)や黄色(学校)の中に含まれたり、少し外へ出たりをいつも繰り返していると理解してください。

 

成長した子どもは、幼稚園、小学校へと進み、少しずつ世界を広げて行きますが、心理的にはまだまだ「親と一緒が安心」な時期です。

 

悲しいことがあってもお父さんやお母さんが「大丈夫だよ」となぐさめてくれたら、それだけで安心できます。

 

変化が起きるのが前思春期。

今までは、親は神様みたいに万能な存在だったのに(だから「大丈夫」が信じられたのに)、大人の言うことに疑問がわき、親が「大丈夫だよ」と言っても「本当かな」と感じ始めます。

 

親から離れて不安になりやすいこころを支えるのが、お友だちとの関係です。ギャングエイジって聞いたことありませんか?集団で、一体感を持つことで、不安にならないで過ごすことができます。

 

さて、いよいよ思春期です。

思春期に入ると、心身ともに親から離れ始めますが、「離れる」ということは、自由になった嬉しさと同時に強い不安をも引き起こします。

 

この不安を減らすために、この時期の子どもたちは、できるだけ「不確定要素を減らしたい」「できるだけ自分でコントロールしたい」と願うのですね。

 

思春期の「なりたい自分」

先ほどの、「食事を減らして、キレイになって、認められたい」と始めたダイエット。

でも、実際やってみると、たいてい、いろいろな問題が起きてきます。

 

✔️ 家族と食事する時間が苦痛になったり

✔️ 友だちとアイスを食べる、みたいな楽しみがなくなったり

✔️ つい、おやつを食べて自己嫌悪に陥ったり

✔️ 外見ばかりに気を取られることに疑問がわいたり

 

ダイエットが「100%いいこと」とは限らない体験は、子どもを「もやもや」した気持ちにさせるでしょう。

 

このように自分の中に相反する気持ちが生じて「もやもやする」ことを「葛藤」といいますが、思春期で獲得したいとても大切な人間の力であり、「ダイエットが拒食症になるか・ならないか」の分岐点です。

 

✔️ おやつは減らすけど食事は減らさないことにする、と修正できたり

✔️ 友だちとのアイスは、自分はお茶にしようとしたり

✔️ おやつ食べて、ダイエットが頓挫しても「ま、いっか」と思たり

「ダイエットに成功してほめられること」だけじゃない、自分にとって大切なことに気持ちが向けられて、柔軟に目標修正ができるとよいのですよね。

 

拒食症からの回復を目指して

子どもの拒食症が疑われるとき(頑なにダイエットにしがみつくとき)は、その背後に子どもの思春期の不安があることを理解しましょう。

 

大人になる最初の一歩。

自分の力で、上手に自立したいのです。

「ひとりでちゃんとできる」がダイエット(並行して学業に打ち込む、習い事に打ち込むことも)の成功なのです。

 

ですから、「食べる・食べない」や「なぜ食べない?」「どうしたら食べられる?」よりは、なぜこの子はこれ程までに硬直化した目標設定をするのだろう?と考えてみてください。

 

先ほど図解した成長期のくくりで振り返ったときに、何か気になって思い出されることはありませんか?(可能なら本人とも話してみてください。)

 

みんなから認められないと、自分の居場所が得られない、安心できない、と思ったきっかけはありますか?(思い当たることはなく、ただじわじわと・・・という場合もあります。)

 

認められないと怖い気持ちを聴いてあげましょう。

 

聴くしかできないこともあると思います。

 

でも、それでいいのです。

 

不安でたまらない、怖い。助けて欲しいけど直接助けてもらうことができない。この、もやもやした状態を、親(や信頼できる大人)が共に過ごすことが、思春期の不安定さを下支えするからです。

 

そんな対話ができるようになると、子どもも「食べない自分」に執着しなくても、自分でいられるようになっていきます。

 

過食症とは

過食症は、たくさんの食べ物を衝動的に食べてしまい、その後、嘔吐や下剤の使用、激しい運動などで体重増加を防ぐ行動をとってしまう病気で、拒食症同様、若い女性に多いと言われています。その特徴は:

□ 常に食べ物のことを考えている

□ 家族に隠れてこっそり無茶食いをする

□ 食べたことを帳消しにする行動(嘔吐・下剤)やチューイング(噛んで吐き出す)

□ 食べることで落ち着く。後から後悔するがやめられない。

 

過食症は、単発で出現することもありますが、拒食症が転じて出現することもあります。

 

過食症と思春期の心理

過食症は、食事の行動としては、拒食症と反対なのですが、やはり思春期の不安定さが引き金になると考えられます。

 

拒食症の人が「自分で食欲や体重をコントロールすることで不安を消そう」とするのに対し、拒食症の人は「不安を打ち消すために食べ、体重増加をコントロールする行動」をとります。

 

過食症の人は、食べているときに「頭が真っ白になる」といいますが、それはまるで、自分の意識(存在)を消そうとしているかのようです。

 

ただ、一時的に「真っ白に」なれても、ひとたび冷静に戻ると自己嫌悪に苛まれ、また打ち消したかった不安も消えることなくそこにあります。食べることでは、埋まらないのに、食べ続けてしまう苦しさがあります。

 

過食症からの回復

過食症の背後には、「足りなさを埋める」、「つらさを一時的に忘れたい」という願いがあります。

 

ですから、回復のためには、足りなさ、つらさの理解が不可欠です。

 

おそらくは、愛情や安心できる居場所、基本的な信頼感などの欠如に気づくのではないでしょうか。

 

これらは、本来、人が育つ過程で無償で不足なく与えられるべきものだったので、今から再獲得するには時間がかかりますが、不可能ではありません。信頼できる人との出会いや、愛情深いが淡々とした日常生活などが助けになると思います。

 

そのプロセスで、ぜひ「誰かと一緒に、おいしくご飯を食べる」機会を持ってみてください。

 

美味しく感じられる体験を重ねてください。

 

焦らず、時間をかけて、少しずつ、「ふつうに美味しく食べる」を取り戻していきましょう。

 

摂食障害の依存性

摂食障害には、依存性があると言われています。

脳が「ひとまずこの行動さえすれば大丈夫」と誤認するパターンができてしまう(摂食障害に依存する)と、なかなか変えられないのですね。

ですから、カウンセリング治療に並行して、食事の習慣を変えていく試みも忘れないで行ってみてください。

 

摂食障害について相談機関

摂食障害について誰に相談すればよいかわからないときの参考にしてください。

 

お子さんの学校・お住まいの地域の相談窓口で相談する

■  お子さんの通う学校のスクールカウンセラーに相談する(いちばん身近なプロ)

■  お住まいの地域の、「子育て相談」「教育相談所」に相談する(検索してみてくだいね!)

 

 

有料の相談機関に相談する

■  お住まいの地域の臨床心理士に相談する→日本臨床心理士会

■ はこにわサロンでもご相談をお受けしていますので、必要なときは「カレンダー」からお申し込みくださいね。

 

医療機関に相談する

■ 思春期外来のある精神科・心療内科

■ 体重減少が激しい場合などは「摂食障害 + 入院」で地域の医療機関を検索してください

 

全国4か所の摂食障害治療支援センター

■ 宮城県摂食障害治療支援センター

■ 千葉県摂食障害治療支援センター

■ 静岡県摂食障害治療支援センター

■ 福岡県摂食障害治療支援センター

 

自助グループについて

摂食障害に苦しむ当事者同士、家族が集まる自助グループが全国にあります。

不安や悩みを共有することで、孤独感をやわらげたり、助け合い、学び合うことができます。

自助グループについて

 

参考にした図書

中村英代『摂食障害者の語り <回復>の臨床社会学』新曜社

 

磯野真穂『なぜふつうに食べられないのか 拒食と過食の文化人類学』春秋社

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