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【愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマ】どれも当てはまる時

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田美智子(臨床心理士・公認心理師)です。

複雑性トラウマの方は、これまでに自分が「愛着障害では?」や「アダルトチルドレンだ」と思ったりしてきた方が多いと思います。

そこに「複雑性トラウマ」って名前が出てくると、自分がどれに当てはまるのか、どの対応方法が適切なのかわからなくて混乱する!と感じている方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、愛着障害とアダルトチルドレンと複雑性トラウマの違いと、共通する最もよい対応方法についてお話したいと思います。

 

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマの歴史

結論からお伝えすると、この3つは、それぞれ異なる理論から生まれた概念ですが、実際は重なっていることが多いです。まずは、歴史を振り返ってみましょう。

 

愛着理論(1950年代〜)―人とのつながりが心をつくる、という発見

第二次世界大戦後、孤児や施設で育つ子ども、母子分離といった問題が社会的に大きく取り上げられるようになりました。こうした背景の中で、「子どもにとって安心できる大人との関係はどれほど重要なのか」という問いが生まれます。

この問いに応える形で提唱されたのが、精神科医ジョン・ボウルビィによる愛着理論です。ボウルビィは、子どもにとって「安心できる養育者との関係」は、単なる情緒的なものではなく、生存にとって不可欠なものであると考えました。

さらに、メアリー・エインズワースは「ストレンジ・シチュエーション」と呼ばれる実験を通して、子どもがどのように養育者と関わるかを観察し、愛着のスタイルを整理しました。そこから、安定型、不安型、回避型といったパターンが明らかになっていきます。

この時代は、「人とのつながりが心の土台をつくる」という理解が大きく進んだ時代だったと言えるでしょう。

アダルトチルドレン(1970〜80年代)―家庭環境が生き方に与える影響への注目

1970年代のアメリカでは、アルコール依存症の親を持つ家庭で育った子どもたちが、大人になっても生きづらさを抱え続けることが問題として注目されるようになりました。

この流れの中で、ジャネット・G・ウォイティッツが提唱したのが「アダルトチルドレン(AC)」という概念です。ウォイティッツは、子ども時代の家庭環境の影響が、大人になってからの思考や行動、人間関係のパターンに深く関わっていることを指摘しました。

たとえば、人の顔色を過剰にうかがってしまう、自己肯定感が低い、対人関係が不安定になりやすい、といった特徴が見られることがあります。

もともとはアルコール依存症の家庭に限った概念でしたが、その後、機能不全家族全体に広がって理解されるようになりました。日本では1990年代以降に広く知られるようになっています。

この時代は、「家庭環境が人格や生き方にどのような影響を与えるのか」に光が当てられた時代と言えるでしょう。

複雑性トラウマ(C-PTSD)(1990年代〜)―トラウマが心と身体に残る仕組みの理解へ

従来のPTSDは、事故や災害といった単発の強い出来事を前提としていました。しかし臨床の現場では、虐待やネグレクト、長期的な支配関係のように、繰り返し続くストレスによる影響を、従来の枠組みでは十分に説明できないという課題が見えてきます。

こうした背景から、精神科医ジュディス・ハーマンが1992年の著書『トラウマと回復』の中で提唱したのが、複雑性トラウマ(C-PTSD)という概念です。これは、長期的で対人的なトラウマが、感情や自己認識、対人関係、そして身体の反応にまで広く影響を及ぼすことを示したものです。

その後、この概念は発展を続け、2018年にはWHOの国際診断基準であるICD-11において、正式な診断として位置づけられました。

この時代は、「トラウマがどのように心と身体に残り続けるのか」、そして「どのように回復していくのか」を理解しようとする時代と言えるでしょう。

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマの違い

では、この3つはどう関係しているのか。わかりやすくするため、パソコンに例えて説明してみようと思います。

●愛着=OS(初期設定)
●アダルトチルドレン=アプリ(生き方のパターン)
●トラウマ反応=セキュリティ・システム(危険への反応)

そして、フラッシュバックや回避、過覚醒といった、「危険を察知するセキュリティ警報が鳴り続けた結果、システム全体に影響が出ている状態」=複雑性トラウマです。

 

愛着(=OS・初期設定)

幼少期の親子の関わりは、パソコンでいう「OS」「初期設定」に例えられます。

●「世界は安全か?」

●「人は信頼できるか?」

●「困ったら助けてもらえるか?」といった前提がここで設定されます。

 

安心や安全という初期設定がうまく設定されないと、

●人を信用できないため、社会とうまく関われない

●感情がうまく働かない

●失敗や傷つきを引きずりやすくなります。

 

アダルトチルドレン(=アプリ・設定)

アダルトチルドレンは、アプリ=家庭の中で身につけた“生き方のクセ”に例えられます。

例えば:

●常にバックグラウンドで「人の顔色読みアプリ」が起動

●「NOと言えない設定」がデフォルトON

●「自己犠牲モード」が常時ONなど、

その家庭で生き延びるために必要だったアプリが、ずっと動いています。

 

複雑性トラウマ(=セキュリティ・システムが鳴り続けてシステム全体に影響が出ている)

複雑性トラウマの特徴は、PTSD部分(侵入・回避・過覚醒)と複雑性PTSD(感情調整の困難、否定的な自己概念、対人関係の困難)とに分けられます。

まず、トラウマ反応は、セキュリティ・システムに例えられます。危険に反応して、フラッシュバック、過覚醒、回避などのアラーム反応が鳴り続けます。

すると、パソコン全体に影響が及びます。例えば、「自分には価値がない」「恥ずかしい」「罪悪感」と言った否定的な自己概念は、愛着障害と同様で、初期設定にまで影響していることがわかります。

感情調整の困難と、対人関係困難はどちらも生き方のクセ=アプリ、とに例えて考えられます。例えば、

●「感情ミュート機能」がONで、感情が感じられない(感情調整の困難)

●「自分より他人優先アルゴリズム」が組まれている(対人関係の困難)のように。

このように、危険を感知したセキュリティ・システムが、アラームを鳴らし続けた結果、初期設定にもアプリにも影響が出ている状態が、複雑性トラウマと考えられます。

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマの関係性と対応法

愛着障害がある人は、アダルトチルドレンにもなり、複雑性PTSDにもなりやすいです。

アダルトチルドレンの人には、大抵、愛着障害があり、複雑性PTSDに該当します。

複雑性トラウマは、いじめやハラスメントなどの影響で生じることがあり、親子関係から生じるとは限りませんが、安心感や信頼感が脅かされた状態に適応するために、さまざまなアプリが搭載されるようになるという点で、親子関係による複雑性PTSDと同じ症状が出てきます。

このように、この3つは、重なり合い、補完しあっている関係であると言えます。

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマに共通する対応方法

これらに対応する方法で、共通して大切なことは「安心・安全を増やす」ことです。3つの領域から説明します。

①身体の安心・安全

セキュリティシステムが作動すると、心だけでなく、身体、自律神経が脅かされます。いつも体に力を入れて硬くなっていたり、呼吸が浅い、動悸がする、夜眠れない、ちょっとの音にもビクッとするなどがあります。

まずは、身体と自律神経を落ち着かせると、セキュリティシステムが過剰反応しないで済むようになります。

具体的には

●呼吸を整える

●やさしくストレッチをする

●温かい飲み物を飲む

●心地よい毛布にくるまる、など。

他にもたくさんの方法がありますが、身体や自律神経が整うことを生活の中に取り入れてください。

②関係の安心・安全

親子の愛着をベースに、人や社会への安心感や信頼感が作られていないと、人と関わることを避けたり、強く求めすぎてうまくいかないということが起こりやすいです。

安心や信頼を獲得するのは、簡単なことではありませんが、方法はあります。例えば、

●100%の信頼を目指さない(部分的でOK)

 →「この人のここは大丈夫かも」という感覚を大切にします

●小さな安心を感じる体験から始める

 →感じの良い店員さんに出会う、ありがとうを伝えてみる、など

●最初は距離のある対象から試す

 →動物と触れ合う、自然の中で過ごす、など

●過去の安心できた関係を思い出す

 →「あの人といるときは大丈夫だった」という感覚を手がかりにする

小さな試みを重ねていって、「案外大丈夫」や「よかった・嬉しかった」を増やしていきます。

③生き方のパターンを見直す

次に取り組むのが、生き方のパターンの見直しです。例えば、

●自分の気持ちがわからない

●我慢し続けて爆発する

●自分にダメ出しをし続けてしまう

●白黒思考

●自己犠牲

●対立を避ける・・・などなど

こうしたパターンは、安心や信頼が十分に得られない環境の中で、常に不安や緊張を抱えながら過ごしてきた結果として身についた、「生き延びるための方法」です。ですから、一つひとつに気づきながら、少しずつ見直していくことが大切になります。

ここで大事なのは、これらのパターンを急に否定しないことです。一見すると不適切に思える行動であっても、これまでの環境では必要だった大切な工夫です。無理に変えようとしたり、理想を目指して頑張りすぎてしまうと、うまくできない自分を責めることになり、かえって苦しさが強くなってしまいます。

 

おすすめなのは、①の身体と②の関係の安心・安全とを整える取り組みとあわせて、無理のない範囲で少しずつ試していくことです。

たとえば、身体の緊張に気づいたときに「無理していたんだな」と受けとめてあげることで、自分がどんなときに苦しくなるのか、どうすると少し楽になるのかといった感覚が、少しずつわかるようになっていきます。

また、これまで自己犠牲的な関わりが多かった方が、少しずつ違う関わり方を経験していく中で、相手も自然に何かを差し出してくれるような関係や、安心していられる関係に出会うことがあります。そうした体験を通して、信頼感が回復していくことも少なくありません。

このように、回復は一つの方向から進むものではなく、身体・関係・行動が重なり合いながら、ゆっくりと進んでいくことが多いものです。

 

どの「名前」を選ぶか?

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマの中で、どの言葉がしっくりくるかは、人それぞれです。ご自身が理解しやすい言葉を選んでいただいて構いません。

そのうえで、ひとつの視点として、複雑性トラウマから捉えてみることをおすすめしたいと思います。複雑性トラウマの視点では、愛着の問題やアダルトチルドレンとしての生きづらさも「長い時間の中で積み重なってきた心と身体の反応」として理解することができます。

そのため、どう整えていけば楽になるのか、という観点から、回復の手立てを考えやすくなるというメリットがあります。

また、複雑性トラウマは、現在、WHOの国際診断基準であるICD-11において診断名として位置づけられており、医療の中でも扱われる概念です。そのため、必要に応じて、医療機関との連携や、より専門的なサポートにつなげやすいという側面もあります。

まとめ(愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマ)

愛着障害・アダルトチルドレン・複雑性トラウマ。自分は、どれに当てはまるんだろう?という疑問は晴れたでしょうか。

無理に1つに絞るより、多面的に理解して、安心と安全を増やしていくこと、少しずつ回復していくことが大切です。

いくつか参考になる別記事もご紹介しますので、合わせてお読みいただけると幸いです。

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