生まれつきでないHSPってあるの?HSPとどう違うの?対応方法は?
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンライン・電話カウンセリング受付中)
ご自分は「HSP(ひといちばい敏感さん)なんじゃないかな?」と思っていますか?
もしかすると、あなたのその敏感さは、子どもの頃の家庭環境や親子関係から生じてきたものかもしれません。
HSPは生まれつきの性質です。
でも、環境に適応するために自分自身を変化させた結果、「HSP同様の性質」を持つようになることがあります。
どういうことか、詳しくお話ししますね。
HSPの気質をDOESでおさらい
まずは、HSPの気質について、4つのポイントをおさらいしましょう。
D・・・処理のふかさ
O・・・神経のたかぶりやすさ
E・・・感情反応および共感力の強さ
S・・・ささいなことや、ささいな違いを察知する
(DOESはいろいろ訳がありますが、HSP・エンパス専門キャリアコンサルタントみさきじゅりさんの訳でご紹介します。)
HSPのDOESの例を挙げてみましょう。
職場で同僚のAさんがまた、叱られている。
S・・・ささいなことや、ささいな違いを察知する
なんで上司はいつもAさんにはきつく叱るんだろう?同じことをしてもBさんには「気をつけろよ」で済ますのに。
D・・・処理のふかさ
でも、人によって態度を変える上司は本当に怖い。わたしも上司に目をつけられないように気をつけなきゃ。でも、そう思うと余計に緊張して、ミスをしてしまう。
O・・・神経のたかぶりやすさ
なんでわたしは、自分が叱られたわけでもないのにこんなに怖くなってしまうんだろう?なぜみんなは平気なの?こんなにミスをしていたら、次はわたしが上司に睨まれてしまうだろう。それも怖いけど、今はAさんが辛い思いをしているのに、自分の心配をしている自分にも呆れてしまうよ・・・。
E・・・感情反応および共感力の強さ
この例のように「些細なことも敏感に察知して、深く考えたり気持ちが動いてしまうこと」はHSPさんにはよくあることではないかと思います。
でも、HSPさんでないのに「些細なことも敏感に察知して、深く考えたり気持ちが動いてしまうこと」を「学習して習慣づけてしまう」場合があります。
その多くは、子どもの頃の家庭環境や親子関係から「親の機嫌や顔色を敏感に察知して、親の望みを推測して行動してきた人」で、育つ過程で親から傷つけられてしまったり、十分な愛情を受けられず、悲しい思いをして大人になった方々=「アダルトチルドレン(AC)」です。
機能不全家族(親が十分に子供に寄り添い育むことができない家庭)で育って大人になり、今も様々な不全感に悩んでいる人。
アダルトチルドレンの方の子どもの頃の様子をDOESでご紹介してみたいと思います。
お父さん(お母さん)が無表情だ。
S・・・ささいなことや、ささいな違いを察知する
こんな時はお父さんとお母さんの機嫌を損ねないように注意しないと、また喧嘩になってしまうかもしれない。
D・・・処理のふかさ
でも、機嫌を損ねないようにと思うと緊張して、おどおどしてしまう。
O・・・神経のたかぶりやすさ
わたしがこんな風におどおどした子どもだから、お父さんとお母さんは喧嘩ばかりして不幸せなのかな?わたしがもっと良い子になったらお父さんとお母さんも喧嘩をやめて、笑顔になってくれるかな?
E・・・感情反応および共感力の強さ
これは、一見、HSPの子どもの反応のように見えるかもしれません。しかし、これは子どもが親に愛されたいと願って、親の顔色をみながら少しずつ獲得していく後天的なHSP的反応です。
では、子どもがHSP的な反応を獲得していく家庭とはどのような家庭なのでしょう?
アダルトチルドレンを生み出す機能不全家族
本来、家庭とは、家族メンバーの誰もが、素の自分に戻り、くつろいで過ごせるべき場所です。
なにか失敗しても「あなたのままでいいよ、大好きよ」と言ってもらえる。
このように、家庭の中でありのままの自分を温かく受けとめてもらうことで、わたしたちは皆、学校や職場で少しくらい辛いことがあっても、笑顔で頑張ることができるのだと思いませんか?
でも、残念なことに、家庭が温かい生活の場ではないこともあります。例えば・・・
● 親の価値観に子どもは逆らえない。
● 条件付けでしか認めてもらえない
● 親が子どもに無関心だったり、過干渉だったりする(親の気分で両方あることも)
● 何かうまくいかないことがあると、「子どものせい」にされてしまう
● 家庭内に秘密があり、しかしそれは「なかったこと(知らない)」にしなければならない。
このような家庭環境は「機能不全家族」と呼ばれています。
そして、子どもたちは、必然的にこのような行動をとると言われています。
● 自分ががんばることで両親をハッピーにしようと試みる。
● 自分が何かをやらかすことで、両親の注目を自分に集めようとする。
● 両親の関心が自分に向くことのないよう、自分の気配を消す。
● 自分が面白おかしくふざけることで、両親を笑わせようとする。
● とにかく両親の負担を減らせるよう、子どもの仕事じゃないことまで引き受ける。
子どもが、親の顔色を敏感に読みながら、自分の持てる力を発揮して、親の関心を得よう(または得ないように気配を消そう)、居場所を獲得しようとするのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
このプロセスの中で、HSPではない子どもたちもHSP的な性質を獲得していくのだと考えられます。
(この時期でしたら、家庭ではHSP的だけど、学校では全くそうではない、という場合などに、後天的にHSP性質を獲得していると区別ができると思います。)
でも、なぜ「先天的の HSP」と「後天的なHSP」を区別しなければいけないのでしょう?
先天的でも後天的でも、HSP(的)である自分を理解・受容して、自分らしく生きられるようにすればいいんじゃない?
先天的なHSPと後天的なHSPを区別する意義は?
本当にその通りです。
先天的か後天的かを区別する必要なんて、本当はぜんぜんありません。
ただ
HSPでなかった人がHSP的な性質を後天的に獲得する過程では、さまざまな傷つき体験があり、今なお辛い感情に苛まれていたり(あるいは切り離すことで無感覚になっていたり)大人になってからも自信のなさ、こころの病などに苦しまなければならないことがとてもよくあります。
だとしたら、HSP的な自分を受け入れる、というのは、ちょっと違うなって思いませんか?
後天的なHSPさんが「いま辛い」「自分らしく生きられない」ときは、「HSPの自分を受け入れる」ことも大切だけど「自分をケアすること」や「傷つきのケアすること」も等しく(もしかするとより一層)大事であると思います。
後天的なHSPをケアするために
まずは、ご自分を理解するところから始めましょう。
振り返ってほしいのは、大きく2つ(親子関係・学校などでの体験)です。
①親子関係
子どもの頃を思い出してみてください。
■失敗しても「大丈夫」と温かくなぐさめてもらえたか?
■親の気分で、叱られたり、褒められたり、無視されるようなことはなかったか?
■親の願いを叶えないとがっかりされたり「ダメな子」と言われるようなことはなかったか。
■困った時はいつでも話せる雰囲気があったか。
■兄弟や友だちと比較してダメ出しされたりしなかったか。
■親のイライラや怒り・悲しみを受けとめる役や家族の調整役を果たしていなかったか。
■親はあなたのプライバシーを適切に尊重してくれたか?
■あなたが何かチャレンジするときに温かく応援してくれたか?
いま述べたことがらは、家庭の子育てがほどよく適切に行われていたかのチェックポイントです。これらのことが満たされずに傷ついたり、傷ついたことを隠したりしてきませんでしたか?
もしそうであったら、ご自分のなかでいちど書き出してみる、信頼できる人に話してみる、カウンセリングを受けるのような方法で、傷つきを癒し、自尊心や自己肯定感を取り戻してほしいと思います。
②学校などでの体験
あなたの幼稚園・学校・社会人になってからを思い出してみてください。
■学校(などに)に居場所がない・安心して通えないと感じていた時期はありませんでしたか?
■がんばってもできないときに、更なる努力を求められて無力感を感じたことはありませんでしたか?
■友だちや信頼していた大人から裏切られたと感じた出来事はありませんでしたか?
■痴漢に遭う、誰かに付きまとわれる体験で怖かったことを、誰にも相談できなかったり、相談してもきちんと聞いてもらえなかったことはありませんか?
■大人や目上の人から”指導”と評してのパワーハラスメントを受けたことがありますか?
実は、家庭内だけでなく、家庭の外でも上記のような不適切な体験・傷つき体験があると、周囲に対して敏感に様子をうかがったり深く感じすぎて辛くなるということが生じます。
不当で不幸な体験があなたのせいではなかったことを理解して、その当時の(当時から続いている)傷つきや痛みをケア、解消していく必要があります。
不当な体験がある場合は、本などで不当さの理解をすること、信頼できる人に話すこと、カウンセリングを受けることが有効です。
複雑性PTSDの可能性も
家庭や学校・職場などで、不当に責められたり、冷たく無視されたり、貶められる体験が続き、それを誰にも相談できない・自分のせいなのだと呑み込んで長い年月を過ごしていく間に、複雑性PTSDとなることが(しばしば)あります。
複雑性PTSDというのは、長い年月の辛さが安心感・自尊心を奪い、強い傷つき・ショック体験となることから、普通の生活が送れなくなってしまったり、心身の状態が悪化してしまうことです。
PTSDは「生きるか死ぬかの思いをしたあと」に発症するけれど、いつも「生きていてもいいのか?」と思うような扱いを受けることはPTSDと同じ・時にそれ以上の深い傷つきを生じさせるのだとわかっています。
家庭や学校・職場で長く不適切な環境下にあり「自分はHSPだ」と感じておられる方の中に、複雑性PTSDの方が含まれている、と思います。
複雑性PTSDの場合、日常生活が阻害されていることも多く、専門家の支援が必要です。
HSPをめぐって
HSPは生まれつきの気質なので、途中からHSPになることはなく、その場合は家庭や学校・職場の辛い体験がきっかけになる、ということをお話しました。
もちろん、中には「HSP+家庭や学校・職場の辛い体験」という方もいらっしゃいます。
(HSPの気質が、5人に1人、いや3人に1人と言われていますから)
その場合は、非HSPより深く傷つきやすいため、日常生活への支障も出やすいといえるかもしれません。
HSPの自分に必要な環境調整やケアを行うのと同時に、過去の整理・ケアもすすめてくださることを願います。
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カウンセリング(対面・オンライン・電話)にできること
生まれつきではないHSPについてお話しました。
もし、あなたが何か過去の不当で不適切な体験から、HSPで生きづらいと感じておられたら、カウンセリングの利用を考えてみてくださるといいな、と思います。
というのは、HSP的な敏感さが強まっているときは、なかなか「普通に誰かに相談する」とか「信頼できる人を見つける」こと自体が難しくなっていることが多いからです。
カウンセリングを通じて過去を振り返り、あなたのせいではなかったことを整理して荷をおろし、傷のケアをしましょう。
もともとのあなたの持ち味をとりもどしましょう。
生きる過程で身に着けてきた敏感さが、ほどよく活用できるようにしていきましょう。
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