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思春期の子どもの自傷行為(リストカット)親はどう接するのがよい?

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理士)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)

 

リストカットなどの自傷行為は、10代の子どもの10人にひとりが経験すると言われます。

お子さんの自傷行為を知って、困惑してしまうご家族も多いことでしょう。

でも、自傷行為には子どもからのSOSメッセージが隠されていますから、理解して係ることで、子どもの成長を応援できる(肯定的な体験にできる)のですよ。

ピンチをチャンスに変えていけるといいなぁ!

 

この記事は、子どもの自傷行為(リストカット)にどう対応すればよいかと悩んでいるお父さん・お母さんに向けて書いています

 

自傷行為(リストカット)について

日本では、初めて自傷行為(リストカット)をする年齢として最も多いのは12〜13歳であるという調査の結果があります。

思春期に入ること、中学校という新しい環境での生活が始まることが、何かしら影響しているように感じられますね。

 

10代の子どもでは、10人にひとりが自傷(リストカット)経験があると言われており、そのうち大人が気づけるのはたった3%です。

 

ちなみに、自傷(リストカット)というと「周りへのアピール」と思われがちですが、実は「ひとりぼっちで、誰にも話さない」のが大半だから、自傷のたった3%しか大人が気づいてあげられない)です。

 

自傷(リストカット)の理由は?

では、子どもたちは、なぜ自傷(リストカット)するのでしょうか?

この統計から答えが見えてきます。

 

自傷(リストカット)の理由① イライラを抑えるため・つらい気持ちをすっきりさせたい 

自傷行為の理由で最も多いのは「イライラを抑えるため・つらい気持ちをスッキリさせたくて」で2/3弱を占めます。これは、つまり、「ネガティヴな感情を、自分でなんとか処理しようとして」自傷(リストカット)しているのだということがわかります。

 

自傷行為は決して望ましくはありませんが、子どもなりの試みであることを大人は理解する必要があります。

 

けれど、子どもが感じているつらさを、子ども一人で抱え、処理する・解決することは困難であることを理解して、子どもを追い詰めることなく、つながりましょう。

望ましいこと

◎ 「つらい気持ちなんだね」と受けとめる

◎ 「気持ちを聴かせてほしい」でも「言葉にできなくても構わない」と伝える

◎ 孤立させない・穏やかに共にいる

 

避けたいこと

✖️ 「ダメでしょ!」「ちゃんと言葉にしなさい」などと叱る

✖️ 「アピールでしょ」と決めつける

✖️ 「弱い気持ちに負けちゃダメだよ」「がんばれ」などと励ます

✖️ 気づかないふり、見て見ぬふりをする

 

ここでひとつ確認したいことがあります。

お子さんは、これまで、苦しいこと、悲しいこと、イライラした時に、どんな対処をするタイプのお子さんだったでしょうか?

 

家庭という安心できる場では、気持ちを発散したり、信頼できる人には相談したりできていましたか?

 

と言うのも、イライラやつらい気持ちを自傷で解消しようとする子どもたちの中に、「ネガティヴな気持ちはいけないもの」だと誤解して育っていきた子どもがいるのではないか?と感じられるからです。

 

ネガティヴな気持ちも、わたしたちのこころの大切な一部分なのですが、ときに「よくないもの」として排除されてしまいがちです。それは、しかしながら、大変危険です。「怒り」を例にしてこちらで説明しています。

 

自傷(リストカット)の理由② 自分のつらさをわかって欲しくて

約2割の子どもたちは「自分のつらさをわかってほしい、でも言えない」ことから自傷しています。

どうぞ「うまく言えなくてもいいから、教えて欲しい」と伝えてあげましょう

 

いずれは、自傷ではない方法で伝えられるといいのですよね。

 

でも、焦りは禁物です。大人が聴く姿勢を見せても、しばらくは自傷してしまうかもしれませんが、否定しないで「つらかったんだね」と寄り添ってあげられるとよいです。

 

それから、「自殺=苦しいアピール」「注意を引きたいだけ」「死にはしない」と誤解されることがあります。

最初のグラフでお話ししたように、自傷は大半がひとりぼっちで行われ、誰にも話されません。ですから、「自傷=狼少年(注意を引きたい・騒ぎを起こしたい)」のようにとらえると見誤ります。

 

それより「本当は伝えたい気持ちがある」という点に希望を見出して、繋がってくださるとうれしいです。

 

自傷(リストカット)の理由③ 死にたくて

子どもの「死にたい気持ち」を理解して寄り添うのは、とてもむずかしいことです。

 

大人はつい「死んじゃダメだよ」と言いたくなります。

 

もちろん「死んで欲しくないと思っている」ことは伝えてもよいのですが、「死にたい」に隠された気持ちを聴けるといいなぁと思います。

 

死にたいほどつらいと感じているんだね。

もうこれ以上は我慢できないと思うのかな。

それとも自分には価値がないと感じちゃうのかな。

こんな風に問いかけてみてください。

 

子どもから答えを引き出せなくてもよいのです。

 

大人が、上のように問いかけをしたときに、ご自分の中に湧いてくる気持ち(苦しい、悲しい、でも何もできない、どうしたらよいかわからない)は、おそらく子どもが感じている苦しさと重なる部分があります。子どもに寄り添う糸口となるのではないでしょうか。

 

それから、自傷と自殺は違いますが、10代の子どもにとっては「自殺のつもりの自傷」があります。(死ぬつもりだったけど、リストカットでは死ねなかった、と言うような。)

 

ですから「自傷くらいじゃ死なない」とは思わないでください。実際、10代で自傷をした子どもは、自殺のリスクが数百倍にのぼると言われています。

 

自傷行為(リストカット)のリスク

自傷行為(リストカット)には、「依存性がある」と言われています。

 

自傷をすることで「気持ちがすっきり」できたり、一時的にせよ「つらさを忘れられる」のですが、繰り返すうちにその効果が感じにくくなってきます。それで、回数や自傷方法がエスカレートしやすいのです。

 

また、冷静になると、「またやってしまった」と罪悪感を感じたり、自分はダメだと感じてしまうでしょう。自己肯定感を擦りきらしてしまいます。それが、更なる自傷行為につながってしまいます。

 

また、他の自傷的依存行為(摂食障害、薬物依存など)につながる恐れもあります。

 

子どもの自傷行為に気づいたら、どうぞ、「思春期によくあること」などと軽く思わないで、できるだけ早く、子どもとの対話を試みてくださることをお願いします。

 

子どもの自傷にどのように対応すればよいか

① 子どもに寄り添う

子どもの自傷には、子どもからのSOSメッセージがこめられています。

そのメッセージに耳を傾けてみましょう。

「自傷しちゃダメだよ!」ではなく、「つらかったんだね」と寄り添って「つらい気持ちを聴かせてほしい(でも無理に言語化しなくても構わない)」と伝えましょう。

 

② 子どもを責めない

「自傷したらいけない」と否定しないでくださいね。

すぐにやめられなくても、非難しないで、「つらかったんだね」と繰り返し伝えましょう。

このように、否定されずに、穏やかに(あるいは淡々と)受けとめてもらう体験をするうちに、自傷しないですむようになっていきます。

 

③ 無視しない

どうしてよいかわからなかったり、親が心配するとエスカレートするのでは?と思って、「見て見ぬ振り」をしてしまうことがあると思います。

 

でも、子どもには「自分はダメなんだな」「価値がないんだな」と感じられるでしょう。

 

どうしてよいかわからない時は、「気づいているよ。どうしたらよいか、親も考えるよ。だから、ちょっと待ってほしい」と伝えてみてはどうでしょうか。少し冷静に考える時間を持つことは、双方にとって意味があると思います。

 

④ 家庭だけで抱え込まない

子どもの自傷は、親にも大きなショックを与えます。

 

つい感情的に子どもを責めてしまったり、戸惑いから無視してしまったり。後から後悔するけど、どうすればよいかわからず、途方に暮れてしまうのではないでしょうか。

 

どうぞ、ご家庭だけで解決しようとせずに、親子ともに信頼できる相談先とつながってくださることをお勧めしたいです。

 

特に、スクールカウンセラーや教育相談所は、医療機関の紹介なども相談できますから、お問い合わせください。

■  お子さん学校のスクールカウンセラーに相談する(いちばん身近なプロ)

■  お住まいの地域の、「教育相談所」に相談する(検索してみてくだいね!)

■  お住まいの地域の臨床心理士に相談する→日本臨床心理士会

■ はこにわサロンでは、対面に加えて、オンラインやお電話でのご相談をお受けしていますので、必要なときは「カレンダー」からお申し込みくださいね。

まとめ

子どもの自傷行為をどう理解し、対応するとよいかについてお話しました。

いつも思うのですが、子どもの問題行動や不適応は、子どもにとっては成長チャンスであることが多いです。

そして、親子で乗り越えることで、関係が深まり、親子ともに成長していくことができます。

お子さんの自傷が、ご家族にとって、そのような機会になりますように!

 

 

最後になりましたが、この記事を書くにあたり参考にした本をご紹介しておきます。

松本俊彦『自傷・自殺する子どもたち』合同出版

 

こちらは、当事者に向けて書かれた本で、こちらもお勧めです。

松本俊彦『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』講談社

 

また、思春期の子どもの理解について書いた記事がありますので、参考にしてくださいね。

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