子どもの「死にたい気持ち」や自傷行為を打ち明けられた時 親の対応方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
昨年(2020年1月から11月までの11カ月間)の子どもの自殺が440人だった(毎日ひとりが命を絶っている)ことを受けて、生活基盤である家庭で「避けてほしい声かけ」についての記事を書きました。
今日は、子どもから死にたい気持ちを打ち明けられたり、子どもの自傷行為に気づいたときにどうしたらよいかについて考えてみたいと思います。
子どもから「死にたい気持ち」を打ち明けられたときにどう対応すればよい?
子どもから「死にたい気持ち」を打ち明けられたら、よく「否定しないで話を聴こう」と言いますね。
でも、これはなかなか難しい。
特に「否定しない」というところが。
子どもから「死にたい気持ち」を打ち明けられたら、仮に「もしや?」と思っていたとしても、やっぱり「まさか!」とショックを受けて固まってしまうのではないでしょうか。
こんな風にショックを受けると人は誰もが「闘うか逃げるか」のどちらかの反応をしてしまいます。
こんな風に:
闘うモード(相手を責める声かけ)
✔ ダメでしょ!
✔ 甘えてる!
✔ 自分のせいだよ!
✔ 迷惑かけちゃだめだよ!
✔ 我慢しなよ。
逃げるモード(関わらないようにしようという態度)
✔ 聞かなかったふり
✔ 気づかなかったふり
✔ 大したことはないはずだと思い込む
✔ わたしは関係ないという態度
これらは、自然な「ショック反応」なのですが、大人がこんな態度をとったら子どもは「わかってもらえない」「言わなきゃよかった」と感じてコミュニケーションを閉じてしまうでしょう。
そうしないためにおすすめしたいのが、自分の動揺をモニターして言葉にすることです。
例えばこんな風に。
まさか、あなたがそんなつらい気持ちでいたなんて、全然気づかなかった。ごめんね。どうしよう、わたしもとても動揺している。でも、話してくれて本当によかった。何があったのか、教えてくれるかな?
このように、自分の動揺した気持ちをリアルタイムで言葉にしていくと、自分自身が落ち着きをとりもどせますし、子どもに大人が何を感じているのかを伝えることができます。
大人は動揺してはいけない・動揺しているところを見せてはいけない、と思いがちですが、沈黙されたり、頭ごなしに叱られる、あるいは表面的な対応をされるより、ずっと子どもの気持ちに沿うことができると思います。
こうして、温度感を子どもに合わせた上で、何があったのかを聞いてみましょう。
子どもが話してくれた時
子どもがこれまでの経緯や気持ちを話してくれるときは、話をよく聴きましょう。
大切なのは子どもの気持ちを受け止めることです。
「上手に聴かなきゃ」とか「何かアドバイスしなきゃ」「自殺を思いとどまらせなくちゃ」などと考えるのは不要です。
話をしてくれたことをねぎらい、またいつでも話の続きができることを伝えましょう。
子どもが話してくれない時
子どもが詳しい事情を話してくれないとしても、「死にたい気持ち」を打ち明けてくれただけでも充分なのです。
教えてくれたことをねぎらいましょう。
そして、「話したくなったらいつでも聴く用意がある」ことを伝えておきましょう。
本人の準備ができたらきっと、お話してくれると思います。
正論は、避けたい
正論、というのは、例えば:
✔ 命を粗末にしちゃだめだよ
✔ 自分のことを大事にしなきゃいけないよ
✔ 親不孝だよ
子どもだって、これくらいのことはよくわかっているのです。
わかっているから苦しんでいるのです。
ですから、正論は言わないほうがいいのですが、つい言ってしまうかもしれませんね。
そんな時は、「言っても仕方がないとわかっているけど言ってしまう気持ち」をモニターして伝えましょう。
例えば「命は大事にしなきゃだめだよ!なんて、わかってるんだよね。それなのに死にたくなるくらい、苦しいってことなんだよね」のように。
「上から目線」で「自殺・自傷行為はいけないことだ」と断罪してしまうと、子どもはますます「自分はダメだ。こんな自分はいないほうがいいんだ」と思いつめてしまいますから、くれぐれも注意してください。
自傷行為を見つけた時
子どもの自傷行為の意味や対応方法については、こちらに書きましたので参考にしてください。
ひとりで支えないで
子どもの死にたい気持ち・自傷行為に気づいて、ひとまず本人の気持ちを(できるだけ)おだやかに受け止めたあと、次にどうしたらよいでしょうか。
それは親子ともに信頼できる人と共有・一緒に対応することです。
「死にたい気持ちや自傷行為」はとても重たい内容です。ひとりで支えようとしてもうまくいきません。(せっかく、子どもが打ち明けてくれる関係ができたのに、ひとりで話を聴き続けているうちに我慢できなくなり「いい加減、少しはがんばったらどうなんだ?」などと言ってしまう危険があります。)
家族や先生、お友だちなどと共有して、一緒に支えてもらいましょう。
学校の先生に話すときなどは、担任の先生だけではなく、「担任の先生と学年主任の先生」とか「担任の先生と保健室の先生」のように複数の先生に同席してもらって話をすることもお勧めです。もちろん、「担任の先生+スクールカウンセラー」という手もあります。
言いにくかったら最初はスクールカウンセラーに話して、対応を相談してもよいと思います。
子どもが「他の人に話さないで」というときは、「命にかかわることだから、お父さん(先生)には話すね」のように伝えましょう。
子どもが恥ずかしい思いをしたり、誰かに叱られてしまうことのないように、味方になってもらうと伝えます。
共有した大人は子どもの応援チームなので、いつでも話を聴く・相談にのる準備があることも伝えましょう。
カウンセラーに相談するとき
子どもの「死にたいくらい辛い気持ち」や「自傷行為がやめられない辛さ」をのりこえていくときに、カウンセラーに相談してチームになってもらうことはとてもよい方法です。
ただ、ひとつだけ注意点があります。それは、カウンセリングを受けることを「罰」や「矯正」扱いしないで欲しいこと。
また、子どもをカウンセリングにつなぐことで、大人が「後は任せた!」と手を引いてしまわないこと。子どもは、こういうところは誰でも敏感に察します(カウンセリングを受けることが見捨てられ体験にならないようにご注意くださいね)。
子どもが苦しんでいる間は、チームの大人もみな、心配して心を痛めながらともにいるのだ、ということが伝われば、子どもはやがて自分で気持ちを立て直していくでしょう。
まとめ
子どもたちが「死にたい気持ち」を打ち明けてくれた時や、自傷行為を見つけたときに、親(大人)はどんなふうに対応してあげれば良いかについて考えました。
子どもがこんな思いをするのは不憫ですが、大人と共にのりきることができると、子どもの自己肯定感(何があっても大丈夫)や社会に対する信頼感を獲得することができると思います。
ぜひ、ピンチをチャンスに変えてくださいますように。
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