箱庭作品をセラピストが解釈するのかどうか?という疑問にお答えします
東京・青山の心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」の吉田(臨床心理士・公認心理師)です(オンラインカウンセリング・電話カウンセリング受付中)
こんな風に思っていらっしゃる方が、実は少なくないのではないかと思います。
でも、実は、箱庭療法はユング心理学に基づいていることもあって、セラピストが一方的に解釈することはあまりしないのです。
このように思われておられる方が少なくないのではないか・・・と思います。
セラピストが、人のこころや箱庭のイメージを読み取れるのかについてお話したいとおもいます。
セラピストには、こころが読み取れるのでしょうか?
一言で言えば「そう簡単に読み取れない」と言うのが、わたしの答えです。
人間のこころは、とても複雑で、拡がりと奥行きがあるので、ある一部分を読み取れたとしても、ひとりの人間を理解できるわけではないからです。
例えば、メンタリストDaiGoさんのような方が、「この人が次にとる行動は何か」を見事に予測されたりするので、心理学を学ぶと同様なことができるのでは?と期待(と怖れ)を持たれるのかもしれません。
というのも、中学生から「メンタリストDaiGoさんのようになるにはどうしたらいいですか?」と質問されたことがあり、なるほど、心理学を極めると、DaiGoさんになれると思うのだな、と思ったのです。
ところで、メンタリストDaiGoさんは、心理学のご出身ではなく、人工知能を開発する研究をされてこられたのだそうです。それで、ある環境下で人がどのように考え、行動しようとするかを予測するのが上手なのだと思います。
一方で、わたしが専門とするユング心理学では、人の言動そのものだけではなくて、「こう言ったけれど・・・」や「こんな風にしたけれど・・・」の「・・・」(迷いや葛藤)の方に関心を寄せます。そして、こちら側は、ひとことでは表せない世界・簡単には理解できない拡がりと深みのある世界であると、わたしは思っているのです。
箱庭に表現されたイメージを理解する方法
ですから、「馬ならこう」、「クマならこう」と言い切れないのです。
例として蛇で説明してみますね。
蛇には「呑み込む」というイメージがあります。これは、蛇が獲物を捕獲するときに、獲物を丸呑みすることから生まれたイメージです。
一方で、蛇といえば、脱皮を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。わたしの母の実家は山間にありましたので、蛇の抜け殻が見つかることがありましたけれども、それは「幸運の印」だと教わりました。ここから、蛇といえば「一皮むけて新しい自分に生まれ変わる」イメージとも考えられます。
呑み込まれるイメージはなんだかネガティヴで、一皮むけるはポジティヴなイメージではないですか?
このように、蛇が置かれていても、セラピストが勝手にどちらかを判断することはできないのです。
さらに・・・
もし、「理由はわからないけど不安でたまらない」と思われている方の箱庭に蛇が置かれたら、少なくとも、その不安の源は全く正体不明なのではなくて、蛇のようなものなのかな?と仮定することができます。蛇がたまらなく怖いと感じていたとしても、やはり、全くわからないよりは、わかった方がいいだろうと思うのです。つまり、蛇は、あなたが不安に向き合う第一歩の箱庭のようです。
あるいは、一皮むける脱皮イメージの蛇が置かれたとしても、もしあなたが今、変化・進化を快く思っていなかったらどうでしょうか。必ずしも「ポジティヴなこと」と手放しで喜ぶわけにはいきませんよね。でも、この中で蛇のイメージについて話し合ったり、次の箱庭を作るうちに、蛇は、例えば鳥の巣の中で温められる卵や、ヒヨコに置き換えられていくかもしれません。蛇について言葉で話し合わなくても、箱庭の中であなたの変容が進められていく様子がわかります。
このほかにも、蛇には、侵入されるイメージやセクシャルなイメージなど、いくつか異なるイメージがあり、どのイメージが一番あなたの箱庭理解にフィットするのかを、あなたとセラピストの対話の中で、少しずつ理解していくのです。
イメージ理解のまとめ
セラピストがあなたの箱庭を一見して、あなたのこころが読み取れる(あるいは読み取っている)わけではないことがお分かりいただけたでしょうか。
箱庭表現のイメージは、ひとつのフィギュアにもいくつもあり、ポジティヴなもの、ネガティヴなもの、そしてあなたがどう感じるのかによっても、理解が違ってきます。
でも、一番大切なのは、あなたの箱庭表現をセラピストとともに話し合うことで、あなたのなかで気づきが生まれたり、違和感を感じて何か考え始めるきっかけとなったりすることです。
また、箱庭を作ったときには、なんだかよくわからない・セラピストの問いかけに対してもしっくりこないと思っても、帰り道や数日後のふとした瞬間に「あ・・・」と新しい気づきが訪れたりすることです。ここまでを含めて、箱庭療法なのです。
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