ある日突然無視されたら?自分を責めずに対応する方法・無視をやめる方法
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です。(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
ある日、突然、無視されるようになってしまった。
そんな時に「仕方がない」や「わたしのせいだ」と思っていませんか?
無視されるというのは、思いのほか、破壊力のある攻撃を受けていることになるので、対応を誤ると、深い傷つきや長期にわたる悪影響を引き受けてしまうリスクがあります。
ぜひ、ただしく理解して、適切な対処ができるようにしてくださいね。
■自分が無視されてしまった
■子どもが無視されている
■(自分が)人に無視するという加害行為をしてしまう
人に向けて書いています。
なぜ「無視」は破壊力があるのか?
子ども同士で、または職場の人間関係で、ある日突然、誰かが誰かを無視する、というのは、残念ながら、ときどき起きることなのではないでしょうか。
でも、時々起きることだからといって、「よくあることだ」「大したことない」と軽く見てはいけません。
というのは、「無視する」というのは、相手の存在を否定する行為で、陰口や嫌がらせ(あからさまな悪意や攻撃性を向ける)のと同じかそれ以上の破壊力を持つからです。
存在否定、というのは、「あなたはここにいてはいけない」というメッセージです。
また、「無視する」ということは、加害者(無視している人)は「話し合う気はない」というメッセージを出しているため、無視された側は、自ずと反省したり自分を責めるしか手立てがなくなってしまいます。
すると、必要以上に自分を責めてしまうことが生じやすいです。
自分を全否定してしまったり、今までのことも全部まちがっていたのでは?と自信を失ってしまったりすることもあります。
自分が信頼してつながってきた人に対しても疑念が湧いてしまうと、「誰も信じられない」気持ちになったり、誰にも相談できなくなってしまい孤立してしまうこともあります。
もちろん、必ず上記のような被害が生じると決まったわけではありませんが、「よくある」「大したことない」と決めつけてしまうのは危険だ、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
なぜ無視するの?
では、無視する、という行為はなぜ、行われるのでしょう?
大きく3つの理由が考えられます。
① 自分が無視されてきたから
家庭の中で、または学校・社会生活の中で自分が無視される被害に遭ってきた可能性があります。
そのため、「気に入らなければ無視すればいい」と学習してきていたり、自分の辛さを他者に加害することで晴らそうとしてしまうのです。
でも、「気に入らなければ無視する」という人間関係の作り方では、早晩ご自分が孤立することは避けられないでしょう。
また、他者への加害で自分の苦しみ・鬱憤を晴らすというのも、瞬間的にはスッキリするかもしれませんが、辛さや傷つきを癒す・回復させるわけではありません。
② 不快な感情を処理する方法を知らないから
イライラ、怒り、悔しい、妬み、悲しい、虚しさ・・・
わたしたち人間のこころの中にはさまざまな扱いづらい負の感情が湧くものです。
不快な感情が湧いた時に、自分の中ですこし抱えて整理したり、痛みをリリースしたり、無害な方法で発散・消化することができればよいのです。
子どもの場合は、不快な感情の対処には大人の助けやなぐさめが必要です。
大人に助けてもらうことで、子どもは、大人になるまでに、自分なりの対処方法を獲得していきますが、そのチャンスがなく無視してしまう子ども・大人がいると思います。
3 言語化できないから
相手に対して何か不快な感情が芽生えた時、不満を持った時に、それをわかりやすい言葉で相手に伝えることができれば、「無視する」という幼稚な行動を取らなくても済みますよね。
でも、不快な気持ちを自分の中で言語化すること、またそれを相手に伝えることはなかなか高度な技術が必要ですから、自分で問題意識を持って努力したり、それを温かく労ってくれる人の存在が不可欠だったりします。
「無視する」人は、そうする機会がなかったのかもしれません。
無視されたらどうすればいいの?
無視は、きっかけがあるか、ないか、にかかわらず、無視する側に「無視してしまう」「無視しかできない」事情があるのだ、ということをお話しました。
では、無視されてしまった時に、わたしたちはどのように自分を守り、対処すればよいのでしょう?
まず大切なことは「自分のせいだ」と決めつけないこと、です。
自分にも非があるかどうかは関係ないので、ひとまず保留しましょう。
そして、自分が安心して、信頼してつながれる人と、つながっておきましょう。
自分の安心基地・居場所を確認する。困ったらちゃんと逃げ込める・休める。
まずは何より、それが大切です。
周囲を巻き込んで無視してくる時
相手が、周囲を恐怖で支配し巻き込む力(または権力)を持っている場合があります。
多勢に無勢だと、多数決でやっぱり自分が悪いの?と感じてしまいやすい。
また、多勢側が調子にのって嫌がらせをしてくるかもしれない。
でも、多勢で何かしてくる、ということは、「あなたが悪いから」ではなく「向こうが何も考えていないから」です(よね?冷静に考えて)。
ですから、とにかく自分の安心基地(家族や親友や信頼できる人)との関係を厚めに持って、自分のペースを乱さずに淡々とやり過ごしましょう。
相手に対して物申すという反撃も可能ですが、効果を得るには、あなたの味方をしてくれる「目撃者・介入者」(先生や先輩や頼りになる友達)の助けが必要かもしれません。
子どもが学校で無視されている時
くれぐれも、うっかり「あなたにも悪いところがあるからじゃない?」と言ってしまわないようにしてください。
まず最初に、安心感・信頼感の確保が肝要です。
「無視はいけないことだね。あなたは悪くないよ。」と伝えましょう。
一対一で「相手が無視してくる」とき
一対一で「相手が無視してくる」というときは、相手の気持ちを代弁して、仲直りのきっかけ探しをしてみるとよいと思います。
仲良しの仲間外れ
仲良し3人組の中で、仲間外れが生じる場合は、子どもの気持ちをケアしつつ、様子を見てみましょう。
仲違いをしながらも関係性を育んでいってくれるなら大人の口出し無用です。
でも、支配関係がある、と感じられる場合は、「離れてもいい」「ほかのお友だちと遊ぶ」提案をしてみてもいいかもしれません。
集団による無視が生じた場合
ひとりの子どもに対して集団で無視する状態が生じたら、大人が介入する必要があります。
無視された子どもをきちんとケアして、安心・信頼を取り戻すことが必要です。
無視した子どもや迎合した子どもたちには、「無視はいけない」ときちんと教えること、また無視しないで伝える方法があり、練習して身につけて行こうと伝え、導いてあげましょう。
頭ごなしに叱ると問題が解決されないばかりか、いじめの陰湿化に繋がりかねませんから、慎重に。
ひとりの大人で対処するより、関係者が協力して対応する方が効果が高く、失敗が少ないと考えられます。
「無視する」がもたらし得る深い傷つき
「無視する」ことは、存在否定という破壊力を持ち、安易に容認してはいけないことについてお話してきました。
家庭で家族から無視されることや、学校である日突然無視されて恐怖に陥ったまま誰にも相談できず、ずっとひとりで抱え続けてきた結果、自己不全感に悩み続ける、こころの病になることも稀ではありません。
もし、過去に自分が無視された体験があり、それから自分も他人も信頼できなくなってしまったと感じていたら、自分や社会を責めるのではなく、もう一度、自分を肯定すること、安心できる居場所を持つこと、信頼できる人とつながることをしてみてください。
ご自分の力だけでは変えられない、と感じたら、カウンセリングを通じて、ケアと新しい自分の人生の再構築をしてくださいね。
それから、もし自分が人に対して気に入らないことがあると無視してしまう場合にもカウンセリングが有効です。
無視する行為に隠された自分の傷つきや怒りを整理して、自分の気持ちや相手への願いを言葉にして伝えられるように、一緒に練習していきましょう。