HSP(ひといちばい敏感な子供)の学校生活応援。親にできることは?
スクールカウンセラーをしている臨床心理士の吉田です。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、ひと一倍感じやすい人のことで、子どもの場合はHSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)ともよびます。
(HSPの子どもについて知りたい方はこちら)
それはつまり、自分の気持ちにも、周囲の様子に対しても、小さな違いをキャッチする力があるということ。この豊かな感受性は、人間の性質としては、まぎれもない長所です。
けれど、学校(幼稚園・保育園)のような集団生活・集団学習の場においては、不利に働いてしまうことが少なくありません。
HSPの子どもが学校で直面する困難にはどんなことがあるのか。HSPの子どもたちの成長に親に何ができるのかについて、考えてみようと思います。
HSPの子どもは自分にプレッシャーをかけやすい
HSCの子どもは、自分の出来・不出来に敏感です。
そのため、「ちゃんとやりたい」気持ちが強く、「ちゃんとできないとダメだ」と自分にプレッシャーをかけてしまうことが多いようです。
学校(幼稚園・保育園)のように、先生(指導者)がいて、子どもたちが教わる立場・頑張って成果を出すことを求められる立場では、「自分が自分にかけるプレッシャー」+「先生からの期待」という二重のプレッシャーがかかってしまうのです。
すると、学校はHSPの子どもにとって「常に強いプレッシャーと戦う場所」になってしまうのです。
もちろん、先生や友だちと関係ができて、教室が安心できる場所になることや、周りの子たちを観察した結果、「無理しなくても大丈夫そうだ」と感じることで、二重プレッシャーを弱めることができます。
ただ、先生・生徒との関係性や教室環境は、日本ではほぼ、毎年度変化しますから、その度ごとに、学校を安心できる場にリセットするための労力がかかります。
もちろん「ちゃんとやりたい気持ち」と「周囲を観察して学習する力」が高いので、学年が上がるにつれて慣れてくる・困らなくなることは十分あります。(ただ年齢が上がると、前思春期・思春期など、情緒不安定になりやすい時期に入るため、調子を崩してしまうこともあります。)
【ポイント】
● HSPの子どもは「ちゃんとやりたい気持ち」が強いので、「ちゃんとがんばろうね」のように更にプレッシャーをかける声かけは不要です。
HSPの子どもは失敗を必要以上に怖がる傾向がある
HSCには、失敗を必要以上に恐れるという特徴があります。
それは、例えば、「算数の小テストにX(バツ)がついた」というような些細なことにでも敏感に反応し、大きく動揺して自信を失ってしまうようなことです。
一問だけ不正解の95点だったとしても、「X(バツ)をもらった自分はダメな子だ」と思いつめ、自己否定してしまうのです。
では、どのように対応してあげたら良いのでしょうか?
【ポイント】
① 子どものショックな気持ちを受けとめる
② 「怒っていないよ」と伝えて安心させる
③ 学校のメカニズムを説明する
もう少し具体的に説明しましょう。
① HSPの子どものショックな気持ちを受けとめる
まず最初にしてあげたいのが、子どものショックな気持ち(動揺)を受けとめてあげることです。
こんなに些細なことで、子どもの気持ち(自信)に大きなヒビが入ってしまうと思うと、親も思わずショックを受けて動揺してしまうのではないでしょうか。
その気持ちは、子どもの動揺に近い気持ちであるように思います。
② 「怒っていないよ」と伝えてHSPの子どもの気持ちを安心させる
HSPの子どもは「ちゃんとできなかった=ダメな子=叱られる」という不安が生じています。
どうぞ、「お父さんやお母さん、先生も、あなたのことをダメだと思っていないし、怒っていないよ」と伝えてあげてください。
「よく頑張ったな、えらいなって思っているよ」のように、頑張ったプロセスを褒めてあげてください。
こう伝えてもらうことで、HSPの子どもは安心感を取り戻すことができます。
③ 学校のメカニズムを説明することでHSPの子どもは安心できる
①子どもの辛さに共感し、②「怒っていないよ、安心して大丈夫」と伝えたら、最後にして欲しいのが学校(幼稚園・保育園)のメカニズム(仕組み)の説明です。
例えば、こんな風に:
● 学校は子どもたちが集まって、勉強したり遊んだりして成長する場所だよ。
● だから、学校ではいつも、知らないことを勉強するし、できないことを練習する。最初はできないのが当たり前。(最初からできたら学校はいらないよね。)
● 少しずつ練習してできるようになったら、それでいいんだよ。
幼稚園や小学校低学年のお子さんでは、この説明が一度で理解できないかもしれません。頭で理解しても、納得できないということもあるでしょう。
ですから、何度でも繰り返し、納得がいくまで、伝え続けてあげましょう。
HSPの子どもの慎重な性質が不利になることがある
HSPの子どもは、基本的にとても慎重派です。
よく周りを観察して、求められていることは何かを把握し、自分がそれを間違いなくやれるとわかるまでは行動を起こしません。
新しい環境や行事では、観察しているうちに終わってしまうことがあります。
すると「サボっている子」「わがまま」「プライドが高い」というような誤った評価を受けてしまいがちです。
加えて「子どもらしくない」とか「消極的」などと言われてしまうことも。
【ポイント】
● 本人がチャレンジする気持ちを作っていくプロセスを見守ってあげましょう。
● 新しい環境や行事について、親や先生から目的や内容を伝えてあげたり、励ましたりすることがプラスに働くこともありますが、プレッシャーになる子もいます。子どもの様子を見て加減しましょう。
● 参加できた・できないにかかわらず、本人の目に見えないところで行われた心のワーク(努力)に対して「よくがんばったね!」と伝えてあげましょう。
HSPの子どもは先生のクラス全体指導を個人的に受けとめてしまう
学校では、先生がクラスの子ども全員(または学校全体)に注意や指導が入ることがよくあります。
例えば、廊下で騒いで怪我をした子が出た、という場合に担任からクラス全体に「廊下は遊ぶところではありません。廊下で騒いではいけません」という指導が入る。
先生がこの注意を一番伝えたい相手は、廊下で遊んでいた子たちなわけですが、「みんなも注意しようね」と呼びかけているわけです。
こんな時、多くの子どもたちは、注意を適当に聞き(流し)ます。
廊下で遊んでいた張本人たちも、注意を適当に聞き流していて、また同じことを繰り返すことだって(よく)あるものです。
一方のHSPの子どもは、「先生から個人的に呼び出されて注意をされた」くらいのインパクトのある受け取り方をすることが少なくありません。
「そういえば、昨日の昼休み、廊下でお友だちとちょっとふざけちゃったな。あれはいけないんだな。だから先生が僕のことを注意したんだ。これからは気をつけなくちゃ。」
このくらい真剣に反省してしまうのです。
実際はこの子の心配している”廊下のおふざけ”は先生が見ても、注意の対象にはならないことも多いと思います。
でも、本人はすごく反省して、自分の行動を律しようと思ってしまう。あるいは、過剰に反応して、廊下でふざける子どもたちに注意をして回ってしまって、お友だちから疎まれてしまう。
こういう部分で生じたギャップが、HSPの子どもの学校生活を窮屈にしてしまうことは少なくありません。
【ポイント】
● このような場面にタイムリーに親が気づいてフォローするのは至難の技です。日頃から先生と情報共有できる関係を築いておき、必要に応じて手を差し伸べられるといいですね。(具体的な方法については後ほど書きますね。)
HSPの子どもはお友だちからいじめられたと感じやすい
HSPの子どもは、対人関係でも感じやすく傷つきやすい傾向があります。
子ども同士の遠慮のないストレートな物言いや「お互いさま」で済ませられるとよいような小競り合いで深く傷つき「いじめられた」と感じてしまうのです。
最初は同情してくれたお友だちや先生も、次第に「大げさだよ」とか、「そんなこと気にするなよ」と言われてしまうようになりがちです。
そうすると、自分の気持ちをわかってもらえなかった悲しさから、ますます傷ついてしまいます。
このようなすれ違いは、HSPの子どもにはどうしても生じやすいので、サポートが必要だと感じられる間は、親が上手にリードして本人と環境に働きかけるのが望ましいように感じます。
【ポイント】
● 本人の傷ついた気持ち、悲しい気持ちを受けとめる。
● 相手の子の気持ちを説明してあげる。説得するのではなく、淡々と状況を説明する方がいいようです。
● 本人の感じやすさについて先生に伝えて、必要なフォローをお願いする
HSPの子どもの特徴を先生に伝えるコツ
HSPの子どもにとって学校は、他の子どもたちにはない数々の試練がある場所です。
先生に理解してもらい、必要なフォローが受けられるかどうかは子どもの学校生活の質にも、子どもの成長にもダイレクトに影響する大切なことです。
【ポイント】
● まず、この1年間、先生と保護者が、子どもを育てるために協力していける関係性を作りましょう。
● 一方的に学校への要望を伝えるのではなく、家庭でできることを分担する気持ちを伝えましょう。
● その上で、配慮してほしいことを伝えるわけですが、「こうしてほしい」「こうしないでほしい」事柄についてその意図(HSPの独自性)を先生にも理解してもらえるように伝えましょう。
● 先生が適切な対応をしてくれたと思われる場合は、「先生のお陰で良い学校生活が送れています」と感謝の気持ちを伝え、先生のモチベーションを高めましょう。
● 子どもにとって先生が自分の味方であることはとても大切です。不信感が湧いてしまうような時も、できれば大人同士で話し合い、子どもの「信頼できる先生像」を守りましょう。
● 担任の先生以外の先生方の協力も仰ぎましょう。支援コーディネーターを担当する先生や保健室の先生、スクールカウンセラーなどにも相談して見ましょう。校内で立体的な支援(見守り)をしてもらうことで環境整備をしましょう。
HSPの子どもの学校生活を応援するためにできること〜まとめ
HSPの子どもは、普通の子どもより学校生活に困難な体験が多くなりがちです。
けれど、幼少期・学齢期にひといちばいの愛情を与えてあげると、ひといちばい大きく成長することができると感じています。
【ポイント】
● 本人の辛い気持ちに寄り添う
● 失敗しても大丈夫と伝え続ける
● 子どものペースに合わせる
HSPの子どものカウンセリングを行なっています。
もし、行き詰まって辛かったら、ひとりで悩まずに、相談にいらしてくださいね。