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「嫌われたくない」心理〜トラウマがある人とない人の違い

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理士)です。

 

「嫌われたくない」と感じるのは誰にでもある自然な気持ちです。

 

でも、感じ方や行動は、その人が心理的に健康な普通の人か、それとも過去に傷つき体験がある人かによって大きくちがいます。その違いと、トラウマがある方の乗り越え方についてお話します。

 

【嫌われたくない気持ちの特徴】

トラウマのない人

「嫌われたくない」という気持ちは人間関係をスムーズにするための自然な欲求として働きます。自分の気持ちと他者への配慮のバランスをとることができます。

 

トラウマのある人

「嫌われたくない」が過剰な恐怖として働くため、自分の言動を過剰に制限します。

 

【嫌われたくない〜不安の強さ】

トラウマのない人

「嫌われたくない」と思うと一時的に不安を感じますが、その場面が過ぎると不安は自然と消えます。

 

トラウマのある人

「嫌われたくない」という気持ちが強く、ずっと続きます。そのため無理をして他人に合わせてしまいます。

 

【自己肯定感】

トラウマのない人

自己肯定感があるので、「もし嫌われても仕方がない」と感じられます。

 

トラウマのある人

自己肯定感がないので、他人から嫌われると自分の存在が否定されたと体験します。

 

【嫌われたくない〜行動例】

トラウマのない人

他人に嫌われたくないと思っていても、必要なら「ノー」が言えます。意見が違う時には自分の意見を伝え、建設的に話し合えます。批判を受けたら「改善すれば良い」と考えます。

 

トラウマのある人

他者に嫌われることは自分の存在価値がゼロになることなので、いつも他人に合わせます。自分の意見は呑み込み、必要な場面でも「ノー」を言うことができません。些細な違いや批判にも深く傷つき、眠れなくなる、引きこもりがちになるなど、日常生活にも大きく影響します。

 

トラウマのある人の「嫌われたくない」の背景にある体験

① 親子関係:条件付きの愛情が「嫌われたくない」を生む

幼少期の親子関係は、子どものこころの土台を作ります。親から十分な愛情や肯定を受けた子どもは、「自分はそのままで価値がある」と感じられるようになります。

 

しかし、トラウマを持つ人は、親からの愛情が条件付きだったり、不安定だったりする場合が多いです。

 

例えば、「いい子にしていれば褒められるけれど、失敗すると無視される」「感情を出すと怒られる」などの体験を繰り返すと、子どもは「嫌われたら見捨てられる」という恐怖を学びます。

 

すると「相手の期待に応えないと存在が否定される」という感覚が強まり、自分を押し殺してでも親に好かれようとするようになってしまうのです。

 

また、親が感情的に不安定だった場合、子どもは親の機嫌を伺いながら過ごすため、自分の気持ちを後回しにし、他人に合わせることが当たり前になります。この親子関係のパターンが、大人になっても対人関係の中で「嫌われたくない」という心理を強く支配する原因となります。

 

② 「嫌われる=危険」の固定化:トラウマがもたらす誤作動

トラウマを抱える人は、幼少期の体験から「嫌われること」が文字通りの危険として脳に刻み込まれます。これは、脳の扁桃体(危険を察知する部位)が過剰に活性化することによって起こります。幼少期に親から拒絶されたり、愛情を感じられない環境で育つと、子どもの脳は「嫌われること=生き残れない」と認識します。

 

この認識は、大人になっても容易に変えることができません。たとえ現実では「嫌われること」が直接的な危険を伴わなくても、こころや身体は過去の記憶に基づいて過剰に反応します。例えば、ちょっとした批判や、自分が「嫌い」と思っている人からの無視は受け流せばよいと頭でわかっていても、まるで自分の居場所がなくなってしまうかのようにつらく感じられてしまうのです。

 

その結果、他人に合わせすぎたり、自分の感情を抑え込む行動が習慣化してしまうのです。

 

③ 境界線の曖昧さ:自分と他人を区別できない苦しみ

トラウマを持つ人は、自己と他者の境界線が曖昧になりがちです。これは、幼少期の家庭環境で親との心理的境界が適切に築かれなかったことが原因です。例えば、親が子どものプライバシーを尊重せずに過干渉する、または逆に放任する場合、子どもは「自分の領域」と「他人の領域」を区別する感覚を養うことができません。

 

その結果、大人になっても他人の感情や期待を自分の問題として引き受けてしまいます。例えば、「相手が怒っているのは自分のせいだ」と考えたり、「相手を満足させなければ自分の価値がない」と感じることがあります。これにより、自分の意見や感情を抑えてでも、相手に合わせようとする傾向が強まります。

 

また、境界線が曖昧だと「他人の期待を裏切ること」が「自分の存在を否定されること」と感じやすくなります。そのため「嫌われたくない」という感情を一層強化し、無理を重ねてでも他人に好かれようとしてしまいます。

 

過剰な「嫌われたくない」心理を手放すために

嫌われることへの過剰な恐怖は、どうすれば手放すことができるでしょうか。

 

自己理解

自分が「なぜ嫌われたくないと感じているのか」を振り返ってみてください。

 

親子関係など、過去のトラウマ体験が影響している場合、「嫌われたくない」気持ちは、過去の恐怖のフラッシュバックから生じています。

 

ふりかえりを通じて、現在と過去をわけて考えてみましょう。現在と過去を混ぜ合わせると強い恐怖となりますが、わけられると自分で冷静に対処できるようになります。

自分の気持ちに気づく

いつも不安が高いと、自分の気持ちに気づくことが難しくなります。

まずは、「いやだ」とか「不安なんだな」のように、今感じている気持ちに気づき、言葉にします。そして、その不安な気持ちをやわらげる行動をしてみましょう。

 

小さなことでも、自分を大切にする行動が取れるようになると、少しずつ恐怖に飲み込まれずにいられるようになっていきます。

 

自己肯定感を育てる

自己肯定感とは、今のまま、ありのままの自分で大丈夫、という感覚。(自分はすごい、自信がある、という感覚ではありません。)

 

失敗を気にしてクヨクヨする自分、不安な気持ちを抑えられない自分も、大切な自分ですから、まずは、丸ごと「それでいい」と肯定してあげます。

 

「だめ」な自分を否定しないでいられるようになると、不安もやわらぎます。

 

セルフケアをする

自分のこころと身体のケアをしましょう。基本となるのは、ごはんをしっかり食べて、夜は早く寝ること、運動をすること。自分が心地よいと思うことをすることです。

 

これにより自律神経が整うと、自分の感情コントロールもずっとしやすくなります。

 

カウンセリングを受ける

トラウマの影響を自分で手放すのが難しい理由は、過去を生き延びるために身につけた過剰適応のスキルが今の自分を苦しめてしまっていること。また、傷つきが複雑にからみ合い、どこからほぐしてよいかわからないことです。

 

まずは、自分にできることから試みることはとても大切ですが、カウンセラーと一緒に自己理解をしたり、恐怖を手放すワークをすることで、しっかりと最後までやり抜いて、「トラウマのない人」と同じような健康でおだやかな生き方をすることができるようになります。

 

はこにわサロンでも、トラウマケアのカウンセリングをしていますから、ぜひ、ご相談ください。

 

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まとめ:自分らしさを取り戻すために*

「嫌われたくない」という心理は誰もが持つものですが、その強さや影響の大きさはトラウマの有無によって大きく異なります。

トラウマが原因でこの感情が過剰に働いている場合、それが生きづらさや孤独感につながることもあります。

 

過去の経験が原因でも、今から自分を癒し、新しい価値観を育てることはできます。

 

少しずつ自分に思いやりを持って優しく接する方法を獲得し、自分の意見や感情を大切にしてみましょう。

 

そして、カウンセリングという選択肢も検討してください。過剰な不安を手放して、自分らしい生き方を取り戻しましょう。

 

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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