大人の愛着障害 対人・仕事・恋愛の特徴(回避型・不安定型)と回復方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
大人の愛着障害への関心が高まっています。
子どもの頃の親子関係が、例え虐待未満のものであっても、常に大きな影響を与え続ける(大人になってからの生き方やメンタルヘルスに対しても)ということがわかってきました。
抑うつや適応障害をはじめとした様々なこころの病の根っこに愛着障害がある場合も少なくないと言われています。
愛着・愛着障害とは何か?
愛着障害が生じる理由や影響、回復のためにできることについて、お話したいと思います。
愛着(アタッチメント)とは?
愛着(アタッチメント)とは、乳幼児期の母子関係を通じて、人間が、社会や他者に対して基本的に安心できる、信頼できる、ひいては自分に対しても存在肯定感が持てるようになることです。
愛着が障害されると、不安、不信、自己否定、自己嫌悪、罪悪感、無用感が生まれます。
では、愛着とは、具体的にどのように作られるのでしょうか?
愛着の形成
人間は自分では何もできない無力な状態で誕生します。
そのため、母親(と書きますが、父親や他の養育者でも問題はありません)が常に赤ちゃんの様子を気にかけて、赤ちゃんが不快を感じた時(お腹が空いた、オムツが濡れた、暑い寒い、抱っこしてほしい)いつでもそれを満たしてあげる必要があります。
親の方も、「何に困っているのか、どうして欲しいのか」を言葉で伝えてくれない赤ちゃんのお世話は困惑することも多いです。赤ちゃんのニーズを想像し(オムツかな?)赤ちゃんの反応で確認し(オムツじゃないからミルクかな?)、続く子育てに必要な感受性を育てていきます。
このように、愛着の形成は親子の共同作業であるといえます。
赤ん坊が不快を訴えて泣いても親が応えないことが続くと、子どもは不安定に泣き続けたり、逆に全く泣かない・反応しなくなります。愛着形成の失敗です。
安全基地の形成
子どもがハイハイしたり、歩けるようになると、自分で母親(養育者)から離れることができるようになります。
安心できる場所(例えば自宅)では母親から離れても機嫌よく遊ぶけれど、安心できるかわからない場所(例:始めて出かけた公園)では母親(安全基地)にしがみつきます。
面白そうなものがあると母から離れてみるが、不安になったら母親のところに戻ってくる。この作業を何度も繰り返して、子どもは安心感や信頼感を損なうことなく少しずつ自分の世界を広げていく(成長する)のです。
愛着障害のタイプ
けれど、母親(安心基地)がなかったり、無視されたり、攻撃的な対応、不安定な対応が返ってくることが続くと、子どもは自分を守るため・生き延びるために、通常とは異なる愛着形成を行うことになります。それが反応性愛着障害や脱抑制性愛着障害です。
反応性愛着障害の特徴(=回避型)
✔️無反応・無表情
✔️甘えない
✔️距離をとることで自分を守ろうとする
脱抑制性愛着障害の特徴(=不安定型)
✔️誰かれ構わず近づき甘える(距離感のなさ)
✔️人から注目してもらえるように目立つ行動、大袈裟なふるまいをする
✔️情緒的な不安定さ
愛着障害と間違われやすい「発達障害」
発達障害は生まれつきの脳の気質傾向によるもので、親子関係によって発症するものではありません。
しかし、発達障害の中には、愛着障害と区別が難しいと感じられる場合があります。
例えば、ASD(自閉症スペクトラム障害)の方の、他者への無関心、社会交流の乏しさは反応性愛着障害の特徴と重なります。
また、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の方の衝動的で人目を引く言動が脱抑制性愛着障害の特徴と重なります。
どちらも、生育歴を丁寧に確認する必要があります。
なお、発達障害と愛着障害を両方もつ場合もあります。
愛着形成は親子の共同作業です。親が発達障害の子どもを育てにくいと感じ、周囲からの支援が得られない時には、十分なお世話や安全基地の役割を果たせなくなってしまうことがあるからです。
発達障害の方のお話を伺っている中で、幼少期の親の不適切な養育が対人不信や不安定な言動のきっかけや増長となっていると判明する場合が(しばしば)あります。
愛着障害の要因とは
愛着障害の要因にはどのようなものがあるのでしょうか。
■両親の不仲
■両親の心身の健康や経済に困難があり子育て環境が整わない
■両親からの虐待やネグレクト
■両親が虐待のサバイバーである(子どもの愛し方がわからない)
■主たる養育者に発達障害がある
■その他、様々な理由から適切な愛着体験が欠落してしまった
このように、両親の不在、または適切な養育環境が整わないことが主たる要因です。
親が安心して子育てできる環境が得られる・社会もそれを温かく支援することができると、愛着障害は減らしていくことができるのではないか、と感じます。
愛着障害から生じる情緒の問題
乳幼児期にいつも必ず温かくお世話をしてもらい、不安な時は抱きしめてもらう。そのような安心・安定した体験が得られなかった場合には、様々な情緒面での問題が生じてきます。
基本的な安心感・信頼感が獲得できなかったために、いつも不安で緊張しています。
自分が存在する意味がわからないと感じ「死にたい・消えたい」気持ちになることも。
そのため気持ちが落ち込みやすかったり、コントロールしにくくアップダウンが激しくなる。
自分に自信がなく、自己否定的、無力感、また何事も「自分のせい」だと自責する、罪悪感をもつ。
怒りや被害感が強くなったり、逆に感情や感覚を遮断することでやり過ごそうとします。
愛着障害から生じる対人関係の問題
自分の気持ちが分からない・自分が大切にできないために、相手に合わせすぎて苦しくなってしまいやすいです。
また、相手に過剰な期待を投げかけ、期待が満たされないと絶望してしまって対人関係を絶ってしまうことがあります。
肯定的な経験が少ないために、対人関係を回避してしまい、不信感や絶望感が増してしまいます。
仕事・職場で生じる問題
不安や緊張から力が発揮できず、仕事が遅い・ミスが多いなど、仕事ができない人だと思われてしまうことがあります。
また、対人不信や経験不足から適切な「報告・連絡・相談」が苦手で適切なコミュニケーションが持てない、過剰適応から燃え尽きてしまう、転職を繰り返すなどの不適応が生じることがあります。
自分の評価を気にして、自分が活躍しないと居場所がないと感じてしまうこともあります。
恋愛で生じる問題
自分に自信がないために、自分を犠牲にして相手に尽くしてしまう、または、肯定的な対人関係不足から極端に支配的になってしまうことがあります。そのため、DV(ドメスティックバイオレンス)を行う・受ける両方の危険があります。
恋愛に対して自信がなく避けてしまう、ひとりの人にコミットすることが怖くて遍歴してしまうこともあります。
相手に親代わりを求めて依存的になってしまうことも生じやすい。
家族・子育てで生じる問題
結婚や家族に対して肯定的なイメージがない・ロールモデルがないことから、夫婦間で相談・協力することが難しい。子育てに自信が持てず、虐待・ネグレクトを繰り返してしまうこともあります。
愛着障害から派生するさまざまな病や症状
愛着障害は、幼少期から安心・信頼・肯定的な相互関係が持てず、幼少期のみならず大人になってもさまざまな生きづらさを背負い続けることになります。そのため、こころの病・症状へとつながってしまうことが起こりやすいといえます。
愛着障害から回復するためには
幼少期に親との関係の中で適切な愛着関係が持てなかったことは、大きなハンディキャップです。
けれども、愛着関係で得られなかった安心感・信頼感を大人になってから構築すること、獲得することは不可能ではありません。
いつも親身になって心配してくれる人、本音を分かち合える人、どんな時でも変わらぬ態度で接してくれる人。このような人との関係性が、こころを開いて人とつながる最初の一歩です。
仕事などで、苦楽をともにする中で本音でつきあえる人間関係を獲得できることがあります。
恋人やパートナーなど、安定した二者関係がやり直しのきっかけになる場合も多いです。
人に対する不信感や不安が強い時は、人ではないもの(趣味など)との関係を通じて自分の気持ちの安定を獲得したり、その活動を窓口として信頼できる人を見つけられることもあるでしょう。
まずは小さな安全基地を持つこと。そこから全て始まります。
愛着障害のカウンセリング
対人不安や不信が強い時は、カウンセリング・カウンセラーとの関係を最初の安全基地にするという方法もあります。
■人には言えない本音を話す
■否定せずに「あるがまま」を受けとめてもらう
■封印してきた甘えや怒りを受けとめてもらう
■ネガティヴな気持ちも大切な自分の一部だと感じられるようになること
■友達、仕事、恋人や家族に対して、信じてこころを開いてみよう、と思うこと
カウンセラーとの間でこのような体験をすることで、社会の中でも安心して人と繋がれるように、自分のしたいように振る舞っても大丈夫だと感じられるようになります。
はこにわサロンでは愛着障害のカウンセリングを受付ています。
オンライン・お電話のカウンセリングもできます。