なんて無力なんだと思う。でも、それが小さな違いを生み出しているかもしれない。
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
不登校の子が、スクールカウンセラーのわたしに会いに学校に来てくれる(もちろん、会うのは相談室)。
こんな時に、校門までお迎えに出ることがあります。
(登校と下校に配慮すると、相談室に来られるようになって、相談室の中では明るい表情になる子って案外多い気がします。)
でも、待ってても会えない日も少なくありません。
こんなことが何週間、何ヶ月か続くこともあります。
あるいは忙しすぎて校門まで迎えに行けない時もあるんですが。
スクールカウンセラーと羊男
「今日は来られるかなぁ」と思いながら校門で待っている時に、わたしの中によく浮かぶイメージがあります。
それは、村上春樹さんの小説『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる”羊男”です。
「おいらもちゃんとここにいる。ここにいてあんたを待っている。みんなきちんとしたことなんだ。ちゃんと考えてあるんだ。あんたが帰ってこられるように。みんながちゃんと繋がれるように」
「ここでのおいらの役目は繋げることだよ。ほら、配電盤みたいにね。いろんなものを繋げるんだよ。ここは結び目なんだーだからおいらがつなげて行くんだ。ばらばらになっちまわないようにね、ちゃんと、しっかりと繋げておくんだ。それがおいらの役目だよ。配電盤。繋げるんだ。あんたが求め、手に入れたものを、おいらが繋げるんだ。わかるかい?」
村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』
村上春樹小説に登場する”羊男”ってどんな人なのか?
この小説を読んだことがない方のために補足すると、羊男というのは、主人公の男性を応援するために、現実ではないけれど大切な場所に存在していて、主人公のためにせっせと配電盤を繋げているひとです。
ちなみに、この主人公は、冒頭で電話局に勤めている女性とつかの間の恋人関係にありますが、配電盤がなんだかわからないなーという方は、昔の電話局(電話線が集まっている場所、昭和のある時期まで人間が物理的に電話を繋ぐ役割をしていた頃の)をイメージしていただくのがいいかもしれません。(若い方には、こちらも難しいかもしれませんが・・・)
つまり、わたしは自分のことを、学校の羊男じゃないかーと、思っています。
見えないところで繋げる仕事をしている人。
ある種、本当に役に立っているのかいないのか、よくわからない部分がある人。
ある不登校生徒との面談の思い出と、その子のことを信じるということ
ある中学3年生の生徒との思い出です。
相談室登校をしていた男の子が進学校を受験したいと言い出した時に、誰もが「無理だろう」と思っていて、実はわたしも「無理かも」と思っていたけれども、「やってみましょうよ!」と言った時のことです。
わたしが「やってみましょう!」と言ったから、彼が高校に合格できたとか、高校でがんばれたと思っているわけではもちろんありません。
現実はそんなに甘くはありません。
けれども、「なんの根拠もないけど絶対信じてるからね!」という応援は、彼が人生の分かれ道にさしかかった時、失敗しそうな道を歩いているような微妙な時に、小さな小さな支えになったかもしれない、とは思っているのです。
それこそ、荒唐無稽な自己満足に聞こえてしまうかもしれません。
でも、ほんのティースプーン一杯分の小さな応援が違いを生み出すことはあるのではないか。
うまくいっても、いかなくても、大事なこと
もちろん、羊男的な(役に立っているのかどうかよくわからない)支援が、何の成果も生み出さない時もあります。
それでも、羊男がいること。
羊男をやり続けること。
それがわたしにとっての、セラピスト・スクールカウンセラーあり方です。
ご参考になれば・・・
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