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「虐待は連鎖する」は本当か?虐待を繰り返さないためにできること

 
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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。

 

よく「虐待は連鎖する」と言われますが、それは本当でしょうか?

 

児童虐待の世代間連鎖を分析した研究では、親が虐待を受けた経験がある場合、子どもを虐待するリスクは約2〜3倍に上がると報告されています。

 

でも「虐待を受けた人の全員が加害者になる」わけではなく、7割から8割の人は、虐待を繰り返しません。

 

ですから、「虐待を受けたこと=自分もしてしまう」と決めつけてしまわないでください。

 

この記事では、なぜ虐待の連鎖が起こるのか、連鎖を断ち切るためにできることを4つ、お話します。

 

なぜ虐待の連鎖が起きやすくなるのか

虐待の連鎖は、親の性格や愛情不足で起こるのではなく、多くの場合、次のような仕組みで起こります。

 

(1)身体が先に反応してしまう

子育てでは、毎日、さまざまな大変なことが起こります。

怒る、泣く、反抗する、甘える、失敗する、言い訳する・・・

 

トラウマがある人は、こうした刺激に対して、思考より先に身体が反応してしまいやすくなります。

 

◎子どもの泣き声にイライラしやすく、怒りが爆発したり、無力感に囚われやすくなる

◎子供が反抗すると「自分が責められた」と感じて強く叱ってしまう

 

これは意志の弱さではなく、自律神経の防衛反応です。

「考える」より先に「守る」が作動してしまい、望まない関わり方が出てしまうのです。

 

(2)「関係の型」が身体に残っている

子どもは、家庭の中で「人との関わり方の型」を学びます。

 

◎些細なことで怒鳴られる

◎親の言う通りにしないと叱られる

◎怒りや悲しみは「ダメなもの」と否定される

◎失敗すると怒られたり馬鹿にされたりする

 

こうした関係の型は、そのまま身体に刻まれます。

 

すると、大人になっても「これが当たり前」になってしまったり、頭では「よくない・やめたい」と思っているのに、疲れたときや追い詰められたときに慣れたパターンを踏襲しやすくなるのです。

 

(3)家族システムの固定化 ― 役割が無意識に再現される

機能不全がある家庭では、無意識のうちに家族の役割が固定されやすくなります。

 

例えば:

 スケープゴート(問題児役)

家族の中の緊張や葛藤を一身に引き受ける存在です。

本当は家族全体の課題であるにもかかわらず、一人が「悪者」になることで、他の問題が見えなくなります。

すると、大人になってからも、無意識に自分が悪者になったり、誰か悪者を作って責めるパターンを繰り返しやすくなります。

 

親役の子(ヤングケアラー的役割)

本来守られる側であるはずの子どもが、親を支え、家族をまとめる役割を担うことがあります。

例えば、親の愚痴を聞く、兄弟の世話をするなどの役割を担うしっかり者ですが、大人になっても、人に頼ることが苦手で過剰に頑張る傾向があります。

子育てでも、完璧主義になりやすく、自分を追い詰めてしまいます。

 

三角関係(トライアングル)

夫婦間の緊張が強いとき、子どもが無意識に“間に入る”構造です。

片方の親の味方になったり、親同士の緩衝材役を果たしたり、相談相手や場合によっては共犯者になることもあります。

子育てでは、夫婦の問題に子どもを巻き込んだり、子どもと過度な同盟関係を作ってしまうことがあります。

 

家族は「変わらないことで安定する」性質があります。そのため、本人が意識していなくても、似たような役割配置や関係性が再演されやすくなります。

 

ただ、誰かが「役割」に気づいて固定化から外れると、システムが変わることがあります。つまり、「役割を引き受けない」と決めることで連鎖を止めることができるのです。

 

虐待の連鎖を止めるための4つのヒント

では、連鎖を止めるためには、どうすればよいのでしょうか?4つのヒントをお話します。

 

ヒント① 安心感の獲得:自分の体験を「言葉」にする

子どもの頃に安心できる関係が少なかったとしても、大人になってから、安心の感覚は育て直せます。

鍵になるのは、本当は何がつらかったのかを、丁寧に言葉にしていくことです。

 

◎ あのとき、本当は怖かった

◎ 本当は助けてほしかった

◎ さみしかった

◎ 無力だった

◎ どこにも逃げ場がなかった

 

言語化は、過去を掘り返して苦しむためではなくて、過去と今とを区別するために必要です。

 

自分の人生を「物語」として語れるようになると、無意識に繰り返すことが防げるからです。

 

ノートに書いて整理する、信頼できる人に話す、また、カウンセリングで一緒に整理するのも有効です。

 

ヒント② メンタライゼーションの回復:「考える余白」を取り戻す

メンタライゼーションとは、簡単に言えば「心の中を想像する力」です。

 

たとえば、怒りが込み上げたときに、

◎ 私はいま、何に反応しているんだろう?

◎ 本当は怒り?それとも不安?

◎この子はわざとやっているの?それとも困っているの?

と、一瞬でも立ち止まれること。

 

子育てのストレスから、わたしたちは、ついイライラして子どもにぶつけてしまいやすくなりますが、「子どもも疲れているのかな?どうしたらいいかわからないのかな?助けて欲しいのかな?まだ言葉で説明するのは難しいのかな」のように、子どもの心の中を想像する余白が持てると、冷静さを取り戻すことができます。

 

ヒント③ 一人でも安全な大人の存在:「ひとりで抱えない」

レジリエンス研究によると、つらい環境で育っても、たった一人、安心できる大人がいるだけで負の連鎖を断ち切ることができることがわかっています。

 

これは、子どもにとってだけでなく、大人になってからでも同じです。孤独な子育ては、親を追い詰めます。すると、イライラしやすく、子どもに対しても怒りをぶつけてしまったり、ネグレクトしてしまいやすくなります。

 

相談できる人、助けを求められる人はいますか?例えば・・・

◎ 家族や友人

◎ 園や学校の先生

◎ 子育て支援、地域の人

◎ カウンセラー、医療機関

 

子育ての場合は、支援者は複数持てるのが理想的ですが、まずは一人、信頼して繋がれる人がいると、連鎖を止めやすくなります。

 

ヒント④ 子育ての知識:具体的に「何をするとよくて、何を避けるか」

「具体的に、何をするとよくて、何を避けた方がいいのかを知っていること」も大切です。人は、あらかじめ知っていれば、適切な行動を取ろうとするからです。

 

そんな子育てのガイドになる本を書きました。

子育てのお手本を持たない複雑性トラウマの方には、繰り返さない子育てのための、実践的な手引書としてお使いいただけると思います。

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まとめ・虐待は繰り返されるのか?

連鎖を止めるとは、完璧な親になることではありません。

大切なのは、失敗しても修復できることです。

 

◎ さっきは強い言い方になってごめんね

◎ お母さん(お父さん)焦ってた

◎ あなたのせいじゃないよ

◎ 大丈夫、きっと次はうまくいく

 

このようなやりとりを通じて、子どもは「関係は戻せる」と学ぶことができます。

 

そして、この体験から、親自身も「虐待を繰り返さない・大丈夫」と学び直すことができます。

 

そして、「虐待の連鎖をしたくない」と思っていたら、その時点で無意識な虐待を回避しています。

もちろん、それは決して簡単なことではありませんけれども、ぜひ、親とは違う子育てを取り戻していきましょう。

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外資企業勤務後、心理臨床を志す。臨床心理士の資格取得後は東京・神奈川・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年、東京都港区・青山一丁目に「はこにわサロン東京」を開室。ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析を行っている。日本臨床心理士会、箱庭療法学会所属。
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